物議を醸すこと必至!? 『BECK』堤幸彦監督が仕掛けた”ある演出”
#映画 #邦画
長く待ち望まれていた人気漫画の実写映画化作品3本が、9月から10月にかけて相次いで公開される。まず先陣を切った堤幸彦監督による『BECK』(松竹配給)は、公開週末の9月4日、5日の2日間で興行収入が3億円を超え、週末興収ランキングでも初登場首位を達成。好調な出足を見せた。
ハロルド作石による原作コミックは、計発行部数1,500万部超を誇る。高校生活に馴染めないでいたコユキが、ニューヨーク帰りの天才ギタリスト竜介と出会ったことでロックに目覚め、新たな仲間たちと結成したバンド「BECK」で夢に向かって突き進んでいく……というストーリー。
コユキが平凡で内向的な高校生から、聴衆を一瞬で魅了するミュージシャンへと成長するさまを、佐藤健が好演。BECKのメンバーを演じる水嶋ヒロ、桐谷健太、中村蒼、向井理も、バンドの”絆”と葛藤をリアルに表現する。女優陣では竜介の妹・真帆役の忽那汐里のほか、益岡弘美役の倉内沙莉のピュアな雰囲気も印象に残る。
まさに今が旬の若手俳優たちが豪華に顔を揃えながらも、やはり人気コミックの映画化『20世紀少年』3部作の成功が記憶に新しい堤監督の演出により、原作のキャラクターの風貌から空気感までもが忠実に再現。観客の想像力を喚起する演奏シーンの「ある演出」は、物議を醸すことさえ計算に入れた監督のしたたかさと言えそうだ。
一方、9月25日公開の『君に届け』(東宝配給)は、現在も連載中ながら単行本が累計1,000万部を突破する椎名軽穂の漫画が原作。純粋で前向きな女子高生だが、見た目の暗さから「貞子」と呼ばれる黒沼爽子(多部未華子)が、人気者のクラスメイト風走翔太(三浦春馬)の優しさに触れ次第に変わっていく姿が描かれる。
こちらは比較的どこにでもありそうな、友情と恋愛を軸とした高校生活が瑞々しく活写される。同世代の若者が共感するのはもちろん、大人世代の観客も過去の体験に重ね合わせて懐かしさを覚えることだろう。監督は『ニライカナイからの手紙』『虹の女神 Rainbow Song』などの熊澤尚人。
前述の2作品とは正反対に、現実とかけ離れた時代と設定を楽しめるのが、よしながふみ原作、金子文紀監督の『大奥』(松竹+アスミック・エース配給、10月1日公開)だ。
謎の疫病がまん延し、男性の人口が激減したことで、女が要職に就き男が体を売る江戸時代。女将軍・徳川吉宗(柴咲コウ)に3000人の美男子が仕える女人禁制の大奥が存在した。貧乏旗本の息子・水野祐之進(二宮和也)は、身分違いで結ばれないお信(堀北真希)への恋心を断ち切るため、大奥へ上がることを決意する。
いわゆる歴史改変ものの原作は、歴史の”IF”に説得力を持たせる緻密な構成が評価され、2009年手塚治虫文化賞マンガ大賞を受賞。男女の立場が逆転する世界を映像化した本作で、全長約40メートルの御鈴廊下(大奥を扱った映画では最大最長のセットという)で美装の武士たちがひれ伏し女将軍がその間を闊歩する前代未聞のシーンなどに圧倒されるもよし、現在の男と女の関係を改めて考え直すもよし。
以上3作品、いずれも長期にわたる連載漫画の映画化ゆえ、エピソードやキャラクターの取捨選択は当然ある。また、原作のファンなら一層、キャスティングについても好き嫌いがあるだろう。原作と映画をあれこれ比較して、見終わった後に仲間と語り合うのも楽しいものであり、そうした時間もまた貴重な人生の一コマになることだろう。
(文=eiga.com編集スタッフ・高森郁哉)
『BECK』作品情報
<http://eiga.com/movie/54662/>
『君に届け』作品情報
<http://eiga.com/movie/55448/>
『大奥』作品情報
<http://eiga.com/movie/55179/>
フレッシュすぎて直視できないよ。
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