慈善事業なのに要風俗営業認可 セックスボランティアの厳しい現状
#雑誌 #出版 #元木昌彦 #週刊誌スクープ大賞
●第56回(8月3日~8月10日発売号より)
第1位
「衝撃の長編ルポ セックスボランティア」(「週刊ポスト」8月20・27日号)
第2位
「憂国対談 野中広務×立花隆『菅と小沢最終戦争を読む』」
(「週刊現代」21日・28日号)
第3位
「ワイド特集 私は見た!今だから語れる『時代の主役51人』」(「週刊文春」8月12日・19日号)
私事で恐縮だが、今週火曜日(8月10日)発売の「週刊アサヒ芸能」で、私の連載「セックス・スキャンダル~世間を驚愕させた女の今~」が始まる。
いつの時代も、セックス・スキャンダルは大きな話題を呼び、世の批判を浴びた権力者たちは、それを境に、権力の座から滑り落ちていった。
しかし、告白した女性たちのほうも傷つき、その後の人生は平坦ではなかった。まして、実名でテレビにまで出て、顔を覚えられた女性は、どこに身を隠しても、世間の目は追いかけてくる。
そうしたことが予想できたのになぜ、彼女たちは命がけで、自分の房事のことまで、メディアの前で話してしまったのか。
大騒ぎしたメディアから忘れられた彼女たちは、その後の人生をどのように生き、どんな思いで当時をふり返るのだろうか。併せて、メディアの責任ということも考えてみたいと、筆を執った。第1回は、1989年に、宇野宗佑総理(当時)を告発した「三本指の女」中西ミツ子氏。
さて、先週発売の「文春」、「新潮」から始まった合併号ウイーク。両誌は例年通りのワイド特集が売り物だが、「現代」と「ポスト」は、長目のルポや対談などで、じっくり読ませようという誌面作りだ。
まずワイド特集の優劣だが、新潮の「沢尻エリカ独占激白40分」が目立つが、内容は「まだ離婚できない」と愚痴っているだけで、1本1本見ていくと、文春に読み応えのあるものが多い。
まずは勝新太郎。がんが見つかってメディアが大騒ぎする中、勝が開いた記者会見で、医者に止められているはずのタバコをふかし、ビールをうまそうに飲み干して見せ、周囲を驚かせたが、これは勝が命を賭けた「大芝居」だった。旧知の芸能レポーターに勝が、「待ってました! 勝新」と掛け声をかけてくれと頼んでいたのだ。勝は最後まで、豪放磊落な勝新太郎を演じきって死にたかったのだという、希有な役者バカのちょっといい話。
昨年亡くなった女優の大原麗子。実弟によると、病気の悪化のために仕事を控えたため、高価な美術品もほとんど売り払われ、年金も繰り上げ受給していたほど困窮していたそうだ。それでも役者であることにこだわり続け、スタジオジブリから破格の条件で声優のオファーをもらったときも、「私は声優ではないから」と断った。
作家の藤沢周平は、大変な寂しがり屋で、妻が病気で入院中も、「必ず一日に4回は電話をくれ」と頼んでいたそうだ。手術後の痛みを我慢して電話をかけ続けた奥さんも、すごい!
第2位は、知の巨人と政界のご意見番の対談。鳩山由紀夫首相が辞めたのは、アメリカから要求されたからで、しかも、小沢一郎幹事長も道連れにしろとの野中氏が講演会で話しているが、その程度の根拠があるのかと立花氏が聞くと、野中氏は、
「その話しは、アメリカ側の意向を鳩山さんに伝えた外務省の元高官から、私が直接聞いた話しです。(中略)アメリカ側は、その外務省元高官に鳩山さんへのメッセージを託した。『これからの日米関係のために、日本の総理を辞めなさい。ついでに小沢を降ろしなさい。それから普天間問題では沖縄に行って仲井眞弘多知事に会い、辺野古案を受け入れる宣言をしなさい。それだけやって総理を辞めなさい』と」
これが事実だとしたら、日米関係を大きく揺るがす大問題である。しかし、アメリカ側のどういう立場の人間の発言なのかも明らかにせず、さも、私は大物だから何でも知っているのだといわんばかりの発言は、無責任ではないのか。
官房機密費発言のときも、「政治評論家などに渡した」といってから、口をつぐんでしまった。それだけではなく、テレビに出た野中氏は、「現職の記者には渡したことはありません」「官房長官と番記者との関係はきちんとしていたと思います」などと、記者たちを擁護する発言をしていたと、上杉隆氏が、今週のポストの「官房機密費マスコミ汚染問題」キャンペーンで書いている。
この御仁、ときどき思わせぶりな発言をして、メディアが騒ぐのを面白がっているだけでは、憂国の士の看板が泣こうというものだ。特に、今回の発言は、言いっぱなしではなく、確たる根拠を示さなくては、鳩山、小沢はもちろんのこと、国民が納得しない。不思議なのは、これほど重大な発言を、知の巨人・立花氏がまったく追及していないことだ。今どき、アメリカの意向で総理の首が飛ぶというのは、絵空事とは言わないが、説得力に欠けると思うのだが、そうしたことも含めて、読んでほしい対談である。
合併号に相応しい記事がポストにある。綾瀬はるかが優しく微笑む表紙だが、「セックスボランティア」は重いテーマである。
これを書いた河合香織氏が、ノンフィクションの佳作『セックスボランティア』(新潮社)を上梓したのは2004年だった。70歳近い男性の自慰介助する施設スタッフの男性や、知的障害者夫婦にセックスの仕方を教える大学の教員など、衝撃的な内容だった。
今回は、個人的な慈善事業として行われていた障害者の性的介助を、排泄や食事の介助
と同様にとらえ、組織的にサポートする2つの団体の活動をレポートしている。
「ホワイトハンズ」という団体は、新潟で08年に設立された。代表の坂爪真吾さんは、東京大学文学部卒の29歳。彼は、学生時代に、新潟古町の風俗嬢と知り合ったことをきっかけに、「性風俗を健全化したい」と思ったという。まずは、社会性のある事業を始めて認知されたいと、見過ごされてきた要介護者の性について興味を持ち、性の情報サイト「ピーチ・ケア」を立ち上げる。
試行錯誤しながら、「ホワイトハンズ」を立ち上げるが、NPO認定はされず、射精介助を行うと法律的に風俗営業の許可を取らざるを得ないために、「結局、風俗だろう」という批判も浴びた。現在スタッフの数は全国に20人だが、スタッフ希望の申し出は増えているという。
スタッフの一人、最年長の62歳の女性は、大学病院で看護師として働いてきたから、導尿や浣腸と同じ延長線上で、抵抗感はないと話す。夫も二人いる娘も、彼女の仕事を理解してくれているという。
「NPOノアール」の代表、熊篠慶彦さんは重度の脳性麻痺であるが、現在、性的介助士という資格試験を作成したり、性的環境支援コーディネーターという資格も考えている。 両氏とも、将来的には他の介助と同じように、1割負担にしたいという高い目標を掲げているのだ。
性に関する情報は週刊誌に溢れているが、だからといって、性についてオープンに話すことや、自分が抱えている性の悩みを他人に話すことは、そう簡単なことではない。 興味本位ではなく、障害者の性の問題に真っ向から取り組んだ、こうしたノンフィクションを読んで、性について考えてみようではないか。
(文=元木昌彦)
●元木昌彦(もとき・まさひこ)
1945年11月生まれ。早稲田大学商学部卒業後、講談社入社。90年より「FRIDAY」編集長、92年から97年まで「週刊現代」編集長。99年インターネット・マガジン「Web現代」創刊編集長を経て、06年講談社退社。07年2月から08年6月まで市民参加型メディア「オーマイニュース日本版」(2006年8月28日創刊)で、編集長、代表取締役社長を務める。現「元木オフィス」を主宰して「編集者の学校」を各地で開催、編集プロデュースの他に、上智大学、法政大学、大正大学、明治学院大学などで教鞭を執る。
【著書】
編著「編集者の学校」(編著/講談社/01年)、「日本のルールはすべて編集の現場に詰まっていた」(夏目書房/03年)、「週刊誌編集長」(展望社/06年)、「孤独死ゼロの町づくり」(ダイヤモンド社/08年)、「裁判傍聴マガジン」(イーストプレス/08年)、「競馬必勝放浪記」(祥伝社/09年)、「新版・編集者の学校」(講談社/09年)「週刊誌は死なず」(朝日新聞社/09年)ほか
これも立派な福祉です。
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