16小節の旅 名ラッパー15人が語るリリックの書き方『ラップのことば』
#音楽 #本 #ラップ
ラップが日本のメジャー・シーンに浸透し、定着してからどのくらい経っただろうか。1993年にm.c.A.Tの「Bomb A Head」が、94年にスチャダラパーfeaturing小沢健二の「今夜はブギー・バック」、EAST END×YURIの「DA・YO・NE」が大ヒットを記録し、ラップ・ミュージックは加速度的に盛り上がっていった。現在、ラップはミクスチャーなども含め、ごく当たり前にJ-POPに取り入れられようになった。
ラップがお茶の間に届けられるようになるまでには、新旧ラッパーたちが、日本語をくんずほぐれつさせて格闘してきた歴史がある。『ラップのことば』は、ラップの歌詞について、15人のラッパーたちにインタビューした本だ。インタビューに応じた面々は、Zeebra、ライムスター、いとうせいこう、BOSEなどレジェンドクラスのラッパーばかり。テクニカルなこと以外にも、ラップを始めたきっかけや、歌詞の題材になったエピソードも聞ける、ヒップホップファンならずとも興味深い内容となっている。白無地にマイクロフォンとコードをあしらった装丁も超クールだ。
たとえば、いとうせいこうが語る80年代のラップ創成期の荒々しい息遣い。アメリカ、欧州で流行していたラップをいち早く輸入し、藤原ヒロシらとインディーズレーベルを設立、多くの聴衆の目を開かせた。コミックソングに近い、文科系ノリのユーモアにあふれた日本独自のヒップホップの原型を作ったと言える存在だろう。
ラップはJ-POPの歌詞に比べて、特異で、攻撃的で、ユーモアに満ち、制約がありながらも、その世界は自由だ。ライム(韻)とフロウ(歌いまわし)のバランス、リリックを書く際に気をつけていることや、世に問いかける姿勢など、各ラッパーはそれぞれ自分だけの哲学を持っている。ステージでは聞くことの出来ない言葉が、ギッシリ詰まった貴重な一冊である。
(文=平野遼)
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