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よく分かる「警察のお仕事」入門書 『日本の警察・犯罪捜査のオモテとウラ』

kitashibabon.jpg『日本の警察・犯罪捜査のオモテとウラ』
(監修:北芝健/ナガオカ文庫)

 昔の刑事ドラマで、取り調べ中の刑事さんが電気スタンドを被疑者にかざして「さっさと吐け、こら!」みたいに凄んだり、あるいは被疑者に出前のカツ丼が振る舞われたりするシーンをよく目にしたものだけれど、現実にはそんなことはあり得ないらしい。

 取調室にあるのは、スチール製の事務机と事務椅子、そして調書をとるためのパソコンくらいで、電気スタンドのような凶器になりそうなものは原則として置かない。また、カツ丼の器は陶器製であり、叩き割れば刃物になる。割り箸だって凶器になり得る。だから、取調室で食事を取ることは一切禁止されている。本書『日本の警察・犯罪捜査のオモテとウラ』には、こういった警察トリビアが数多く収められている。「ウラ」という言葉から、たとえば暴力団との癒着や天下りの実態といった、ドロドロした内部告発めいた内容を期待してしまいがちだが、どちらかというと「よく分かる警察のお仕事」的なお行儀のよい内容だ。実際、監修者の北芝健氏には『警察のしくみ(図解雑学)』(ナツメ社)という著・監修書があり、本書のスタンスはその延長にあるようだ。

 たとえば、「警察庁」と「警視庁」は混同されがちだけれども、前者は「文化庁や国税庁などと同じ日本国の行政機関」で、その目的は「都道府県の警察本部を管理すること」であり、後者は「東京都の警察本部」すなわち「警察庁から見れば管理する対象である神奈川県警や大阪府警と同じ地方警察のひとつ」だとか。

 よく聞かれる警察用語、「キャリア」と「ノンキャリア」については、前者は国家公務員試験・種に合格し警察庁に採用された警察官で、後者は地方公務員試験を受験して都道府県に採用された警察官を指すそうだ。キャリアのハードルはべらぼうに高く、合格者は圧倒的に東大卒が多いけれど、採用されれば警部補からスタートし、警視総監や警察庁長官も狙えるエリートコースが用意されている。一方、警察官のほとんどを占めるノンキャリアは巡査からスタートし、めいっぱい昇進しても警視正まで。「学力でのし上がるのがキャリアだとすれば、ノンキャリアは現場の実績で自らの地位をつかみとるタイプ」というわけだ。

 あるいは、プライベートに関しては、警察官は恋愛における出会いの場が少なく(なにも警察官に限ったことではないが)、言うまでもなく暴力団やカルト教団の関係者との色恋沙汰はNGだし、情報漏洩のおそれがあるマスコミ関係者との交際もあまりいい顔はされないとか。さらに、職場恋愛には内偵が入ることもあるため不倫は絶対にバレるし、「警視庁の警察官同士ならば、東京から出て、たとえば小田原で会うなど、80キロ以上も離れた場所でデートをすることも珍しくない」そうだ。

 といった具合に、文庫サイズで、一般的な捜査手続きの流れや警察組織の構造、部署ごとの役割、さらには警察官・刑事の採用試験および選考基準などがコンパクトに整理されている。もっとも、個人的にいちばん面白かったのは、〈沈める=盗品を現金に替える〉〈なこ=ヘロイン(「粉」を逆さにした)〉などなど、巻末にオマケとして収められた「警察用語110」だったりするのだけれど。
(文=須藤輝)

・北芝健(きたしば・けん)
元警視庁私服捜査官。交通勤務から方面機動隊員、刑事警察及び公安警察の捜査に従事。現在は教壇に立ち、犯罪学と国際関係論を講義する。主な著書に『悪の経済学』(KKロングセラーズ)、『ミステリーファンのためのニッポンの犯罪捜査』(双葉社)、『魔の薬』(あうん出版)など、劇画原作に『まるごし刑事』(実業之日本社)、『内閣権力犯罪強制取締官 財前丈太郎』(新潮社)などがある。学術社団「日本安全保障・危機管理学会」顧問・研究講座講師。早稲田大学卒。伝統空手六段、修道館館長。

日本の警察・犯罪捜査のオモテとウラ

就活学生にいいかもね。

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最終更新:2010/06/28 15:00
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