『ヤノマミ』で描かれた、現代社会の想像を超えた原始部族の生活
[徳光正行オススメポイント!]
ヤノマミ族の生活で気づく「人間」という定義の広さ
ヤノマミ族が使う言葉では、彼ら以外の人間を「ナプ」と呼ぶそうですが、そこには「人間でないもの」という意味もあります。それと同じく、文明社会に生きているボクたちにとっても、ヤノマミは同じ人間とは思えない。それは、生まれた子どもを精霊に返す(=殺す)という行為や、狩りをするときの獣のような視線など、いわゆる現代社会に生きる人間には理解できないことばかりだからです。しかし、彼らの生活や考え方を知ると、ボクらの安直な人道主義で、彼らの行為を非人道的と断ずることはできないんです。かと思うと、日本の飲み屋でよく見かけるエロオヤジのように、生娘とのセックスの難しさを歌っているヤノマミのオヤジがいたりする(笑)。この「遠さ」と「近さ」があるからこそ、広義ではヤノマミもボクたちも「人間」だと気づくんです。
また、14歳の少女が出産するまでを追ったシーンも、いろいろと考えさせられました。最終的には彼女は自分の赤ちゃんを”精霊に返す”のですが、出産を経験した後では顔つきがガラリと変わる。大人になるとは、こういうことだと思いましたね。これと同じようなタイトルのドラマがありましたけど、とても比べ物にならないリアルさがあります。
この作品は、大人だけではなく、子どもたちにも見せてあげたい。よくある「命の授業」よりも、義務教育課程において道徳の授業で見せるべき!!
とくみつ・まさゆき
1971年、神奈川県生まれ。フリーアナウンサー徳光和夫氏の次男にしてタレント。本誌連載のほか、主なレギュラー番組に『ザ・ゴールデンアワー』(TOKYO MX)、『美人塾』(BSフジ)など。近著に『伝説になった男 〜三沢光晴という人〜』(幻冬舎/1260円)。昨年6月、リングの上で帰らぬ人となったプロレスラー三沢光晴氏。彼との、15年間にも及ぶ交流から知られざる素顔を浮き彫りにした渾身のエッセイです。
[宣伝担当オススメポイント!]
想像を絶する原始の部族、そしてアマゾンの大自然も必見!
思わず見とれてしまうアマゾンの大自然。150日という長期間、ヤノマミ族の生活を追い続けたドキュメンタリーの傑作。あるときは、食料が足りなくなり、撮影クルーが動けなくなることもあったというほどのハードな取材を続け、アマゾンの奥地に生きる原始の部族たちの姿を映し出しています。集団で狩りや農耕を行う自給自足の生活、出産と間引き、幻覚剤を用いて動物を憑依させるシャーマンなど、そのどれもが私たちの文明社会では考えられないもの。特に、子どもたちが猿を狩るシーンでは、まるで遊んでいるように無邪気な笑顔を浮かべながらも、都会の子どもたちとは明らかに違う違和感がありました。
そこには、奥アマゾンを生き抜くための知恵や工夫を学び取っているのが感じられ、深く考えさせられてしまいます。また、ヤノマミだけではなく、うっそうとしたアマゾンの森、吸い込まれるような満天の星空など、文明社会では見ることのできない雄大な自然を映し出したシーンも必見です。
(構成/丸山大次郎)
(写真/田中まこと)
(スタイリング/中里智弘)
ドキュメンタリー
『NHK-DVD ヤノマミ 〜奥アマゾン 原初の森に生きる〜劇場版』
広大なアマゾンのジャングルで暮らし、1万年以上も独自の文化や風習を守り続けているヤノマミ族。ブラジル政府や部族の長老との10年間にも及ぶ交渉により、彼らの集落に滞在を許され、取材を敢行。「人間と自然」「生と死」など、文明社会から切り離された原始の暮らしを克明に映し出し、NHKで放送されたドキュメンタリーの傑作。
販売元/コロムビアミュージックエンタテインメント
監督/国分拓
時間/120分
価格/3990円(税込)
発売/好評発売中!
ⓒ2010 NHK
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