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U-1グランプリ3回目の舞台がついにDVD化!

演劇界の奇才コンビが自称「お笑い通」を挑発! 「面白いことやってるのはお笑い芸人だけじゃない!」

 放送作家・福田雄一と、惜しまれつつ活動休止したコント集団・ジョビジョバのリーダーを務めたマギーのユニット、『U-1グランプリ』の最新コントDVD『CASE03 職員室』が今月15日に発売された。2人が協同で演出・脚本を手がけ、毎回異なる俳優を集めてワンシチュエーションコントを展開する、というコンセプトの同ユニット。今回のDVD発売を記念して早速2人を直撃し、その結成の経緯から、笑いに対する想い、ウラ話などを赤裸々に語っていただいた。お笑いの世界で異彩を放つ鬼才2人が『U-1グランプリ』を通じて描きたい「笑い」とは――?

――もう3作目になるU-1グランプリですが、結成の経緯について伺います。

福田雄一(以下、) 元々僕が、ジョビジョバのファンだったんですよ。人気があってチケットも取れないじゃないですか。だから、いろんな所で予約して、毎回3枚ぐらい取れちゃってたんですけど、それ全部観るぐらい好きで。

マギー(以下、) 取れない、っていうわりには、しっかり3枚も取れてるっていうね(笑)。

 それで、ずっといつか一緒に仕事したいなと思ってたんですよ。で、その後テレビで一緒に仕事をするんですけど、その時マギーとは笑いのセンスが合っているな、って感じたんですよねー。何が面白いか、っていうのもそうなんですが、「何が嫌なのか」っていうのが、僕とマギーは一緒なんですよ。「今のはちょっとないでしょ」っていうところが。

 好きなものよりも、嫌いなものが一緒、のほうが重要だと思うんです。例えば異種格闘技戦をやる時に、「目潰しと金的だけはなし」って感じで反則が共有されていれば、あとはなんでもOKにできる。そういう部分では、センスが共有できているなと。それで、ジョビジョバを解散して2年ぐらい経った夏のある日に、福田さんにいきなり呼び出されて。

 ちょうど、僕自身も作家としてレベルアップしたいと思ってた時だったんです。だから、ジョビジョバで天下を取ったマギーの演出を学ぶことで、ひとつ上を目指したくて。

 天下は取ってないけどね(笑)。

 いや、確実に演劇界の頂点にいた時期があるわけだから。それと、自分の台本を否定された時に、マギーだったら受け入れられると思ったんですよ。まーまず受け入れられないですから、業界の人は(笑)。あと、できる人がやらないっていうのはホントもったいないというのもありました。

 僕、ジョビジョバ解散して2年ぐらい、ライブでのコントをやってなかったんだよね。その間は、次の手を考えている時で。色々と考えていた時に福田さんに誘われた。毎回役者を変えて、作家だけが固定のコンビっていうのは、ちょっと面白そうだな、と。コントから離れて2年も経ってしまうと、次の一手が非常に出しづらかったんですけど、福田さんの誘いで、スッとコントに戻れた、っていうのはありますね。あと、福田さんが「お互いボケ合ってツッコミ合うようなことをやりたい」って言い出したんですよね。

 すごくあいまいな感じでね(笑)。

 そう(笑)。2人でボケ合って、ツッコミ合う漫才をやってるコンビがいる、っていう噂を聞いて、彼らには「それ、俺のオモロいヤツや」っていう決め台詞があるんですけど、「そういうのをマギーとやりたい」って言ってきたんですよ。

 でもそれが多分、合作の一番のスタイルだと思うんです。お互い、しゃべっててオモロい事言ったときに、若干なりとも悔しがる気持ちが必要だな、と。

 U-1は僕と福田さんで半分ずつ台本を書いているんですが、福田さんの書いた方を面白いと言われた時、「悔しい」「俺のだって」と思いつつも、「だろ、オモロいんだよ」って言えるような感じはありますね。舞台で発表する時には、2人の作品として捉えられる。

 僕は悔し過ぎて完全に客観だけどね。「(棒読みで)あー、マギーのそれ、オモロいよね~」っていう(笑)

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――毎回変わる役者さんたちは、どういうポイントで選んでいるんでしょう?

 僕は、ドラマの現場とかで出会った人で、「一緒にやりたいな」って思う人を呼んできます。「この人コント絶対好きだろうな」っていう人って、やっぱりニオイを発しているんですよ。お笑い好きって言っても、お笑い番組を見るのが好きなだけのヤツとかって山ほどいるんだけど……。

 うん、いる。

 「お笑い好きなんですよ」って言って、一生懸命俺を笑わそうとしてくるヤツよりも、僕が話したことに笑ってくれて、それにひとつでもいい”返し”をくれるようなヤツの方が一緒にできる。今まで呼んできた人たちはみんなそうです。

 僕は確固たる基準があって、僕が台本を書く時に想像していた通りのセリフのトーンや面白さを、ひとつでも超えてくれた人は誘える。今回でいうと野波麻帆ちゃんとムロツヨシ君。2人とも一度、僕の別の台本を演じてくれた人なんだけど、自分が想像した感じじゃないものを、バンバン出してくる。

――U-1グランプリの舞台に出したい人って、どんどん増えているんですか?

 1回冗談で「もういなくなった」って言ったことあるんですけど(笑)、今のところ、1回出演してもらった方は、次は呼ばないってルールで3回やってきてて。「そろそろアイツ呼ばない?」っていうのもなんとなくありつつ。

 ありがたいことに「出たい」と言って下さる方は増えてますね。こないだ、小栗旬くんにも言われました(笑)。「俺も目玉おやじやりたい」って(『職員室』では、福田さん自らが全身タイツを着て、目玉のおやじに扮するコントがある)。でも「君の体型、かっこよさでやっても面白くない。ちゃんとお腹が出てないと面白くないんですよ」って話をきちんとさせていただきました。

(一同笑)

 人柄もあるんでしょうが、福田さんの周りの人は、軽々しく(笑)「出たい」って言う人が多いんですけど、僕の周りは逆に「あんなものを見せられると、軽々しくやりたいなんて言えないよ」っていう人が多い。「次狙ってるよ?」って言っても、そんなに喜んでくれないんですよ。

 その最たる例が、ジョビジョバのメンバー(笑)。

 僕のことを厳しい、怖いって思っているヤツが多いんでしょうね。全然そんなことなくて、結構楽しくやってるんですけど(笑)。

 まー、2作目に出た長谷川(朝晴)は時間かかりましたからね、落とすのに。マギーから「長谷は、俺が言ってもアカンかもしれん。福田さんなんとかして」って言ってきたし(笑)。

 俺が誘ったら、「考えさせてくれ」って即答しやがって(笑)。

 で、長谷が最終的に決断してくれた時の僕のセリフが「俺がいるから大丈夫だ」っていう(笑)。ユルいから大丈夫だ、と。

――今回は六角慎司さんが出演されていますが……。

 六角はすぐOKでしたよ。多分、断ったらぶん殴られると思ったんでしょうね。

 先輩に、「ちょっとこい」、って言われたようなもんなんでしょうね(笑)

 ジョビジョバでのポジションを垣間見ましたよ。「お前断れるポジションなのかよ」っていう無言の圧力。僕、六角大好きなんですけどね。

 それがいまだによく分からないんですけど。

 で、この前『職員室』を坂田(聡)が見に来て、みんなで飲みにいった時「次お前だからな」って言い続けたんですよ。順番でいったらどう考えても次はお前だ、って言ってるのに、絶対うんって言わなかったですね。3時間ぐらい飲んでたのに。でもまあ、確実に次は、坂田が出てますよ、ハイ。

 「ここに書いてあるから」って言えばもう逃げられないでしょ。……て何で外堀から埋めていくんだよ!(笑)

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――最後になりますが、オススメのポイントなどがあれば……。

 「コントは芸人さんがやるもの」っていう常識が覆されているのが、今回なんじゃないかなと思うんですよ。芸人さんのコントって”言葉”の笑いが主だけど、やっぱり違うんですね、役者さんでやると。

 姿勢、とかね。

 ちょいとした表情とか間の作り方、とか。下手すると、セリフでひとつも面白いこと言ってないのに笑える。だから、お笑い芸人さんがやる単発の笑いに、ちょっと飽きたって人に見てもらいたい。「こんなのもあるんだ」って思ってもらえるかな、と。

 「お笑いが好き」っていうぐらいなら、これ見ておかない? っていう感じですかね。芸人がやってる、売れてるコンビがやってる単独ライブ以外にも面白いものってたくさんある、っていうことを、お笑い好きって言うんだったら、知ってて欲しいなって思います。

福田雄一(ふくだ・ゆういち)
1968年生まれ。劇団「ブラボーカンパニー」の座長、バラエティ番組の放送作家として活躍するほか、ドラマ『東京DOGS』や映画『大洗にも星はふるなり』など、さまざまな媒体で脚本、演出を手掛ける。

マギー(まぎー) 
1972年生まれ。93年にお笑い集団・ジョビジョバを結成。リーダーを務め、当時の演劇界を牽引する存在に。02年のジョビジョバ活動停止後は、俳優・タレント・演出家・脚本家と幅広く活躍している。

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U-1グランプリCASE 03『職員室』
今年4~5月の同名の公演を収録。誰もが知っている”職員室”を舞台に、福田・マギー両氏が、「好きで呼んだ」俳優たちと繰り広げるコント集。副音声で2人の解説も楽しめる。
出演:マギー、六角慎司、ムロツヨシ、野波麻帆、植木夏十、山西惇、福田雄一/価格:3990円(税込)/発売元:ポニーキャニオン

最終更新:2010/09/24 16:14
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