『戦国BASARA』が火をつけた歴史ブームはどこまで拡大するか
#歴史
いわゆる「歴史ブーム」「戦国ブーム」は止まる気配がない。『もういちど読む山川日本史』(山川出版社)が売れに売れ、お盆には歴史上の人物の墓を訪ね歩く「墓マイラー」なる層も出現。2008年ごろに生まれた歴史好き女子を指す「歴女(レキジョ)」という言葉は、今では流行語を超えてすっかり定着した感すらある。
ブームの火つけ役となったのが、カプコン社のアクションゲーム『戦国BASARA』シリーズ。05年の発売以来、出荷本数は累計160万本を記録。7月に発売された『戦国BASARA3』も、PS3で約31万本、Wiiで約8万本と好調に推移。男の渋い趣味として位置づけられていた「歴史モノ」というカテゴリーを若い女性層にまで浸透させ、ブームの裾野を広げながら息の長いムーブメントとして定着させている。
こうした動きに合わせ、各地ではさまざまな関連イベントが開催されている。『戦国BASARA3』の発売に合わせ、人気キャラクターの一人である真田幸村のふるさと、長野県上田市では、上田市と別所温泉を結ぶ上田電鉄別所線に、ゲーム『戦国BASARA』とTVアニメ『戦国BASARA弐』をラッピングした「戦国BASARA 真田幸村号」を走らせ、人気を集めている。これに先駆けて4月に開催された「上田真田祭り」にも、40年ぶりの大雪による交通の乱れがあったにも関わらず、5万5,000人の観光客で賑わったという。上田市観光課では、「県外からの若い女性のお客様が目立って増えています。戦国武将、とりわけ真田昌幸、信之、幸村親子の観光資源としての力を実感しています。まさに『BASARA』さまさまですね」とホクホクだ。
また、今年は関ヶ原合戦から410周年という節目。岐阜県関ヶ原町では、08年以来二年ぶりの開催となる「関が原合戦絵巻2010」(旧「関ヶ原合戦祭り」)を10月16日、17日に開催する。同町地域振興課では、「一般の方が参加できる『甲冑武士』を昨年の80数名から倍近い150名にしたところ、応募が殺到しました。若い女性も多いですね。来場者は前回の3万5,000人を超えると予測しています」と、盛り上がりに期待を寄せる。
来夏には、戦国時代を描いた歴史小説『のぼうの城』(和田竜著)の映画化が決定(犬童一心・樋口真嗣監督)。エキストラを一般公募したところ、こちらも希望者が殺到したという。
全国的なムーブメントを後押ししている『戦国BASARA3』だが、早くも公式の解説本も出ている。『カプコン公認 公式読本 戦国BASARA3 関が原の戦い』(別冊宝島)では、執筆陣に小和田哲男、童門冬二、火坂雅志、桐野作人、藤井尚夫といった解説本らしからぬ実力派作家を揃え、「ありがちなゲーム解説本とは一線を画しました。戦国武将や関が原の戦いを、深堀りしながらも分かりやすく解説してあります。ゲームから入った歴史ファンはもちろん、コアな歴史マニアにも満足できる内容です」(宝島社)と、制作サイドの鼻息は荒い。
ゲーム、アニメ、書籍と、さまざまな入口で戦国武将に惹かれたファン層は、”歴史”を生涯の楽しみとして取り入れ、そこに根を下ろしはじめているようだ。既に”歴史”はブームという枠を超え、安定した趣味のジャンルとして確立されたと見ていいのかもしれない。
(文=浮島さとし)
昔はあんなに嫌いだったのにね。
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