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非日常のなかにあるリアル 新感覚エンタメ映画『ネック・マシーン』『東京島』

NECK.jpg(C)2010『NECK』製作委員会 シネマサンシャイン池袋、新宿バルト9ほか全国ロードショー

 8月も下旬に入り、万人ウケするファミリー向け映画と少しずつ入れ替わるかのように、クセのある個性的な新作が登場してくるこの時期。そうした作品群の中でも、当代屈指の人気作家の小説や原案を基に映像化された邦画2本、『NECK ネック』(アスミック・エース配給、公開中)と『東京島』(ギャガ配給、8月28日公開)が個性を放っている。

 『NECK ネック』は、独特の口語体と奇想天外の展開、確かな構成力でファンを魅了する覆面作家・舞城王太郎による、映像化を前提に書き下ろされたストーリーが原案。相武紗季の映画初主演作で、テレビドラマ演出で活躍してきた白川士監督の劇場映画デビュー作でもある。

 少女時代からお化けに興味を持ち、「恐怖心がお化けを作り出す」という持論を実証しようと研究に打ち込む大学院生・真山杉奈(相武)。告白してきた後輩の首藤(溝端淳平)を、自ら開発した装置「ネック・マシーン」の実験台にして、お化けを発生させようとするが……。

 過激な描写や残酷シーンこそないものの、コミカルな展開の中で突然ハッと驚かされ、恐怖をごまかすように思わず笑いを漏らしてしまう場面も少なくない。新感覚のホラー・ラブコメムービーといった趣だ。クールな美人編集者役で共演する栗山千明が独特の存在感を放ち、AKB48の河西智美も華を添えている。

 『東京島』の原作は、谷崎潤一郎賞を受賞した桐野夏生の同名ベストセラー小説。第二次大戦後に太平洋の孤島で実際に起きた「アナタハン島事件」がモチーフになっているが、映画の時代設定は、小説と同様、ほぼ現代に置き換えられている。

 清子と隆の夫婦はクルーザーの旅に出て嵐に遭遇し、太平洋の無人島に漂着。隆が衰弱するなか、与那国島の重労働から逃げ出した16人のフリーター集団が流れ着く。隆が謎の死を遂げると、今度は密航に失敗した中国人の男6人が島に漂着。いつしか「東京島」と呼ばれるようになった南海の孤島で、男22人と清子の奇妙な共同生活が繰り広げられ……。

 原作のエロティックなシーンが食欲の描写に置き換えられ、グロテスクなエピソードが笑いに転じられたことで、男性観客のある種の期待は残念ながら外される。だがそのおかげで、孤島サバイバルという状況でありながら清潔感、オシャレ感が保たれ(エルメスがスカーフの提供で特別協力している)、カップルで観ても気まずくならず、女性観客が元気をもらえるようなポジティブな映画に仕上がった。

 主演は『ぐるりのこと。』(08)で日本アカデミー賞最優秀主演女優賞に輝いた木村多江。共演は窪塚洋介、福士誠治、鶴見辰吾ほか。『犬と歩けば チロリとタムラ』(03)の篠崎誠監督が、無人島の共同生活に現代日本の世相を巧みに投影している。

 これら2本は、人気作家による刺激的なストーリー、魅力的なキャスト、ひねりの効いた演出のおかげで、非日常的な設定を意外とリアルに体感できる娯楽作。小説と比較しながらマニアックに鑑賞する層はもちろん、新感覚のエンタメを気軽に楽しみたい人にもオススメだ。
(文=eiga.com編集スタッフ・高森郁哉)

『NECK ネック』作品情報
<http://eiga.com/movie/55093/>

『NECK ネック』相武紗季&溝端淳平インタビュー
<http://eiga.com/movie/55093/interview/>

『東京島』作品情報
<http://eiga.com/movie/55019/>

ぐるりのこと。

こんな妻がほしい。

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最終更新:2010/08/27 08:00
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