無気力露出系マニア必見! ペ・ドゥナをとことん味わう『空気人形』
#アイドル #映画 #梶野竜太郎
アイドル映画をこよなく愛する「アイドル映画専門」映画監督が、カントク視点でオススメのアイドル映画を、アノ手コノ手で解説します。
●今回のお題
無気力露出系マニア必見!
『空気人形』
監督:是枝裕和/女性主演:ペ・ドゥナ
「私は空気人形。性欲処理の代用品」
子どもの頃、マネキン人形って夜デパートで動いてると思ったことありませんか? 「実は人形も心を持ってるんだ!」とか「夜中3時に地下食品街に行ってアンパン食べてるんだ!」とか。見た目が人間的なので、心を持っているって考えても不思議じゃなかったんでしょうね。
古びたアパートで、持ち主である秀雄
と暮らす空気人形――空っぽな、誰か
の「代用品」。ある朝、本来持っては
いけない「心」を持ってしまう。秀雄
が仕事に出かけると、洋服を着て靴を履
いて、街へと歩き出す。初めて見る外
の世界で、いろいろな人間とすれ違
い、つながっていく空気人形。ある日、
レンタルビデオ店で働く純一と出会
い、その店でアルバイトをする
ことに……。(Amazonより引用)
DVD発売中/3,990円(税込)/
販売元:バンダイビジュアル
今回紹介する『空気人形』は、そんなマネキンや人形な方々が本当に心を持ってしまい、人間社会の中で生きていく物語。有名な作品なので、見たことある人も多いかも。
結構、心を持つ人形の物語ってあるじゃないですか。『チャイルド・プレイ』『ドールズ』『人形霊』……あわわ、ホラーばかりだぁ。でも、人形の特典と言えば、”好きに脱がすことができる”じゃないですか。ディスプレイ中のお店のショーウインドウを思い出して下さい。一瞬ドキッとしますよね! 1分の1の女性の裸体が笑顔でポージングしながら立ってるんですもん! 0.5秒くらいはマジびっくりしますよ!
ということはこの映画! 人形を演じるんだから、出演女優さんは恥じらいのまったくないオールヌードってことですよね!!?? うひぃ!!
そんな体当たりな主人公を演じるのは、本コラム第3回でも『リンダ リンダ リンダ』の時に取り上げたペ・ドゥナ。『グエムル』の時の戦うお姉ちゃんの勇姿がいまだに忘れられません。とにかくこの映画は「どれだけペ・ドゥナの女優根性に心から拍手できるか!」というところにポイントがあります。何度も言いますけど、服を着る前のマネキン同様、素っ裸な人形役なわけです。まったくためらわずして! まったく隠しもせず! SUPPON! PON! 『おっぱいバレー』ってタイトルなのに、まったくおっぱいの無い映画とは違う! 女優魂! ペ・ドゥナに拍手!!
……さて、物語はと言うと、川沿いの古びたアパートに住む冴えない独身の中年男。この男が毎日毎日、優しく語りかけている相手は、性欲処理の代用品・空気人形。ある朝、その空気人形が突然、人の心を持ってしまう。その中年男が仕事に出かけると、メイド服を着て外へ飛び出す空気人形。見るもの全てが美しく、驚きにあふれていた。やがてレンタルビデオ店にたどり着き、店員の青年とめぐり会う。ひと目で恋に落ちた空気人形。以来、その店でアルバイトをするようになり、青年や店長からさまざまなことを学び吸収していく。どんどんと人間の心、女の心が深くなっていく……。
見事なくらい、ペ・ドゥナは綺麗な裸を”空気人形の時”も”心を持った空気人形の時”も、披露してくれます。この映画”普通”に観ても、”男目線”で観ても、十分に楽しめますが、2度観する時には、アイドル映画カントク的には、下記のように気持ちをリセットしてから観て欲しいです。
「空気人形を、空気人形として観るのを止めて、『こういう女の子っているよね』という感覚で観る」ということです。
あくまでもこの物語をSFやファンタジーとしてではなく、すべてに無気力な女の子。裸で窓を開けても何も気にしない。男がジロジロ見ても何も気にしない。そんな女の子の物語。そうやって観ると、レンタルビデオ屋で起きる事件や、エンディングがより一層深く悲しいお話になります。だって、人間なのに、人間以下の扱いってことですからね。悲劇好きにはたまりません。
まぁ、色モノっぽい観方をお勧めしたことには裏がありまして、この映画が一番すぐれているのは、やはり、ペ・ドゥナという韓国の女性を起用したことにあります。たぶん、日本人だと、言葉の片言感や、日常生活のなじみ感や、他の役者との間に存在するちょっとした顔の造形の違和感に必ず無理が出ますし、ましてや、USAブロンド美人みたいな、無駄におっぱいとお尻を強調したセクシーな動きなんか見せられた日には、「本当に『トイ・ストーリー3』みたいに、ゴミ箱行きだぞ!」ってことになっちゃいます。
あえて日本ではなく、アジアの色が十分にある韓国人女優ペ・ドゥナのを起用したことで、素晴らしい女優魂を堪能できる映画……なので、色モノっぽくも、楽しんで欲しいんですよ!! 1本で2度美味しい!
ひとつは、ファンタジーとして! もうひとつは、無気力露出マニア映画として! どうです! 2面とも”ペ・ドゥナにしかできない演技力を堪能!”ってわけです。そういえば、こういう2面ある映画と思って観にいった映画があったな。
『ゾンビ・ストリッパーズ』
ホラーとポルノの2枚看板!! 「こりゃお得だ!!」って思って観に行ったら、目が飛び出て片腕でお腹からホルモンが出まくったストリッパーでは、”立たない”ことに観終わってから気づきました。
(文=梶野竜太郎)
満たされたい。
●かじの・りゅうたろう
映画監督・マルチプランナー。1964年東京生まれ。
短編『ロボ子のやり方』で、東京国際ファンタスティック映画祭の部門グランプリを受賞。08年に長編『ピョコタン・プロファイル』でメジャーデビュー。第2回したまちコメディ映画祭 in 台東にて、新作『魚介類 山岡マイコ』を上映。2010年に長編版として劇場上映が予定されている。現在、ニコニコ動画チャンネル『魚介類TV』(毎週日曜日20時~)に出演中。
詳しくは→http://mentaiman.com/
ブログは→http://ameblo.jp/mentaiman1964/
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