「一生懸命ふざける」バッファロー吾郎・木村明浩 すべてはコントの枠の中で
#本 #インタビュー
8月25日、バッファロー吾郎の木村明浩が書いた初めての小説『ラブボール』(ワニブックス)が発売された。これは、架空のスポーツ「ラブボール」に真剣に打ち込む高校生たちの青春の日々を書いた異色作。マンガやドラマやプロレスに関する小ネタも詰め込まれていて、まさに木村にしか書けなかった作品となっている。この小説の見どころについて、本人に聞いてみることにした。
――この小説を書こうと思ったきっかけは何ですか?
木村 せきしろさん(文筆家)の『不戦勝』(マガジンハウス)という本を読んだときに衝撃を受けて、自分も何か書きたいなと思ったんですよね。昔、ダウンタウンさん、たけしさん、さんまさんを見ていてお笑いをやりたいと思ったのと似た感じで、自分でも書いてみたいと思ったんです。
――架空のスポーツ「ラブボール」を題材にするという奇抜な設定はどこから生まれたんですか?
木村 小説を書きたいとは思ってましたけど、もともとコント師なので、コントの枠からは外れたくなかったんですよ。だから、楽しくできるもので何かないかなと思って、架空のスポーツをやるというのはいいかなと。それやったら、ルールも自分で全部決められますから。
――この話の中では、「ラブボール」というスポーツのルール説明が随所に出てきますが、そのルールの内容についてはご自分の中でかなり細かく決めていたものがあったんですか?
木村 いや、ないです。全部つじつま合わせですからね。このルールっていうのは、『魁!!男塾』の民明書房のようなつもりでやってますから。「油風呂」の細かい説明が書いてあっても誰もやらへんけど(笑)、そこがおもろいわけで。「どういうボケですか」って言われて、それを説明するほど寒いこともないんで。どうでもいいと言えばそれまでなんですけど。
――今回の小説は、基本的に笑わせるために書かれた作品なんでしょうか?
木村 どっちかいうたら、昔の松竹新喜劇とか、『男はつらいよ』みたいな感じですね。笑わせておいて、最後にはじーんと来るところもあって、「おもろかったなー」と言えるようなもの、っていう。そういうのは目指しました。
――小説の中では、マンガやプロレスに関する小ネタがふんだんに盛り込まれていて、そのあたりに木村さんらしさを感じました。
木村 僕は、この小説がオリジナルな作品だとは全然思ってないんです。単なる自分の好きなものの寄せ集めだと思ってるんで。昔からある熱血青春ドラマみたいなものをやりたくて、僕の好きなものを足していったらこれができたという感じですね。登場人物も、今どきいるようなキャラじゃないんです。昔の本宮ひろし先生とか、車田正美先生とかの世界感に近くて。メガネかけた子分がおったり、おちゃらけがおったり、図体でかいだけで何もできないやつがおるっていう。
――小説を執筆するにあたって、具体的に参考にしたマンガはありますか?
木村 部分部分ではいっぱいあるんですけど。例えば、わざと人物描写とかを長々と書いてるのは、『グラップラー刃牙』とか『HUNTER×HUNTER』とかの影響ですね。マンガを読み直して、登場人物が新しく出てくるシーンを見ながら、なるほど、こんな感じで紹介していくんや、って思って。それを自分でもやってみたかったんです。タイトルの「ラブボール」っていうのも、『コブラ』に出てくる「ラグ・ボール」から頂いてますし。
――もともと好きなマンガの世界感があって、それを何とか作品に活かしたかった、ということなんですかね。
木村 活かしたいというよりも、ただ真似したいっていうだけですね。ちっちゃい子どもが仮面ライダーに憧れて、ライダーごっこをしてるだけ、みたいな。似てないけど、自分は仮面ライダーのつもりでやってるんで。だから、書くにあたっての苦労はなかったですね。板垣(恵介)先生ならこうするやろなとか、うすた(京介)先生ならこう書くんちゃうかとか、そういう感じだったんで。
――この本はどういうふうに読んでもらいたいですか?
木村 「一生懸命ふざける」っていう、木村祐一さんの好きな言葉があるんですけど。そういう感じで一生懸命ふざけてるんで、それを見てほしいですね。あとは、「なんでこいつこんなことされたのに生きてんの?」とか、「なんでこれで体鍛えられるの?」とか(笑)、自分でつっこみながら読んでくれたらいいかな、と思います。
(文=ラリー遠田)
●きむら・あきひろ
1970年、兵庫県生まれ。1989年、竹若元博とともにお笑いコンビ「バッファロー吾郎」結成。吉本印天然素材での活動を経て帰阪後、独自のスタイルによる笑いを追及し、多くのファン・関係者からカリスマ的な支持を集めている。第1回「キングオブコント」優勝。また「ダイナマイト関西」「バトルオワライヤル」など、革新的なお笑いイベントのプロデュースも手がける。
コント小説。
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