佐藤秀峰が漫画『海猿』全話を無料公開 漫画界の新たなスタンダートとなるか?
#マンガ #ネット #出版 #佐藤秀峰
「ビッグコミックスピリッツ」(小学館)連載の『新ブラックジャックによろしく』を7月に完結させた漫画家・佐藤秀峰。映画『THE LAST MESSAGE 海猿』が9月18日に公開される中、佐藤は原作となった自身の漫画『海猿』の全119話を、自ら手がけているオンラインコミックサイト『漫画 on Web』で、1ヵ月間の期間限定で無料公開することを発表。サイトの日記で次のように明かした。
「オンラインコミック版「海猿」全119話を、本日から1ヶ月の期間限定でどーんと無料公開いたします。読者登録の必要もありませんので、こちらからどんどん読よみください」(原文ママ)
さらに、佐藤は『海猿』の1話をYouTubeでも公開。「漫画のコマを1コマずつ切り取って、多少の演出や調整を行い、紙芝居風(?)に閲覧できるようになっています」と説明している。漫画のYouTubeでの公開をめぐっては、「週刊少年ジャンプ」(集英社)掲載の『ONE PIECE』などを違法に投稿したとして、著作権法違反容疑で6月に名古屋市中区の男子中学生が逮捕された。佐藤は自ら公開しているが、彼はその点についてTwitterで次のように見解を示した。
「漫画の違法アップロードが時々問題になるけど、僕は規制をするより、その影響力を宣伝等に利用したほうが建設的だと思います。規制は読者のためにも作品のためにもならないし、ならば規制する側の自己満足」
規制をすることに対しての独自の価値観を明かした佐藤。さらに、「規制が読者の為にならない、ってどういう論拠ですか?」というあるユーザーの質問には、以下のように答えた。
「違法アップロードによって、単行本の売り上げが落ちたと証明するに足るデータがないので、であれば、読者が作品に触れる機会を奪うだけですよね」
「違法であることも多いと思いますが、現行法でも著者が了承すれば合法なので、考え方次第ですね。後、お金を出した人だけを『読者』とすると、図書館の利用者も『読者』ではないことになってしまいますし、読書文化が失われれば、結果的に損失は大きいと思います」
『漫画 on Web』では、手がけた作品を1話10円から販売し、『ブラックジャックによろしく』が「モーニング」(講談社)から「ビッグコミックスピリッツ」(小学館)への移籍するてん末も暴露してきた佐藤。さらに同サイトでは、『ダービージョッキー』『日本沈没』などで知られる漫画家・一色登希彦との合作漫画の製作ノートも公開するなど、漫画の新たな可能性を探っている。作品の無料公開について、ある出版社の編集者は次のように明かした。
「iPad、Kindleなど電子書籍リーダーの誕生により、出版社は未曾有の岐路に立たされる中、作品の一時的な無料公開は増えています。無料ビジネスから収益を生みだす仕組みを説いた書籍『フリー <無料>からお金を生みだす新戦略』は、1万人限定で無料公開して話題をさらい、ベストセラーとなりました。また、五木寛之の『親鸞』上巻、渡辺淳一の『死化粧』も期限付きで無料公開され、世間の耳目をさらいました。漫画界では『モーニング・ツー』(講談社)が全ページ無料試し読みを行い、一時休止していましたが、9月22日発売号から再開を決めています。一時的に無料で公開して注目を集めるのは、今後出版界でのスタンダードとなるかもしれません」
基本的なサービスを無料で提供し、さらに高度な機能を課金することでまかなうビジネスモデルである”フリーミアム”。過渡期を迎える出版界で、コミックでは12巻もある『海猿』全話を無料公開する佐藤の挑戦が、今後どのような成果をもたらすのか注目だ。
●漫画 on WEB
http://mangaonweb.com/
海に命を賭す男たち。
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