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日刊サイゾー トップ > 連載・コラム  > 世界でも日本だけ!? 血液型にこだわる日本人の国民性
のり・たまみのへんな社会学 第5回

世界でも日本だけ!? 血液型にこだわる日本人の国民性

agata.jpg『A型自分の説明書』(文芸社)

世の中のへんなものをこよなく愛するのり・たまみの、意外と知らないちょっとへんな社会学。

A型……マジメ、几帳面、神経質
B型……気分屋さん、さみしがりや
O型……大雑把、おおらか
AB型……ずばり変人!

 数年前に、こんな感じの血液型占いの本が大ブームになりましたね。昔、合コンで友人と可愛い女の子が「A型とO型だから相性ピッタリだね」なんて盛り上がって、そのままカップルになったのを指をくわえて見ていたのを思い出します。

 こうした血液型占いというか、「血液型人間学」は世界でも日本だけのものと言われています。日本の影響で韓国や台湾でもやや知られてはいるものの、信奉者が多いのは日本だけ。「ぜったい血液型は関係ある!」という肯定派から、「科学的に調べてもなんの根拠もない」という否定派まで、態度は人それぞれです。

 世間には「保育園の段階で、血液でクラスを分ける」、社長が血液型を信じているばかりに「プロジェクトチームのリーダーはA型で、サブはO型とする」「係の編成は全部の血液型を入れるようにする」など人事部に指示している会社もあるそうです。

 どこまで血液が人に影響を及ぼしているのか、もしくはいないのかは筆者には分かりませんが、どうして日本だけなのかをちょっと調べてみました。

 血液型は、1900年にオーストリアの医学者カール・ラントシュタイナーによって発見されました。A型、B型、O型、AB型というのは、血液の中の赤血球の型を分類したものです。

 この分け方以外に、白血球で分ける「HLA型」という分け方や、他にも「ディエゴ式」「ルイス式」「ダフィ式」「MN式」など約400もの分け方があります。血液のどこに注目するかによって変ってくるのです。

 「A型とB型なので別人」と思われていても、実は別の分け方で調べたら「同じ血液型」になったりすることもあり、要はどこで切り分けるかなんですね。厳密にはA型、B型、O型、AB型で調べても、どこにも当てはまらない「ボンベイ・ブラッド」や「血液キメラ(AB型とO型がまざっているなど一人で2つの血液型を持つ)」など特殊な型を持つ人も存在します。

 日本でこんなに血液型が信じられるようになったのは、1971年以降。きっかけ1冊の本でした。

 放送作家でもあり、雑誌の編集者であった能見正比古氏が書いた『血液型でわかる相性―伸ばす相手、こわす相手』(青春出版社)です。本人が積極的にテレビにも出演したこともあり、「血液型で人を分けて分類するのって面白い」と一大ブームになりました。

 それまでも、「血液型は人の性格と関係しているのでは?」と地道に研究している人はいましたが、世間に「血液型分類」が知られるようになったのは、この本がきっかけです。面白いネタということで、その後もテレビが取り上げ、たくさんの「血液本」が出版され今に続くブームになりました。

 日本でこんなにも流行した要因はいくつかあります。たとえば、血液型による人口比。日本ではA型、B型、O型、AB型は、だいたい「4:3:2:1」とバランスよく配分されています。AB型は人口の1割程度なので、「変人、変わってる」とするにはちょうどいい数なんでしょう。これが「100人に1人」では探すのが大変ですし、逆に「人口の4割」だったら「変人」とするには無理があります。「10人に1人くらいの変わった人」というのは無難な線です。

 そういう意味では「AB型は変人」というのは証明されているより、最初から答えが決まっている気がします。たとえば9割以上がO型が占める南米のインディオでは、血液型を聞いても「ほとんどみんな0型」なので、話が盛り上がらないでしょう。

 それにしてもなぜ、欧米では流行しないんでしょうか。欧米では日本のアニメが大人気です。海外旅行にいって、テレビをつけたら普通に日本製のアニメが放送されている世の中です。なぜ、血液型占いは広まらないんでしょうか。

 そう思って調べてみると、衝撃的な事実が判明しました。欧米の人たちは、そもそも自分の血液型を知らないんです。国や職業などにもよりますが、自分の血液型に興味がないというか、知る文化がありません。基本的にみんなが自分の血液型を知っているのは、ほぼ日本だけのようです。

 よく「緊急の時に自分の血液型を知らないのは危ない」という話がありますが、実際に医療現場で輸血などする際に、本人の言うことを信じてそのまま輸血などすることはありません。ちゃんと事前に血液型を調べて行います。

 意外に、自分が思っている血液型と調べた結果が異なる人もいるようなので要注意です。実際に、あなたのまわりにも「大人になるまでA型と思っていたのに、この前病院で調べたらB型だった」なんて人がいませんか? 血液型を調べるのは簡単で、ABO式なら数分程度で出来ます。なので、多くの欧米人にとっては「手術などの時に分かればいいし、それはその時調べてくれること」なので別に知りたいとも思わないし、普段の会話で「血液型」の話題が出てくることもありません。「緊急時対応のために、事前に血液型を知ってなければならない」と学校などで言われることもある日本は、普段から血液型に対して「知ってなきゃいけない」という強迫観念が強いのかもしれません。

 またアメリカで流行しない理由として、「離婚・再婚が多いため」という説もあります。再婚などで「お父さん・お母さん」が変わる場合が多く、あまり血液型が流行すると本当の親子ではないことが周囲にバレてしまう。そこで、無意識的に避けるという説です。

 いずれにせよ、こんなにも「血液型人間学」が流行しているのは世界でも日本だけですし、今のところは科学の世界でも否定されているみたいなので、今後も世界に広がっていく可能性は少ないようです。

 日本独自の、ちょっと変わった信仰の一つなのかもしません。
(文=のり・たまみ)

●のり・たまみ
世界中の「へんなもの」をこよなく愛する夫婦合体ライター。日本のみならず、世界中の政治の仕組みや法律などをこよなく偏愛している。主な著書に『へんなほうりつ』(扶桑社)、『日本一へんな地図帳』(白夜書房)、『へんな国会』(ポプラ社)、『へんな婚活』(北辰堂出版)などがある。

A型自分の説明書

でも、けっこう当たってるんだよね。

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最終更新:2010/08/17 11:00
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