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【元木昌彦の「週刊誌スクープ大賞」第54回】

もはやジャーナリズムではない!?  自浄能力が失われかけた大新聞の大罪

motoki0726.jpg「週刊ポスト」8月6日号 中吊り広告より

●第54回(7月21日~7月26日発売号より)

第1位
「徹底検証 大新聞は国民の敵だ」(「週刊ポスト」8月6日号)

第2位
「大論争 社内公用語が英語って、何か違うんじゃない?」(「週刊現代」8月7日号)

第3位
「茨城空港・上海往復4000円ポッキリ 初登場!中国『スーパー激安航空』に乗ってみた」(「週刊文春」7月29日号)


 「フライデー」がこのところ立て続けに張り込みスクープを放っている。女優で歌手の北乃きい(19)と、俳優・佐野和真(21)との「路チューとお泊まりデート」、氷川きよしと年上の俳優・松村雄基との「熱い夜」、そして今週は、女優の石原さとみが7歳年上のカメラマンとの「忍ぶ恋」。

 だが、他のスクープに比べて石原の話題は、ネット上では盛り上がっていないようだ。その理由が、彼女が某巨大宗教団体の熱心な信者だからだというのだが、真偽のほどは分からない。

 さて、今週一番笑わせてくれたのは、「文春」の「中国の激安航空」に乗ってみたという記事だ。7月28日から、週3便、上海~茨城を運行することになった「春秋航空」は、最安チケットが何と往復4,000円程度だというのだが、中国国内でも曰く付きの航空会社のようだ。

 チケットがスーパーのレシートのようでも、出発ロビーが「旧ターミナル」でも、これだけ安いのだから仕方ないが、この春秋航空の場合、飛び立つまで気が抜けないのだ。何しろ、過去には、夜9時台の便が7時間も遅れたことがあり、1~2時間遅れはザラのようだ。

 さらにこの会社、運行スケジュールに対して充分な機体数がないために、少ない機体をフルに使い回すから、着陸後1時間以内に再離陸という、タッチ・アンド・ゴーのような強行スケジュールは当たり前。

 座席ポケットは破れ、テレビは消えたまま、トイレの便座は塗装が剥がれかかっている。仰天するのは、昨年6月、低価格及び乗客数増を図るために、「立ち乗り便」をぶちあげたそうだ。さすがに、中国当局や航空機メーカーの反対に遭い、計画は頓挫したというが、こんな航空機にでも乗って日本に来たい「命がけ」の中国人団体観光客が増えることは間違いなさそうだ。真夏の度胸試しと、一度乗ってみようという日本人はどれだけいるだろうか。

 第2位は、最近、楽天、ユニクロなどが、社内公用語を英語にすると発表したことに、「何か違うんじゃない?」と疑問を呈した「現代」の記事。

 三木谷楽天社長は「(英語の公用語化は)日本企業であることをやめて、世界企業になるための第1歩」と発表し、楽天社内では、取締役会だけではなく、幹部会なども、すべて英語で行われているという。

 それに対して、能力はありながら、英語が不得意だということで、実力より低い評価を受ける社員が出てくれば、社員のモチベーションが下がり、経営に悪影響を及ぼす可能性があるのではないかと、経済ジャーナリストの松崎隆司氏などが疑問を呈している。

 本田技研の伊東孝紳社長は、「日本国内で英語を使おうなんて、バカな話だ」と一刀両断。お茶の水女子大学名誉教授の藤原正彦氏は、英語をマスターすることは大変なことだし、そのために、読書や思索を犠牲にして勉強しなければ英語は上達しない。その結果、仮に社員の英語力がアップしても、他の重要な能力は身につかず、会社全体の活力も失われてしまうと警告する。

 アシスト社のビル・トッテン氏は、楽天やユニクロが目指す国際化志向そのものがおかしいと、こう言う。

「(中略)ビジネスがグローバル化する時代は終わりつつあると思います。(中略)これからの世界のビジネスは、グローバルではなく、ローカルに向かっていく。だから日本人も、英語より日本語を磨いた方がいい。そもそも今の日本人は、日本語が弱すぎます」

 私も、日本の文化や伝統、歴史を学ばないで英語だけがうまくなってどうするのかと考える。日常会話程度はしゃべれたほうがいいとは思うが、大事なビジネスは、通訳を付ければいい。そうしてこれまでも日本人はビジネスをやってきたではないか。

 私が、楽天、ユニクロのトップ二人の発言から連想したのは、いよいよ、日本語を滅ぼし、日本名を強制的に英語名に変えさせ、アメリカがすすめてきた日本属国化の最終段階に入ったのではないかというものだ。取り越し苦労であればいいのだが、今、日本人が見直さなくてはいけないのは、日本語であり、日本文化であり、日本の企業に、かつてはあった労使の一体感であるはずだ。

 「ポスト」の「総力特集 大新聞は国民の敵だ!」は、ボリュームもあり、さまざまな角度から大新聞やテレビの有り様を批判している、読み応えのある特集である。

 上杉隆氏が連続追及している、官房機密費マスコミ汚染と併せて読むと、大新聞の自浄能力が失われてきていることがよく分かる。

 まずは、各紙が社説で主張している「消費税増税キャンペーン」が、財務省の振り付けに踊らされていると斬り込む。「5大紙はじめメディアの経営トップとは事務次官や主計局長が会合をもって、必要性を説いてきた」(財務省主計局官僚)。その甲斐あって、読売新聞が今年5月に「消費税10%」の緊急提言を打ち出すと、自民党が続き、菅直人総理も公約に掲げた。参院選で民主党が惨敗したにもかかわらず、大新聞は、消費税増税は国民の大半は納得していると言い続けているが、これは、社内にある反対意見が紙面に載らないからなのだ。

「増税に慎重な学者を登場させようとしても、社の上層部の判断で、財務省に近い学者の評論を載せるように指示が出る」(大手経済部の幹部)

 また、先頃、IMF(国際通貨基金)が出した「日本は消費税15%引き上げろ」という提言も、財務省のヤラセ疑惑があるというのだ。IMFへの出資比率では米国に次いで2番目のスポンサーである日本は、49人の日本人職員を出しているが、そのうちの10数名が財務省からの出向。何のことはない「消費税15%」提言には、「財務省の別働隊」が関与していたようなのだ。

 20年前に日米構造協議に関わったことがあるコロンビア大学経済学部のディビッド・ウェインスタイン教授は、こういう。

「(中略)日本の政府当局者が自分たちの望むような改革をするためにアメリカの”外圧”を使おうとして、アメリカ側に内部情報をリークすることはしばしばありました。アメリカが提示する要求の多くは”メード・イン・カスミガセキ”だった。今回も財務省がIMFに対して同様のことをしていても、驚くべきことではない」

 他にも、2兆4,000億円の電波帯を「不当占拠」する新聞・テレビの「メディア財閥」批判。新聞ことばが日本語を破壊しているという呉智英氏。元共同通信記者・青木理氏の体験的新聞記者批判など、新聞がジャーナリズムとは遠い存在になってきていることが分かり書かれている。ポストは、出版社系週刊誌の重要な役割である「大新聞批判」を中心据えて、部数回復を狙う戦略に出てきたようだ。期待したい。
(文=元木昌彦)

motokikinnei.jpg撮影/佃太平

●元木昌彦(もとき・まさひこ)
1945年11月生まれ。早稲田大学商学部卒業後、講談社入社。90年より「FRIDAY」編集長、92年から97年まで「週刊現代」編集長。99年インターネット・マガジン「Web現代」創刊編集長を経て、06年講談社退社。07年2月から08年6月まで市民参加型メディア「オーマイニュース日本版」(2006年8月28日創刊)で、編集長、代表取締役社長を務める。現「元木オフィス」を主宰して「編集者の学校」を各地で開催、編集プロデュースの他に、上智大学、法政大学、大正大学、明治学院大学などで教鞭を執る。

【著書】
編著「編集者の学校」(編著/講談社/01年)、「日本のルールはすべて編集の現場に詰まっていた」(夏目書房/03年)、「週刊誌編集長」(展望社/06年)、「孤独死ゼロの町づくり」(ダイヤモンド社/08年)、「裁判傍聴マガジン」(イーストプレス/08年)、「競馬必勝放浪記」(祥伝社/09年)、「新版・編集者の学校」(講談社/09年)「週刊誌は死なず」(朝日新聞社/09年)ほか

2011年新聞・テレビ消滅

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最終更新:2010/07/26 21:00
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