どこまでが個性でどこからが病気? 人には聞けないオタクな悩みを精神科医に直撃!
#マンガ #オタク #インタビュー
インターネットやメール、携帯電話……世の中はどんどん便利になっているハズなのだが、それに反して心を病んでいる人がどんどん増えているような気がする。
ネットの世界を見渡せば「うわ……この人、頭大丈夫かな?」というようなキ○ガイ丸出しな書き込みをいくらでも見つけられるし、アニメの女子高生キャラに本気で恋をしちゃって「俺、おかしいんじゃないか」と悩んだり、会うたびにリストカット痕が増えていく友人に対して「何か言ってあげた方がいいんだろうか……」と困惑している人も少なくないだろう。
そもそも、どこまでが”個性”でどこからが”病気”なのか。知り合いには相談しづらいし、病院に行くのもハードルが高い。
そんなメンタルの問題について、異色の心療内科(ギャグ)マンガとして話題となっている『マンガで分かる心療内科』の原作者にして精神科医のゆうきゆう先生に、いろいろと気になるメンタルの病気について訊いてみた。
――アニメやゲームのキャラには、見た目がかなり幼く描かれた女の子などがよく登場することもあり、オタク男子の多くがロリコン気質を持っているような気がします。ズバリ、ロリコンって病気なんでしょうか。
ゆうきゆう先生(以下、ゆうき) ロリコンは病気ではありません。精神医学的に病気とされる小児性愛(ペドフィリア)は「0~13才の小児と”性的な交渉”を持つこと」と定義されています。ですので、中学生や高校生など、いわゆるロリータに分類される少女に萌えるのは社会的にはアウトであっても、13才を超えてさえいれば精神医学的には病気ではないのです。嗜好は本当に人それぞれなので、自信を持って生きてください。
成人が13~17才の異性に対して”性的興味を持つこと”は、米国ではエフェボフィリアと呼ばれ、精神異常ではないとするのが通説です。セーラー服を着ているキャラクターは確実に13才以上なので、セーラー服に萌えるのは精神医学的には異常ではありません。
――なるほど! じゃあ、セーラー服で欲情したり、スク水をクンクンしてても大丈夫ってことですね!
ゆうき ただし、社会的な立場や道徳を守らない場合は、条例になどにより罰せられることはありますよ。
――最近話題の”非実在青少年”が登場するようなロリコン漫画などが規制されることは社会的にプラスとなると思いますか。
ゆうき たしかにロリコンは、漫画やアニメによる社会的な影響は大きいでしょう。米国の調査によると5~8才の子どもに暴力的なテレビシーンを見せた直後は暴力的な遊びをしやすいことが分かっています。幼いうちは、テレビやゲームなどで触れた内容が人格に影響することもあるのですね。しかし、きちんと人格が形成されたあとの大人なら、テレビや漫画が適度な欲求不満解消になることもあります。また、心理学には「心理的リアクタンス」という言葉があります。これは禁止されるとよけいに見たくなる心理のこと。厳しい規制が必ずしもプラスに働くとは限らないのではないでしょうか。
――オタクの中には「オレは三次元の女なんかに興味ない。オレの嫁は長門!」などと言う人がいますが、三次元に興味が持てなくなるなんて本当にあるのでしょうか。
ゆうき 一口にロリコンと言っても、子どもに強い性的欲求を覚えるタイプと、大人が好きなのに相手にされず、代償的に子どもに関心が向けられるタイプがあります。同じように、アニメの中の女性が大好きな人も、自分自身の意志で長門が好きなケースと、三次元に相手にされないため代償的に長門を愛しているケースがあります。前者は、仮に現実で美女にアプローチされてもきちんと断りますし、そもそも「興味ない」なんてわざわざ宣言しないでしょう。ですので、自分から「三次元なんかに興味ない」と言う人は、ほぼ確実に二次元を三次元の代償とみなしていると思われます。
――一方、三次元の女性とは言え、常軌を逸したレベルでアイドルにハマリまくってしまう(CDに100万円つぎ込むetc.)ような人もいますが……。
ゆうき アイドルは三次元と言うよりは2.5次元ですね。「三次元の女性」には優しい部分もあればワガママであったり厳しい部分もあり、付き合う上でさまざまな問題を乗り越えなければなりません。ただお金と時間を投入するだけでは解決出来ない不条理な問題も多々ありますよね。大金を投入すれば確実に感謝してもらえて、(順位など)女性に影響を与えることが出来る、という関係にハマるのは、ある意味女性との関係における面倒な部分からの逃避とも言えるのではないでしょうか。
――「ロリコンアニメだーい好き! ……でも、このままじゃいつか罪を犯しちゃうんじゃないか」と不安に思っている人が、心がけるべきことはありますか。
ゆうき 「Yesロリータ! Noタッチ!」という言葉があるように、ロリータを愛でるのは問題ありませんが、実際に少女に声をかけたり接触を持とうとするのは避けましょう。少女には少女の人格がありますし、ただでさえ多感な思春期なのです。恋心を伝えたい気持ちもあるとは思いますが、相手のこれからの人生を考えれば、不用意な接触は控えるべきでしょう。
アメリカで行われた統計で、「自信に溢れている人は大人びた人を好み、不安を感じている人は幼い人を好む傾向がある」と判明しています。このことから、誰でも「強い不安を感じると、ロリコンになる可能性がある」と言えます。それでも「ロリコンには興味ない!」という人もいるかもしれませんが、よく考えてみてください。あなたにも、ふと「子どものころに戻りたいな……」と思う瞬間があるでしょう。心理学ではこれを「退行」といいます。現在の自分では解決できない問題が起きたときに働く防衛機制の一つで、子どもの頃の心理状態に戻ることで自分を守ろうとするのです。簡単に言えば「赤ちゃんがえり」です。こうした「赤ちゃんがえり」をはじめ、「駄々をこねる」「甘える」などの幼児的な行為や、幼い子どもを見て懐かしさを覚えることも一種のロリコンの表れなんですよ。
「子どもの頃に戻りたい」と思ったり、ロリコン的な兆候が表れたときは、何か不安を抱えている証拠です。そんなときは、握った左手を「退行」する自分の象徴として、開いた右手で優しくなでてみてください。右手は母親の象徴であり、「退行」する自分を認めて包み込んでくれるような存在です。こうするだけでも、母親の優しさを思い出し、深い安心感を覚えるものですから試してみてください。
――一般的には、オタクやサブカル人などインドア系の人ほど”うつ病”になりやすく、スポーツをやっているアウトドア系の人はなりにくいといったイメージがありますけど、それって本当なんでしょうか。
ゆうき 運動をすると、男性ホルモンであるテストステロンが多く分泌されるという説があります。テストステロンが多い男性はより活動的になると考えられています。また、ノルウェーの精神科医マーチンセン氏の実験によると、ウォーキングやジョギングなどの有酸素運動を1日1時間、週に3日行った場合、うつ病の症状が大幅に改善されることが分かっています。食事、運動、睡眠は身体だけでなくメンタルにとっても、とても大事な役割を果たしていると言えそうです。
――あ、関係あったんですね……ボクも気をつけよう。個人的に、コスプレイヤーやメイド、地下アイドルなど、人前に出るオタクの中にリストカッターが多いような気がするのですが(実際、知り合いに多い)、自傷系の人は他人に見られたがる、というような傾向があるものなのでしょうか。
ゆうき リストカットなどの自傷行為は、境界性人格障害の方に多く見られます。必ずしも死ぬために手首を切るのではなく、辛い気持ちのあらわれとして自分を傷付けるのです。複数回繰り返してしまうのもリストカッターの特徴ですね。
周りから見えるような位置に傷を付けたり、リストカット痕を見せようとする人は、他人との関わりに関心が強い外向的なタイプなので、コスプレイヤーなど人前に出るタイプのオタクに多いのでしょう。内向的なタイプはリストカットをしても他人から見えないように隠しています。
――ちなみに昔の彼女が思いっきりリストカッターで、家に帰ったら手首と腿をビッキビキに切っていたことがありました。そんな時、どうすればよかったのでしょうか。ボクはなんだか、いかんともしがたい気持ちになってしまい、無視してプレステをはじめてしまったのですが……。
ゆうき 一番いけないのは「なんでそんなことするんだ!」と強く非難すること。「どうしたの?」と心配して、辛い気持ちに共感出来ればベストかもしれませんが、あまり真正面から受け止めすぎるとあなたまで病んでしまう危険もあります。彼女が落ち着くまで無反応で待つ、というのは間違ってはいないのではないでしょうか。
――それでは最後に、これからも清く正しくオタク・サブカル人を続けていくためにアドバイスをください!
ゆうき ロリコンでもオタクでも、自分の幸福を追求する権利があります。しかしそれも、他人を尊重して、迷惑をかけないように生活したらの話。一部の心無いロリコンやオタクのせいで山狩りに遭っては、大多数のオタクが迷惑を被ることになります。自分達自身のために、マナーを守ったオタクライフをおくるようにしましょう。
***
メンタルの問題って、「歯が痛い!」とか「腹痛い!」みたいに分かりやすいモノじゃないので、いつまでもウジウジと悩みをためこんで症状を悪化させてしまっている人も多いと思う。そんな時に専門家からズバリとアドバイスをもらえると、だいぶ楽になるんじゃないだろうか。
ボク的にはリストカッター彼女への対応について「間違ってはいない」と言ってもらえたのが、ものすごーく救われました。ま、その彼女はそれからしばらくして、完全にボクの手に負えないほどメンタルが悪化し、浮気はするはネット上にどーかしてる書き込みをしまくるはで、最後はザ・地獄絵図状態で別れたんだけど……(トホホー)。
みなさんも、そこまで心がヒドイ状態になる前に『マンガで分かる心療内科』を読んでみてはどうだろうか。少しは問題解決の手がかりがつかめるかもしれないぞ! ……それでも解決しなかったらメンタルクリニックへ!
(取材・文=北村ヂン)
●ゆうき・ゆう
精神科医。心安らげるクリニックとして評判が高い「ゆうメンタルクリニック」院長。医師業の傍ら心理学関係のサイトを多数運営、関連著書も多い。主な著書に『マンガで分かる心療内科』(少年画報社)『ココロの救急箱』(マガジンハウス)などがある。
ゆうメンタルクリニック< http://yucl.net/>
上野院 TEL:03-6663-8813
池袋院 TEL:03-5944-8883
マンガで分かる心療内科 1
著:ゆうき ゆう/イラスト:ソウ
うつ、ED、認知症、幻聴、小児性愛……。現役の精神科医による、心療内科の病気の全てを笑いながら学べる異色の心療内科漫画! 定価680円。絶賛発売中。
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