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「ドラえもんの科学みらい展」レポート

みんなで覚えよう!「タイムマシンのつくり方」

doratime01.jpg10年前にだけ行けます。

 空を自由に飛びたい君も、世界旅行に行きたい君も、最先端の科学で幸せになろう!

 というわけで、9月27日まで開催中の「ドラえもんの科学みらい展」を見学すべく、東京・お台場の日本科学未来館へ行ってまいりました。

 折しも訪れた8月21日は「タイムマシン!? ~最先端物理学によるタイムトラベル~」と題したトークイベントが開催されるという。企画展会場では、タケコプターならぬひとり乗りヘリコプター GEN H-4や、リアル光学迷彩である再帰性投影技術&メタマテリアル、外骨格型パワードスーツと言いたくなるロボットスーツHAL、マンマシンシナジーエフェクターなどが、ドラえもんのひみつ道具と重ね合わせて紹介されている。そこにしつらえられたトークイベント会場は全50席。開演時間が近づくと瞬く間に埋まってしまい、立ち見のお客さんが溢れる盛況ぶり。

■準備

 開演時間前には、トークを聞くための準備として、同館の科学コミュニケーターからタイムマシンのレシピが紹介された。それによると、以下の四工程を経るのだという。配られた書き込み用紙の【】内は、穴埋め問題式に各自が手書きするブランクスペースになっていた。

 なお、このレシピに示されている分量は「人ひとりを通す穴=タイムマシンを作り、10年分飛ばす」ためのものである。

***
1)材料   【地球】100個分の重さを用意する
2)つぶす  圧力で【ブラックホール】をふたつ作る
3)ひろげる 【負のエネルギー】でひろげ、ふたつをつなぐ
4)投げる  入口を時速【1,075,000,000】kmで投げる

アドバイス
・大きな入口が欲しい方は、お好みで重さを増やしましょう。
・投げる速さで、タイムマシンの仕上がりが変わります。
・タイムマシン作成時よりも過去に行くことはできません。
***

 と言われても、それだけではよくわからない! 「!」と「?」が交錯したところで、いよいよ真打ち登場。タイムマシンの原理を説明してくれる講師は、東北大学の二間瀬敏史教授である。

■つくり方

 重力が強いと空間が曲がる。どんどん曲がっていくと穴が空く。それがブラックホールだ。どんな物体でもぎゅっと押し込んでいくとあるところでブラックホールになるが、その手前の状態で止めておいたものが、タイムマシンの入口になると言う。

 どういうことかと言うと、ブラックホールになる一歩手前で、重力に対して反発するエネルギーを入れなくてはならない。それを負のエネルギーと呼ぶのだが、この両者の力をバランスさせると、穴が潰れることなくもうひとつの穴と結ばれ、入口と出口ができるのだという。

「特殊相対性理論というものがあるわけですね。運動している時計の進み方は遅れる。したがって速く運動すればするほど、静止しているものに対して時間が遅れる」

 相対性理論キター! ジェット機に原子時計を積んで地球を一周させただけでもその遅れは明瞭だというから、少なくとも我々の現時点の宇宙では確固たる事実と言っていいだろう。この相対性理論に基づいてブラックホール/ワームホール式のタイムマシンというか、タイムトンネルをつくってしまおうというのが、二間瀬教授の発想らしい。

 つくり方に話を戻すと、概念としては入口を掴んで猛烈な速さで投げる。ただ投げるのではなくて11年後に手元に戻ってくるように投げる。投げる速さはジェット機のおよそ120万倍もの大きさでなければならないというのである。高速で飛ばすのは、入口の時間を遅らせるため。地上に残しておいた出口が11年経っている間に、入口は1年しか経っていないとようにするんだとか。でもそんな速さを実現させるのはとても無理だ。

「時間を遅らせるもうひとつの方法は、重力の強いところにものを置いておくこと」

 重力の強いところでも時間が遅れるから、例えばブラックホールのそばまで持って行き、そこでゆっくりさせておいて、あとで元に戻せばいいということのようだ。

 概念としてのつくり方は分かったが、ではこれ遙か未来の高等文明が実現してくれたと仮定して、どう運用すればいいのだろう。

■使い方

 仮に前述の速さで今日投げたとすると、タイムマシンは11年後に完成する。

dora03.jpg(上)ドラえもんのお仲間ともいうべき
ロボットが展示されている。
(中)現時点でもっともタケコプターに
近い最小のヘリコプター。
(下)ガリバー気分が体験できる
アトラクションも。

 もし作成開始年が2010年だとすると、その時点で投げた入口は2021年に戻ってくる。そして2021年にその入口に入った場合、穴の出口は10年前の2011年に開いており、「ただ10年前に戻るだけ」の時間旅行をしたことになる、というわけだ。箇条書きにすると、以下のようになる。

・2010 タイムマシン作成開始
・2021 タイムマシン完成。入口に入る
・2011 出口から出ることができる

 仮に2011年に出現した出口に入った場合は、2021年の入口に出る。タイムマシン作成時点以前の過去に遡ることはできない。もしも遙か過去に誰かがタイムマシンを作っていれば話は別だが、それがないのだとすれば、未来から戻れる過去の下限は「現在」にしかならない。

 ちなみにタイムパラドックスに整合性を与えるための説は3つあるという。

1. タイムマシンは存在しない=つくれない、時間旅行はできない。
2. 時間旅行が過去に影響を与えないように自然法則ができている
3. タイムマシンで移動した過去や未来は別の宇宙である

 時間や空間の理論をつきつめた結果、タイムマシンが存在する余地はあることが分かってきた。実現は難しいが「月1個をつぶせば原子核を通すくらいのタイムマシンは作れる」(二間瀬教授)というから、何百年後かに、とりあえず時間旅行があるかどうかを観測することはできるかもしれない。

 それにしても気が長い話ではあります。
(取材・文・写真=後藤勝)

タイムマシン

5年前のあの夏に……。

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最終更新:2012/10/03 17:04
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