『もしドラ』とAKB48の相関関係 岩崎夏海が明かすAKB48大ブレイクの真相(後編)
#インタビュー #AKB48 #秋元康 #岩崎夏海
――AKB48の人気の重大なファクターの一つが握手会。やはり、ブレイクしてもなお、”会いに行けるアイドル”であることにこだわって、幕張メッセや東京ビッグサイトの会場を借りてまでも行うのは驚異です。
岩崎 握手会がこれほど受けるとは実は思っていなかったんですよ。開催しているうちにファンの受けがいいというのが分かって、握手会の役割が強まっていったんですね。そもそも、秋元さんは”握手会”なんて言葉も知らなかったと思いますね。握手のためにCDを100枚買うなんてスタッフもレコード会社も想像だにしたことがなかったと思いますよ。1人で2枚買うことすらも考えてなかったかのではないですかね。
――活動初期の花やしきイベント、「軽蔑していた愛情」発売当時の水泳大会のほか、最近のチームシャッフル、移籍先が決まってなかった正規メンバー全員の所属事務所発表など、さまざまな仕掛けや”サプライズ”もAKB48の話題性の一つだと思います。
岩崎 既成概念を作らないのを心がけていましたよね。”AKB48らしさ”ができた瞬間に終わる、と。それは、ほかの歌手の方とお付き合いしていく中で、秋元さんの歌詞に「これは私が歌うべき歌詞じゃないわ」とおっしゃる方もいる。それでも秋元さんは手直しするんですが、そういう言い方をする歌手はつぶれていきますね。AKB48は変化していくこと、らしさを作らないことが大事。「あれは止めておいたほうがいい」と周りが言うことがよくあるんですが、それで失敗があっても、失敗を恐れてはすぐ飽きられる。終わるのは早いですからね。常に細心の注意を払って、裏切りを続けていかなきゃいけないという脅迫観念にも似た思いがあると思います。意外なことですが、おニャン子クラブは2年半しか活動していない。AKB48はすでにその倍やってますからね。長く続けることにこだわっている。
――では、そのサプライズの中でも、特に「選抜総選挙」はエポックメイキングで、世間を圧倒しました。初めてこの企画を聞かれた時はどう思われました?
岩崎 まさに、秋元さんらしいなと思いましたね。ファンの間でメンバーをランク付けする”AKB48ソート”があるのを秋元さんはご存知なんですよ。アンケートサイトにメンバー人気ランキングのような投票があるのも知っていると思います。そんな中、選抜が固定していることに批判が多く、「なんで前田敦子がセンターなんだ?」という声があるのも把握していて、秋元さんもファンに委ねた場合の順位を見てみたかったのでは。そのため、昨年の選挙で、運営が選んだ選抜と大差なくて秋元さんが一番ほっとしたんじゃないでしょうかね。
――今年の「選抜総選挙」はまさかの大島優子1位という波乱の展開となりました。感想を教えていただけますか?
岩崎 優子の1位は2位からの躍進ですから、一般的に言えば「まさか」というほどではないかと思いますが、それでもやっぱり「まさか」という思いはありますね。というのも優子はどちらかというとマイナー志向というか、野球で言えば”月見草”と言われた野村克也さんみたいな魅力を持っている存在。僕にとってもそれが魅力なのですが、”ひまわり”と言われた長嶋茂雄さん的な魅力を持っている前田には、人気では敵わないだろうと思っていたからです。だから、僕は今でもなぜ優子が人気があるのか、1位になったのか、本当のところは分からないくらいなんです。それでも、優子が「アイドルの仕事というのは人気を得ることもそのうちの一つ」と考え、昨年の2位のという順位を受け、1位を目標にあらゆる努力を惜しまなかったことは想像に難くありません。今回の結果は、その努力のたまものと考えると、彼女の生き方には心から頭の下がる思いです。また、AKB48全体にとって今回の選挙は、「不動の1位に変動があった」という意味でとても歓迎すべき事態だと思います。変化していくこと、成長していくことが、AKB48のみならずあらゆるものにとって大きな魅力の一要素でありますから、今回の順位変動は、さらに多くのファンの関心・興味を引きつけることになるのではないでしょうか。
――前田と優子はライバル同士でありながら同じ太田プロ所属で、仲も良く、信頼関係があります。その点はどう見ていらっしゃいますか?
岩崎 前田と優子は何から何まで全く違うので、”ライバル”というのはピンと来ません。でも、2人とも女優志望だし、1位2位を2年連続で争うところだけ共通しているのが面白いですね。その意味では、強烈な刺激を与え合っている存在だとも思います。違うけど競い合う部分があるというのは、同じ事務所の同僚としては、理想的な関係ではないでしょうか。2人が同じ事務所というのは、もちろん秋元さんはそれを考慮してそうしたのだと思いますけど、とても運が良かったことだと思います。
――さて、今後のAKB48はどのようになっていくと推察されますか?
岩崎 中興の祖というか、現状を大きく変化させる新メンバーが出てくると、もっと変わっていくと思いますね。現時点では、女優の堀北真希さんのような映画、連続ドラマで主演を張れるような存在が出てきていない。今なら前田でそれができるかもしれないけど、それよりも新メンバーでそのぐらいの人気・実力のある子が出てきてほしい。今のAKB48の状況は、上がつかえていますからね。その序列を秋元さんは本当に崩したくてしょうがないと思いますよ。
――『マジすか学園』(テレビ東京系)の「世代交代は近いぜ!」ですね。やっぱり、渡辺麻友か松井珠理奈あたりが次世代のセンターになるんでしょうか? あるいは、最近では、9期研究生が前座ガールズや、「プレイボーイ」「ヤングジャンプ」(集英社)の表紙に起用されています。
岩崎 渡辺は一番特別な存在かな。秋元さんは、珠理奈を前田を追い抜かすぐらいの存在にしたかったけど、現時点では、まだファンがそこまでのいい反応していないようですね。前田もいきなりトップに立たされて、苦労もしていたと思います。でも、チャンスがあれば、秋元さんは本当に序列が崩れることを期待していますよ。
――最後に改めて、ここまで人々を魅了し、そして、魅きつけて離さないAKB48とは一体なんなんでしょうか?
岩崎 AKB48は、言うなれば、子どもたちのリアリティー。AKBには、本当に人間的にいい子が多い。これほどよくできた子たちが同時多発的に集まるって信じられないぐらい。学級委員になるような子が、AKB48には10人ぐらいいる。そこが現代の時代を反映してるように思います。今の子どもたちは家庭や社会のさまざまな状況の中で、”いい子”であらざるを得ない。特に高橋を見ている中で、今の時代が何かということを学ばせてもらいました。現代の世相を反映した、世相を映す鏡とも言えますね。
――メンバーたちは、歌手、女優、モデル、タレントなど異なる夢を持っていて、将来なりたい方向性は異なるけれど、共に歌い、踊る中で絆を深め、切磋琢磨される姿に魅かれるファンも多いと思います。
岩崎 それは初めから意図していたわけではなく、結果的にそういう子たちが集まってきて、特に優子は、「AKBに入ったら刺激的なメンバーがたくさんいて、抜けられないなと思った。ここでがんばろうと思った」と話していました。切磋琢磨しようと思って入ってきたわけじゃないけど、結果的にそうなる状況になって、それに揺るがない子たちが残ってますね。高橋は人間的にできている反面、負けず嫌いで、コンペティティブ(競争心が強い)。前回の総選挙のベスト10の選抜メンバーで負けず嫌いじゃない子は一人もいないですよ。絶対自分が一番だと思ってるけど、だからといって他人を蹴落とそうとは思っていない。蹴落とそうとしたら、自分も足引っ張られますからね。
――そんなメンバーたちが『もしドラ』の”マネジメント”の発想に触れれば、さらに成長できると思います。『もしドラ』は、AKB48へのメッセージでもあるのでしょうか?
岩崎 峯岸を始めとして、何人かは本を読んでくれているみたいですね。スタッフとして近くにいた僕が作家として世に出られたのは、彼女たちのおかげでもある。僕自身が高橋、優子、秋元才加らを見ていて、「負けられない」と思って奮起して書いた部分もあります。僕もAKB48のライバルでありたい。このままだと抜かされそうで、偉そうなことが言えなくなるぐらいの危機感すら抱いていますね。
(取材・文=本城零次<http://ameblo.jp/iiwake-lazy/>)
●岩崎夏海(いわさき・なつみ)
1968年7月生まれ。東京藝術大学美術学部建築科卒。大学卒業後、作詞家・秋元康氏に師事。放送作家として『とんねるずのみなさんのおかげです』『ダウンタウンのごっつええ感じ』(フジテレビ系)などテレビ番組に制作に参加。AKB48のプロデュースにも携わり、ゲームやウェブコンテンツの開発会社を経て、2009年4月、株式会社吉田正樹事務所に入社。『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの「マネジメント」を読んだら』出版を機に、現在は所属作家として活動中。
もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら
AKBとドラッカーがつながるとは……。
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