「そこにいるだけで価値がある」結構イケてる”ジャニタレ主演舞台”の知られざる評判
──ジャニタレ出演テレビドラマの視聴率低迷など、テレビ・映画の世界ではなんだか勢いがなくなってしまったようなジャニーズ。しかし、舞台演劇の世界では、彼らに熱い視線が注がれているという。一般の演劇評ではお目にかかれないジャニタレ舞台興行の実態を追った。
写真のような『和』テイストの演目が、多く挿入されてい
る。仮面の中身は、素敵なタッキー(は~と)スマイル。
1985年に弱冠20歳の近藤真彦が史上最年少座長(当時)を務めた『森の石松』、86年の初演から08年までの23年間で通算957公演を行い、138万465人を動員した少年隊の『PLAYZONE』などなど……。戦後まもなく、ロサンゼルス在住時代に、美空ひばりや、笠置シヅ子、勝新太郎、花菱アチャコらの現地公演を手伝っていたというジャニー喜多川御大の意向もあるのだろう。”ライブ”重視のジャニーズ事務所では、かねてから、事務所を挙げてのステージプロデュースが、コンサートと並ぶ最重要コンテンツと位置づけられてきた。かのSMAPも、かつては、同テーマでありながら別々のストーリーの芝居を東京と京都で同時に上演する実験作『ANOTHER』(93年)、もはや本人たちの間では黒歴史扱いだろうミュージカル版『聖闘士星矢』(91年)や『ドラゴンクエスト』(92年)など、さまざまな舞台を踏んでいる。
また、木村拓哉が唐十郎作、蜷川幸雄演出の『盲導犬』(89年)に出演するというように、大物演劇人とのコラボレートにも積極的な上、99年には舞台活動専門のグループ「ミュージカルアカデミー」まで登場させている。
ゼロ年代に入ってからは、その舞台志向がさらに加速し、02年には、当時経営不振だった東京・新宿の「パナソニックグローブ座」(現・東京グローブ座)を松下電器産業(現・パナソニック)から買収。「シェークスピア演劇の殿堂をアイドル事務所が買うなんて……」との声もあったが、”常打ち”ともいえる劇場を手に入れたジャニーズ事務所は所属タレントのステージを連発。少年隊の東山紀之(04年)やKAT-TUNの上田竜也(09年)が主演する『ロミオとジュリエット』のような古典や、少年隊・錦織一清主演の『CABARET』(04年)、V6・三宅健の『第17捕虜収容所』(08年)といったブロードウェイ作品や海外作家の作品、堤幸彦演出/嵐・二宮和也主演の『理由なき反抗』(05年)、劇団TEAM 発砲・B・ZINのきだつよし演出/嵐・大野智主演の『バクマツバンプー』(05年)、G2作演出/TOKIO・松岡昌宏主演の『JAILBREAKERS』(06年)など、名うての演出家を起用した舞台から、NEWS・手越祐也の『手越祐也のワンマンRADIO SHOW「テゴラジ」』(07年)といったファンイベント的なものまで、さまざまな演目を毎月のように上演してきた。
他方、元男闘呼組の岡本健一が、大人計画の『キレイ』(05年)に客演し、V6・森田剛が劇団☆新感線プロデュースの『IZO』(08年)や、蜷川演出の『血は立ったまま眠っている』(10年)に、二宮和也が岩松了作/蜷川演出の『シブヤから遠く離れて』(04年)に主演するなど、東京グローブ座以外、つまり、ジャニーズ主導ではない舞台に立つケースも増えている。そのほか、09年には三谷幸喜作演出/SMAP・香取慎吾主演のミュージカル『TALK LIKE SING』をオフブロードウェイで上演していたのもごぞんじの通り。さらに、生田斗真や風間俊介のように、歌手活動よりも俳優業に積極的な新しいタイプのジャニーズタレントも目立っている。
■「ポテンシャルが一段高い」評価の高いジャニ演技者
かように膨大な役者、演目、公演数を誇るジャニーズ演劇だが、不思議とその評判を目にする機会には恵まれない。かろうじて、KinKi Kids・堂本光一『SHOCK』シリーズ(00年〜)や、滝沢秀明『滝沢演舞城』(06〜09年)、『滝沢歌舞伎』(10年)といったジャニー喜多川総合演出のド派手なショーの稽古の模様をワイドショーで紹介されることはあるが、そのとき画面に映し出されるのは、ワイヤーで宙吊りになった王子様ルックの光一くんやタッキーの御姿のみ。ファン以外には、その素晴らしさがちょっとわかりにくい、あまりに独自なジャニーさん的美学に彩られている。ほかの舞台もこの美学ゆえに、マジメな演劇シーンから黙殺されているのだろうか?
「確かにジャニーズプロデュース公演の劇評が専門誌に載ることはほとんどないかもしれません。でも、特に外部の演出家と組んだ演目の場合、『ジャニーズだから』という色眼鏡で見られることはまずありませんよ」
そう語るのは、国内外のステージの劇評のほか、舞台に上がるジャニーズタレントのインタビューも数多く手がける演劇ジャーナリスト・岩城京子氏だ。
「舞台に立つということは、全身を見せること。それだけに、ジャニーズのような美しい人たちは、もうそこにいるだけで価値がある(笑)。その上、子どもの頃からステージのセンターに立って、歌い踊る訓練を受けているので、ヘタな役者よりも身体的なポテンシャルが一段高いところにあり、プロ意識も高い。例えば、V6・坂本昌行さんが主演した『ボーイ・フロム・オズ』(05年)は、ともすればブロードウェイ版以上のクオリティでした。ブロードウェイ版が半ば主演のヒュー・ジャックマンのワンマンショーと化していたのに対して、坂本さんは作品全体の意図をくんだ芝居をしつつも、いざ歌い踊るとなれば、圧倒的な存在感を見せつける。ミュージカルアクターとしても十分通用する存在です」(同)
また、三宅健は岩城氏に「観客の雰囲気を瞬間的に察知できる」と自ら語り、事実、客席の反応次第で芝居のテイストを自在に変えてみせ、森田剛は『IZO』の脚本を受け取った刹那、そこに書かれた「天誅だ!」と吠えるシーンこそが「かっこよくなる」=”自分の最大の見せ場だ”と見抜いてみせたという。
「ジャニーズの役者さんには、舞台上の360度すべての状況をイメージ、把握できる演劇的運動神経も備わっているようです」(同)
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