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「やったもん勝ち」なんて当たり前! 海外マンガ・アニメ違法投稿サイトの実情

 「マンガやアニメは好きだけど、中の人は飢え死にしてもいいです」そんな心の中の声が聞こえてきそうだ。

 先日、アニメ化もされたマンガ『黒執事』の作者・枢やな氏が公式ブログで「友達からROMで借りて読みました」「1期全部海外動画サイトで見ました」などのメールを送ってくる、「ファン」を称する人々のモラルのなさに非難する文章をアップし注目を集めた。そして、正規のルート以外で違法にアップロードされたマンガやアニメを入手・閲覧している人々の意識は、世界のどこでも同じらしい。

 8月にアメリカ・サンディエゴで開かれたマンガ・アニメを中心としたポップカルチャーの祭典「コミコン・インターナショナル」。そこで催された、オンラインの違法コンテンツをめぐるシンポジウムの中で、参加者の一人が客席から次のような発言をしたという。

「出版社はスキャンレーション(後述)のサイトを、(どのマンガが現在ファンの間で流行っているかを見るための)調査に使っているのではないか? 例えば『ヘタリア』(日丸屋秀和による国擬人化コメディ)などはスキャンレーションがあったからこそ、アメリカで出版されることになったのではないか?」

 これに対するパネラーの発言は次のようなものだった。

「いったんネットに作品が出回ると、もうそれはネット上から取り下げても意味は無くなるし、実際に日米出版社による共同声明後(後述)に、出版社が多くのスキャンレーションサイトに作品をサイトから取り除くように要請したが、その要請に応えたサイトは少数だった」

 ほかにもパネラーは次のように話している。

「調査のためなら、数章掲載するだけでも足りる。例えば『ワンピース』の人気を見るだけなら、最初の2~3章掲載するだけでいい。でも多くのスキャンレーションサイトには『ワンピース』が全章アップされている。それはどう言い訳するのか?」

 違法にマンガやアニメをアップロードしたサイトであっても、ビジネスの役に立つ。果たしてそんなことはあるのだろうか?

 海外のマンガ・アニメ愛好者にとって違法アップロードサイトは、日本では考えられないほど公然と存在している。違法にアップロードされたマンガやアニメのうち、マンガはスキャンレーション、アニメはファンサブと呼ばれる。その歴史は長く、インターネットが普及した90年代後半から行われていた。それぞれ、日本語が理解できなくても分かるように、英語など(ほかにも各国語がある)の字幕をつけたものが流されるわけだが、驚くべきはその仕事の速さ。日本で放送されたばかりの深夜アニメが、翌日、翌々日には早くも字幕付きでアップロードされていることもあるのだ。

 そんなハイスピードで作業を行うことができるのも、日本国内で雑誌をスキャンしたり番組を録画する日本人協力者がいるからだ。海外のファンとネットワークを持っているくらいだから、協力者たちの多くは高学歴だ。でありながら、違法かつモラルのない行為に手を染める理由はなにか。

「アメリカですら、日本で流通しているマンガやアニメのうち英訳され販売されるものは限られている。かりに販売されたとしても、長期間のタイムラグがある。そうしたファンの心情が、スキャンレーションやファンサブを成立させているんです」(ある日本人協力者)

 今でも、こうした「愛ゆえの、止むに止まれぬ行為」だというファンは少なからず存在するが、その数は少ない。かつて、「愛ゆえ」にファンサブやスキャンレーションのサイトが運営されていた時代には、自分たちの国で作品がオフィシャルに放映・販売されるようになると削除する「暗黙の紳士協定」があった。しかし、現在はそういうファンはほとんどいない。そして、違法だという意識も薄い。

「大手の違法アップロードサイトは、アフィリエイトや企業広告で収益を得ています。そればかりか、勝手に(c)マークをつけたり、有料配信をしているものもあります。欧米で人気を博している『NARUTO』は、一時期Googleで作品名を入力すると、そうした違法サイトが検索順位のトップに表示される状態になっていた。そのため、年少のユーザーは違法だという意識どころか、それらが公式のものだと思って閲覧していることもあります」

もちろん、権利者の側も黙っているわけではない。日本ではアニメビジネスの情報サイト『アニメ!アニメ!』が報じている(http://animeanime.jp/news/archives/2010/06/42_3.html)が、今年に入り日米の出版社が共同で、違法サイトに警告書を送付する取り組みを行っている。これにより、いくつかのサイトは閉鎖に追い込まれた。その中のサイトの一つは、Googleが発表している世界の上位サイト1000にランクインしていた。それくらい、違法サイトは誰もが気軽にアクセスするものになっている。ユーザーに違法サイトを利用することの問題を知らしめるためにも、権利者のアクションが求められている。

◆合法に転身した? 違法サイト

 消えてもすぐに新たなものが立ち上がる違法アップロードサイト。中には、どういうわけか合法サイトに転身を遂げたものもある。

 それが、動画配信サイト「クランチロール(http://www.crunchyroll.com/)」だ。

 2006年にカリフォルニア大学バークリー校の出身者らによって立ち上げられたこのサイトは、アニメの違法アップロードサイトとしては異例の急成長。それに目をつけた投資家によって本格的な収益事業を目指すことになった。それは、権利者とライセンス契約を結び合法サイトに転換することだった。09年に日本法人を設立すると、まずテレビ東京との契約に成功。さらに、GDHや東映などとも契約を結ぶに至った。

「当初は、合法だと言いながら違法な動画を混在させていたこともあり、不信感はぬぐえない。それにクランチロールの成功例が、ほかの違法アップロードサイトを正当化する口実となっているんです」

 さらに問題なのは、総務省が同社に「お墨付き」を与えてしまっていることだ。同社は昨年開催された、総務省が後援するデジタルメディアのイベント「第15回AMD Award ’09」にて「デジタル・コンテンツ・オブ・ジ・イヤー’09年間コンテンツ賞/優秀賞」を受賞。いわば、日本政府が存在を公認したかのような構図になっている。このことが、ほかのサイトに「彼らも最初は違法だったのだから、いいじゃないか」という意識を蔓延させている。

 性善説で考えれば「改心した」と思いたいところだが、同社からはどうもグレーな印象が漂う。たとえば、同社がどうやって収益を上げているのかも謎だ。今年5月から「黒字化した」と公表しているが月600万人のユニークユーザー(公称)に対して、月7ドルの有料会員は、わずか2万人(公称)にすぎない。そのような企業と、テレビ東京や東映などの大手コンテンツホルダーが手を結び、出資している理由があるとすれば、幾ばくかの出資でアメリカに公式配信サイトをつくり違法サイト撲滅の一助にするという利便性だろう。

 いずれにせよ、同社の行いは「成功」というよりも「やったもん勝ち」の印象がぬぐえない。今年6月には凸版印刷の子会社で携帯コミック配信の大手・ビットウェイが同社に75万ドルを出資したことも報じられている。

 「合法化」したとはいえ不安の残る外資ベンチャーに期待せねばならぬほど、日本のコンテンツホルダーは追いつめられているのだろうか。
(取材・文=昼間たかし)

情報モラル宣言-インターネット時代の生きる力を育てる

大切です。

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最終更新:2010/09/07 15:00
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