あの阿久根市より凄い! おっぱいで勝負をかける山口県光市
#へんな社会学
世の中のへんなものをこよなく愛するのり・たまみの、意外と知らないちょっとへんな社会学。
<巨乳アイドル>とは、乳房の大きさを自身の魅力として営業上の売りとしている女性アイドルのこと。
ウィキペデアで「巨乳アイドル」という項目を引いたら、こんな解説が出ていました。さすがネット社会! 真面目な広辞苑や各種百科事典には、こんな解説はおろか、そもそも「巨乳タレント」という項目自体が載っていません。「巨乳タレント」の存在は誰でも知っているし、実際にそう呼ばれているのに、まるで世の中には存在しないような扱いです。2008年に広辞苑が改定されたときに、「イケメン」「うざい」などが新登録されて話題になりましたが、さすがに「巨乳タレント」にまでは踏み込めなかったようです。ウィキペデアではさらに「巨乳タレント」として、ほしのあき、井上和香、佐藤江梨子など実名を挙げ、かつては倍賞美津子、小柳ルミ子がデビュー当時は巨乳タレントだったことまで踏み込んでいます。う~ん、グットジョブですね、ウィキペデア。
胸の大きさで勝負する女性芸能人がいるように、日本は「おっぱい」で勝負をかけている自治体があります。それは、山口県光市。光市がすごいのは、決して一部の人が勝手に「おっぱい」で話題作りをしようとしているわけでなく、市自らが「おっぱい都市構想」を発表し、「おっぱい」精神にのっとって今後の都市全体を作っていこうという壮大な計画を練っている点です。市の憲法にあたる「おっぱい憲章」まで市議会で制定する始末で、市議会の会議録などを見ても、市会議員たちが「おっぱい」「おっぱい」と連呼しています。
冗談だか本気だか分からないような感じですが、本人たちはいたって真面目。「おっぱいは母性の象徴。みんなで母のおっぱいを飲んで、愛情豊かに育ちましょう。都市全体をおっぱいで作っていこう」と盛り上がっています
きっかけは、ある産婦人科医が光市議会に母乳保育の重要性を訴えたことが始まりです。赤ちゃんを育てるのは、単に母乳だ、人口ミルクだという話だけではありません。母乳だろうとなかろうと、しっかり赤ちゃんを胸に抱いて、アイコンタクトをして、愛情たっぷり育ててほしい。そんな願いから「おっぱい都市宣言」の作成を訴えました。しかし、市議のほとんどは男性。「おっぱいなんていやらしい言葉だ」「母乳都市宣言ならいいけど、おっぱいはちょっと……」など、最初は煙たがれたそうです。しかし、産婦人科医は粘り強く何度も市議の元に足を運び、市議を説得。その結果、95年に「おっぱい都市宣言」は市議会で可決されました。現在、この「おっぱい」に関しては『民主党がおっぱいに賛成なら、私たち自民党はおっぱいに断固反対 」みたいな政党間の争いは無く、党派を超えおっぱいおっぱいとやっています。大丈夫なのか光市? 人口5万4千人の市で、なんと1,000セットも「おっぱい体操」のCD・DVDセットを作成し貸出しています。この体操をやるとおっぱいが発達して、母乳がよく出るのがうたい文句。「男性がやってもストレッチ効果があります」というのが市の弁。さらに、光市の健康増進課の電話番号は(いいおっぱい)にかけて末尾が「1108」にしています。風俗店の電話番号ならともかく、自治体の公式HPで「電話=いいおっぱい(1108)」と書いてあるのを初めて見ました。
みんなで「おっぱい」という御輿を担いでワッショイワッショイとやっている光市ですが、一度だけ「廃止」の危機が訪れたことがあります。
04年、光市が大和町と合併したために、自動的に失効してしまいました。でも、光市にとって「おっぱい」こそが存在意義。どこぞの国会が空転して、そのお陰でいろんな法案が話し合わせもせずに廃案になるのと違い、光市は一度失効した「おっぱい都市宣言」を改めて作り直し、05年に「新おっぱい都市宣言」を作ってしまいました。この「新おっぱい都市宣言」は「旧おっぱい都市宣言」と比べてちょっと長くなってますが、「おっぱいが、人生の、そして地域作りのすべて」という点では一緒です。肝心の市民たちは「おっぱい、おっぱい」と言われることに抵抗があったり、意外に浸透していないような報道もありますが、市議会は本気です。富良野と言えば「北の国から」、宇都宮と言えば「ギョウザ」、夢と魔法の国と言えば千葉県のあそこ、みたいに。「おっぱい」と言えば光市! になりつつあります。
光市では毎年8月の「世界母乳の日」週間に、市をあげて「おっぱい祭り」を行っています。筆者のような物好きな観光客がある程度訪れるようですから、ぜひ怖い物みたさにチャレンジしてみたい方は光市のHPなどを参考にしてみてください。毎年、田県神社で「ちんこ祭り」をやっている愛知県・小牧市と姉妹都市にでもならないかと、筆者は目を光らせているのですが、そんな動きは現在のところ、全く無いようです。
(文=のり・たまみ)
「おっぱい都市宣言」に関する決議<おっぱい憲章>、おっぱい育児10か条
<http://www.city.hikari.lg.jp/kenkou/opp_01.html>
●のり・たまみ
世界中の「へんなもの」をこよなく愛する夫婦合体ライター。日本のみならず、世界中の政治の仕組みや法律などをこよなく偏愛している。主な著書に『へんなほうりつ』(扶桑社)、『日本一へんな地図帳』(白夜書房)、『へんな国会』(ポプラ社)、『へんな婚活』(北辰堂出版)などがある。
“観るだけで幸せになるDVD”だそうです。
【関連記事】
皇居、ディズニーランド、甲子園球場……好きな場所に勝手に住み込む方法とは?
男の乳首が女の性欲を刺激する!? 『国会議員の迷言議事録99 へんな国会』
在日国籍の摩訶不思議──「日本には『北朝鮮籍』は存在しない!」
サイゾー人気記事ランキングすべて見る
イチオシ記事