プリウスから目玉おやじまで『見てみたかった!おもしろ断面図ワールド』
#本
エロ漫画における表現で定番となっている手法のひとつに、結合部の断面図描写というものがある。要するに膣内でペニスが締め上げられたり、ペニスの先が子宮をコンコン叩いたり、子宮に精液がドバッと注ぎ込まれたりする様子を断面図で表したもの。こういう絵をフツーのエロ絵に挿んで、「ナカはこんなことになってます」と、読者のエロイメージを焚き付ける思惑がある。その描写自体でヌケるかヌケないかはさておき、ふだん見ることが不可能な部分を具体的なビジュアルで認知することで、文字通りモノの見方が変わる。人によっては実践的な知識として重宝するかもしれない。
さて、本書は『見てみたかった!おもしろ断面図ワールド』(別冊宝島 スタディー)との書名が示すように、さまざまな乗り物、建造物、家電などの構造や仕組みを断面図や透視図を用いて図解したものだ。その多くは、トヨタ自動車の「プリウス」をはじめ、パナソニックのフルハイビジョンテレビ「VIERA」、ダイソンの掃除機「DC26」、キヤノンの一眼レフデジカメ「EOS」といった実際のメーカー品で、どれもテレビCMや電気屋さんで見かけるモノだけにとっつきやすい。
ただ、それらの断面図から各メーカーの技術力の高さはうかがえるものの、解説文がいかにも製品カタログ的で、広告クサい部分もなきにしもあらず。なのだけれど、そこへドイツ戦車の代名詞「TIGER ・(ティーガーワン)」や、旧日本軍の戦闘機「零戦」に戦艦「大和」、アメリカ海軍の「ヴァージニア級 原潜」、ルパン三世でおなじみの「ワルサーP38」、さらには最古の電子楽器といわれる「テルミン」など、マニア色ないし趣味色の濃いブツが突拍子もなく、しかし当たり前のように割り込んでくる。建造物では「国会議事堂」から「自由の女神」、「タージマハル」に「黒部ダム」と、その節操のないラインナップが面白かったりする。
極めつけは本書を締めくくるカテゴリー「幻想」で取り上げられている、「バルタン星人」(ウルトラマン)、「目玉おやじ」(ゲゲゲの鬼太郎)、「UFO」、「マッハ号」(マッハGoGoGo)の4つ。ここでも「なぜその4つ?」と首を傾げてしまう。というか、ここまで一応は学習図書的図鑑の体を保っていたのを、最後に台無しにした感じ(※褒め言葉)。
本書の「はじめに」には、〈断面図や透視図を見るだけで、「そーだったのか!」って、目からウロコがボロボロ落ちる〉とある。その「そーだったのか!」を最も強く感じたのは、ファンタジー世界の人(?)やモノの断面図だった。
あの目玉おやじの目の奥には実は2つの目があって、透視ができるうえに夜目も利くとか。脳に内蔵された”地獄テレビ”で遠くで起こっている出来事を脳内に映し出したり、”ことばのコンピューター”を使って虫語や植物語などを話したり。その身に危険が迫るとヘソからラッパの音が出て、もし踏んづけられてぺしゃんこになっても、すぐに蘇生する不死身機能付き。シンプルな外見のくせに、ナカはすごいことになっていた。
(文=須藤輝)
ギョーテン。
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