じわじわと追い込まれる緊張感に耐えられるか!? SF映画『パンドラム』
#映画 #洋画
今年のアカデミー賞にもノミネートされた『第9地区』や、月面でひとり黙々と任務を遂行する男の孤独を描いた『月に囚われた男』など、比較的低予算ながら良質のSF映画が最近脚光を浴びている。CGを駆使したド派手なアクションシーンに頼らずとも、説得力のある設定と練り込んだストーリーで観客を魅了する、そんな心意気の作品が評価されているようだ。今回紹介する『パンドラム』(ソニー・ピクチャーズエンタテインメント配給、10月1日公開)も、そうした作品群に加わるであろう注目作だ。
世界人口が膨れ上がる一方で、限られた資源の争奪が激化し、滅亡の危機に瀕した西暦2174年。人類は地球によく似た環境を持つ惑星タニスへの移住計画を実行し、選ばれた者と各種動植物を乗せた宇宙船エリジウムを送り出す。やがて2人の宇宙飛行士、バウアー伍長(ベン・フォスター)とペイトン中尉(デニス・クエイド)が目を覚ますが、冷凍睡眠の影響で記憶を失っている。艦橋への扉は閉ざされ、他の乗組員も見当たらない。動力と電力を供給する原子炉が不調で、わずかな残り時間のうちに再起動をかけないと自爆してしまう。薄暗い船内を探りながら原子炉を目指すバウアーは、異形の凶暴な”何か”から襲撃される……。
物語の鍵は、タイトルにもなっている「パンドラム」。これは軌道機能不全症候群と訳されているが、宇宙船内で生じる閉所恐怖症による心理的障害で、神経症や誇大妄想をもたらすもの。宇宙船の謎だらけの危機的状況に、クルーたちを内面からじわじわと蝕む精神の病が加わり、観客の緊張感と恐怖心もますますあおられることになる。
監督を務めたのはドイツの新鋭クリスチャン・アルバートで、製作は『バイオハザード』シリーズのポール・W・S・アンダーソン監督。本作が実質的な映画デビューとなるドイツ人女優アンチュ・トラウチェが、戦闘とサバイバルに長けた”女版ランボー”のような役でワイルドな魅力を放っている。
『エイリアン』(79年)を想起させる宇宙船内での”異なる存在”との対決。『アンノウン』(06年)のように閉所で登場人物たちの記憶が失われているという状況。『猿の惑星』(68年)を彷彿とさせる終盤の印象的なシーン。過去の名作、話題作の要素を巧みに取り入れ、SF、アクション、ホラー、サイコスリラーの各ジャンルをバランス良く組み合わせた本作は、意外にお得感もあり、この秋じっくり作品に向かい合いたいという映画ファンにオススメの一本だ。
(文=eiga.com編集スタッフ・高森郁哉)
『パンドラム』作品情報
<http://eiga.com/movie/53908/>
SF映画って面白いんだね。
【関連記事】
アイドルだけじゃない! 韓国発・超ド級ディザスター映画『TSUNAMI-ツナミ-』
物議を醸すこと必至!? 『BECK』堤幸彦監督が仕掛けた”ある演出”
受賞はしたけれど……タイミングが悪い映画『悪人』の不運
サイゾー人気記事ランキングすべて見る
イチオシ記事