音のない世界でのフットボール! もうひとつのなでしこジャパンが過ごした暑い夏
#DVD #サッカー
FIFAワールドカップが大盛り上がりのうちに閉幕。その余波を受けてJリーグの観客動員が好調な様子だが、勢いがあるのはプロばかりじゃない! 実は障害者スポーツの分野でも、サッカーがにわかに注目度を高めているのである。
日本電動車椅子サッカー協会、日本視覚障害者サッカー協会、日本脳性麻痺7人制サッカー協会、日本ろう者サッカー協会(男子、女子)、日本知的障がい者サッカー連盟……といった団体が活動しており、国内だけでなく、国際大会に向けた動きが目立つようになってきた。
ブラインドサッカー日本代表は、8月14日からフットボールの母国・イングランドで開催されるIBSA世界選手権2010に出場決定。そして知的障がい者サッカー日本代表は一路、ワールドカップが行われたばかりの南アフリカへと飛ぶ予定だ。資金不足に悩まされながらも8月23日から開催される第5回INAS-FIDサッカー世界選手権2010への出場を決めたのだ。
大会へ向けた壮行イベントが多数行われるなか、地味に公開されようとしているのが、ドキュメンタリー映画『アイ・コンタクト』。実はこの映画、4年前に世界選手権ドイツ大会に出場した知的障がい者サッカー日本代表を描いた『プライド in ブルー』の監督、中村和彦氏による最新作。
写真でも分かるように、年相応にオシャレでかわいい女子のサッカーに密着したようにしか見えないが、実は彼女たち、聴覚障害者なのである。
耳が聞こえない、あるいは聞こえにくい「ろう者」とは、そもそもどんな存在なのか? 冒頭からの数十分はひたすら、その実像に迫るインタビューに費やされる。ろう者サッカー女子日本代表メンバーとその家族に密着。ろう者と言っても、聴こえない度合いは様々。彼女たちがどのように障害を捉え、対処しているかも一人ひとり違う。補聴器をつけている人もいれば、小さいときに試してみて使わなくなった人もいる。中村監督は言う。
「とにかく、いろんな人がいるんだということを伝えたいのがいちばんですね」
「ただ聴こえない人とだけ、簡単に片付けられることが多いので。(ろうにしても)いろいろな人がいるのだと伝えるには(それを描くだけの長めの尺が)どうしても必要だと思いました。聴こえないレベルもいろいろだし、手話をおぼえた時期もいろいろ。(通っているのも)ろう学校だったり、健聴者の学校だったり。より正確に、等身大の姿を描きたかったんです。特に前半の30分」
「育ってきた時代にもよるし、補聴器を早くから使い始めると少し聴こえがよかったりする。それをひとことで描き表そうとすると、おかしなことになってしまう」
代表チームの合宿に行ってみたが、それだけでは彼女たちを理解するには不十分だった。時間をかけて信頼関係を築き、慎重に、丁寧に描こうとカメラを構えた。
その甲斐あってか、全編に女の子の溌剌とした笑顔が溢れている(率直に言ってかなりかわいい)。ろう者としての本音も聞ければ、結婚についての反応もうかがい知れる。
メンバー全員とそのご家族の”キャラ”を十分に把握した観客は、台湾で開催されるデフリンピック2009(4年に1度おこなわれる聴覚障害者のオリンピック)の舞台へと、チームとともに心を持って行かれる。
女子サッカー部門のグループステージ。日本代表は自分たちよりも遥かに体が大きく脚の速いイングランド、ロシアらと対峙。本気の世界レベルと接し、厳しい戦いの渦中に飛び込んだ彼女たちは、コミュニケーションを本質とするサッカーが持つそもそもの難しさを味わう。
そして同時に、耳が聴こえないがゆえの壁にぶつかり、突貫工事で対策を練ることになる。
その先に待ち受けるアスリートとしての覚醒が見ものだ。負けることに慣れていた女の子たちが、真の悔しさを知り、負けたくないと思うようになる。
クライマックスの戦いは、サッカーの名勝負で何度となく繰り返されてきた緊張感のリフレインである。
「最初から聴こえなければ、それを辛いと思いようがなかったりする。それは聴こえる人のおごりというか、そういう側面もある」
「サッカーは好きだけど、ろう者の世界に興味がない、という人に見てほしい映画でもある」
彼女たちと中村監督の共通点は「サッカーが好き」だという気持ち、ただ一点だという。そこを介して未知の世界を丹念に探った成果が、この映画には溢れている。9月18日公開。
(取材・文=後藤 勝)
9月18日からポレポレ東中野で公開決定
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