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最新作はなんとテレビシリーズ!

樋口真嗣最新作『MM9』メディアの現在を示し、深夜枠を揺るがすドラマの意義とは!?

higuchi0001.jpg6月30日におこなわれた試写会では、iPadの実機を使ったデモンストレーションと
ティーチインも実施。樋口真嗣総監督、ユビキタスの増田哲朗氏が説明にあたった。

■話題沸騰、七夕の夜にオンエアスタート

 新番組『MM9』が、各方面で話題沸騰のようだ。それもそのはず、7月7日から毎日放送系の水曜深夜枠(25時30分~)でオンエアされるこのテレビドラマシリーズは、あの平成『ガメラ』シリーズ、『ローレライ』の樋口真嗣が総監督として手がける久々の実写映像作品(原作は山本弘氏の小説)なのである。

 樋口総監督にとってはテレビシリーズ初挑戦となるだけに、スタッフィングも慎重かつ強力。自身は総監督としてシリーズ13本を統括し、第6、12、13話の監督も担当。そしてテレビアニメの各話演出方式のように名だたる監督を招聘。『ホームレス中学生』の古厩智之 (1、2、11話)、『ひぐらしのなく頃に』の及川中(3、4、10話)、『古代少女ドグちゃん』の登坂琢麿(7、8話)、『長髪大怪獣ゲハラ』の田口清隆と、気鋭の面々が集まった。

 脚本は平成『ガメラ』シリーズで樋口総監督とコンビを組み、『GHOST IN THE SHELL 攻殻機動隊』『機動警察パトレイバー the Movie』でも知られる伊藤和典が担当している。

 ストーリーの舞台となるのは、特異生物”M”が存在する架空の日本。気象庁はこのMが巻き起こす”特殊災害”から国民を守るべく、気特対(気象庁特異生物対策部)を設置。日々予報を出し、防災に励んでいる。

 特殊なヒーローではない、いち公務員たちが巨大なるMに立ち向かう姿は時に感動と興奮を、時に笑いを呼ぶ。はたして彼らは怪事件を解決することができるのか──。

 日本でも発売となったばかりのiPadでの配信も予定されている、エンタメ業界に新風を巻き起こしそうなこのドラマの在り方について、iPadにハマりまくりの樋口総監督が熱気を込めて語ってくれた。

■深夜の三時に伊藤和典を口説き落とした

higuchi0003.jpgロケ現場写真

──そもそも『MM9』を作ることになったきっかけは。

樋口真嗣監督(以下、樋口) まずざっくりと、テレビドラマをやりたいという気持ちがありました。映画はどれだけ時間をかけて作っても公開期間は2カ月で終わり。公開初日と最終日でやる内容は同じなんです。そこで表現できることの限界を感じていた。一方で、海外では面白いテレビドラマがいっぱいある。そういうものを観るにつけ、日本でもこういうものができないのかと思っていたところ、意外にも『エヴァ』でいっしょにやっていたキングレコードの大月俊倫さんから『MM9』をやらない? というタマが返ってきたんです。

 原作を映像化すると大変な部分も分かった上で、ではどうするかと考えたときに、伊藤和典さんに脚本をお願いできなければやらないほうがいい、ということになった。(大月氏と飲んでいたのは)ゴールデン街で夜中の三時くらいでしたが、その場で電話したおぼえがあります。

 『ガメラ』にしろ『パトレイバー』にしろ、大変なことに立ち向かう公務員のお話であり、異常な世界の生き物が出てくるお話。伊藤さんとは切っても切り離せなかった。どう書きます? という口説き方をして、山が動いたんです。

──伊藤さんには「こうしてください」というオーダーをしたんですか、お任せだったんですか。

樋口 この間も「言った、言わない」の話になったんですけど(笑)。お互い年齢的に記憶が不鮮明で、見苦しいったらありゃしないんですが……。原作といちばん違うポイントは、尾野真千子さんの演じる朏万里(みかづき・まり)という役。この役を出さないとダメだということを伊藤さんが言っていたと僕は思っていたんだけど、伊藤さんが言うには僕が言っていたらしい(笑)。

 その段階で深夜ドラマであることは決定していました。深夜ドラマというのは、残業から帰ってきてお風呂に入り、テレビを点けたらやっていた、というパターンがいちばん多いわけじゃないですか。ならば、主人公は、テレビの中の人も私といっしょだなと思わせる、窓のような存在にしなければいけない。そうすると、高校を出たての女の子だと、視聴者とは年が離れているきらいがあるがある。そこで万里……ではなくて、万里という登場人物よりも先に、尾野真千子が浮かんだんです(笑)。その途端にドラマとしての人間関係が転がり出した。

■視聴習慣そのものが変わっている!

──映画ではなく連続ドラマという視聴形態、それも深夜ドラマというところにフォーカスしてキャラクターとストーリーを設定。さらには、iPadでの配信(MBS本放送に連動してオンエアと同時刻に同時配信、1週間視聴無料)も決まっています。視聴環境の変化に、クリエイターとして対応しようという気持ちがあったのではないですか。

樋口 いまのカッコよかったから、オレが言ったことにしましょう(笑)! それは冗談としても、まさしくその通りなんです。やっぱり観客と作り手、送り手の関係はどんどん変わってきているだろうし、そうしたときにこっちがふんぞり返って「観たきゃ観ろよ」という姿勢じゃダメだと思うんですね。結局、自分も受け手である時間のほうが長いわけです。僕はテレビを録画してあとで観るんですが、その方式も昔はビデオデッキだったものがレコーダーになり、テレビに連動してHDDが動くようになっている。視聴習慣そのものが変わっているわけだし、それがどうなっていくか。オンエアのときに観られなかったらDVDで買うのだろうか。では買うものとはなんなのか、ということになる。

 お金を出してまで欲しいものでなければ買わない。どうしたら欲しがってくれるだろうかというパッケージ観を考えたときに、「早く観たい」という気持ちと「取っておきたい」という気持ちのふたつに、大きく分かれる。しかし、その両方の欲を満たすものはないじゃないですか。ところが、現れたんです。やっと(と言って自身のiPadを指す)。(翌週次回放送までの)一週間限りだとしても、手に入れられる。もうムービー落としました?(と言って筆者のiPadを指す)

──いや、動画のコンテンツはまだです。

樋口 いいんですよ、これが(ニヤリ)! これを観た瞬間に変わったと思ったんです(動画を観せる)。

──(解像度や処理速度が満足のいくもので)あ、もういいじゃないですか。これで。

樋口 でしょ? で、もうひとつ、テレビが大画面化しているということが挙げられます。大人数で観るときにはよいのですが、パーソナルで観たいときには、やや不向きとも言える。その点iPadであれば、手許に引き寄せて観ることができるし、その際の見た目の大きさは、離れて大画面のテレビを観たときと変わらないわけです。だとしたら、パーソナルに視聴するときには、iPadのほうが適している。音楽を聴く手段として、スピーカーに加えてヘッドフォンが出現したようなものだと思うんですよね。深夜のテレビ番組であれば、音量を絞るかヘッドフォンを挿し、就寝前にひとりで寝転がって観るケースが多いでしょうから、そうした視聴習慣にも対応できるようにしておきたい。それに、好きなものとして手許に置いておくならば、iPadは実に最適のデバイスなんです。

higuchi0002.jpgiPad、iPhoneアプリ版は無料配信。毎日
放送の放映開始時刻、毎週水曜深夜25
時30分から一週間の限定視聴で、時限
管理はアプリ起動時にアクセスしておこ
なう。ダウンロードそのものは放送前日か
ら可能。1話あたりの容量は200MBを切
る程度。あらかじめ落としておく方式であ
り、かかる負荷は時限管理用のチェックの
みなので、数万人がアクセスしてもサーバ
が落ちることはないという。

──かなりハマってますね。

樋口 買ってしまったので(笑)。そういう動画視聴の形態にはYouTubeやニコニコ動画がありますが、あれはPCだった。PCを寝転がって操作するのはちょっと厳しいですけど、iPadは寝落ちするまでいじるじゃないですか。布団の中でね(笑)。つまり、このスイッチが画期的なわけです(と言ってスクリーン回転ロックを指す)。iPadは持っている向きに応じてスクリーンが向きを変え、常に正対するんですが、このスイッチを入れれば横になってもスクリーンの方向が動かない。まさに寝っ転がる用でしょ? パーソナライズされた端末というのか、ウォークマンにつづく発明だと言っても過言ではないかもしれない。

──そうですね、用法が変わった。

樋口 うん、最近よく言われていると思いますが、新しいテクノロジーはひとつもないんです。大型液晶、タッチパネル、無線LANと、アジアの工場にあるパーツを組み合わせたらこれができる、という性質のものです。ただ、使い方が変わった。どう運用するかという発明でいくと、やはりウォークマンに続くもの。ウォークマンだって、テレコにヘッドフォンをつけただけじゃないですか。しかも録音機能を省いてしまった。聴くのに特化させるためだ、という宣言ですよね。iPadにキーボードがないのも同様です。いらないものを省いて、徹底的に必要のあるものだけを残すウォークマンと同じ作り方をしたiPadを、日本人が作っていないこの悔しさ。

──日本ではiPadが出たばかりでコンテンツも少なく、需要がありそうですね。

樋口 喜んで実験台になりましょう、と(笑)。

 iPadで配信を行いつつ、怒涛の勢いで突き進みそうな『MM9』。全国のiPadユーザーも必携の作品となりそうだ。
(取材・文・ロケ現場&試写会写真=後藤勝)

●『MM9』
<本放送>
毎日放送:7/7(水)25:30~(各話30分)
<関東地区放送>
BS-TBS:7/10(土)27:00~
東京MX:7/10(土)26:30~
※iPadアプリ版配信の最新状況については下記公式サイトでご確認ください。
http://www.mbs.jp/mm9/

ローレライ

長編実写映画デビュー作。

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最終更新:2010/07/08 02:03
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