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妖怪小説家・田辺青蛙が突撃レポート!【 飴村行×杉江松恋トークショー】

実は春樹好き!? ”グッチャネ”ホラー作家・飴村行のイカレタ粘膜世界

amamura.jpg日本中をドン引きさせ続ける小説家・
飴村行氏。

 5月末、小説家の飴村行さんと、書評家で文芸評論家の杉江松恋さんによるトークショーが青山ブックセンター六本木店で行われました。今回は、そのイベントと打ち上げ時のお話を元に、飴村さんのエピソードを交えながらイカレタ粘膜世界の魅力をご紹介していこうと思います。

 飴村さんは、グッチャネ(女の股ぐら泉に男のマラボウを入れてソクソクすること)が出てくるぐちゃぐちゃな『粘膜人間』(角川ホラー文庫)で、第15回日本ホラー小説大賞長編賞を受賞。過去の受賞作の中で最も衝撃的な問題作と評され、その続刊『粘膜蜥蜴』(同)では、日本推理作家協会賞を受賞されました。日本推理作家協会賞は、デビュー作では取れないと言われている賞で、2作目で取ったのは、京極夏彦さん、福井晴敏さん、馳星周さんなどだそうです。しかも、文庫で受賞後1作目での受賞は、前例のない快挙だとか。更に『粘膜蜥蜴』は宝島社「このミステリーがすごい!」大賞や、早川書房「ベストSF2009」でも高い評価を受け、ホラーだけに留まらず、ミステリーやSF読者の脳みそもレイプ……ならぬ、グッチャネし続けたわけです。

 その、『粘膜』シリーズの最新作、『粘膜兄弟』(同)が先月25日に発売されました。トークショーの内容は、最新刊のネタバレにならない程度の情報開示と、こんな変な小説を書く飴村行という作家がどうやって誕生したのか、杉江さんが迫るという内容でした。

 杉江さんと一緒に登場された、飴村さんのお姿にびっくり。昨年お会いした時は、眼鏡(実は伊達眼鏡で、実兄にキャラが薄いと言われたという理由でかけていたらしい)に銀行員のようなスーツだったのに、なんと茶髪に今風の若者っぽい黒ずくめの格好になっていました。染めたのは最近らしいのですが、「見た目は石部金吉! 作品は弩変態」と言われていた飴村さんがこうも変わってしまうとは……。イメチェンした飴村さんにあっけに取られている内に、粘膜トークショーが始まってしまいました。

飴村行(以下、飴) 最初はお行儀のいいホラーを書いて、ホラー小説大賞に1年に1本というペースで応募し続けていました。期限は4年と区切って決めて送っていたわけですが……最後の一年目に、「どう思われてもいい、笑われてもいい! 最後に好きなものを!」 と思って、『粘膜』で出してみました。

杉江松恋(以下、杉) デビュー作の『粘膜人間』は、190cmの小学生と弟が殺しあう話なんですが、すぐ手が飛んだりしますよね。飴村さんは、スピーディーなアクション・シーンが抜群に上手い。登場人物がみんな容赦しないんです。飴村さんの好きな作家はどなたですか?

 村上春樹が大好きですね。でも、全く影響は受けていないと思います。肥やしや、土壌が違うんです。植えても春樹っぽい作品は育たない(笑)。お米でいうなら、育つ品目が「ひとめぼれ」だけって感じで限定されていますね。

 最新作の『粘膜兄弟』は、童貞の兄弟が架空の「フグリ豚」という家畜を育てていますね。未読の方もいるかと思うので説明しますが、フグリ豚っていうのは、異様に睾丸が大きい豚なんです。睾丸を生で刺身にして、醤油につけると美味しい。「ヘモやん」っていう、天才ふぐり豚ブリーダーが出てきますが、趣味はふぐり豚とヤルこと。ふぐり豚は睾丸が美味しいので、それがないメスは役に立たない。メスは数を増やすために飼われているわけですが、そのメスフグリ豚の名前を呼びながらヘモやんはヤルのが好きなんですよね。「梅子ちゃん! 梅子ちゃん!」とか。舞台は一作目と同様、戦時中の日本となっていますが、こういう発想はどこから出ているんですか?

 小学生の時、確か7歳ですね。「週刊新潮」(新潮社)にベトナム戦争の写真が載っていたんです。そこに、少し足を開いた女性の死体写真があって。その写真を同級生に見せたら、「もったいない」って言われたんです。見えそうで、見えなかったから。子どもでも、戦争は大変なことだ、悲惨なことだと知っています。なのに、見えるかどうかを考えてしまうことから生じる罪悪感。男の性欲ってどうしようもないなって。そういう気持ちに書かされている部分がありますね。で、小さい頃にロボダッチを爆破して遊んだりもしました。綺麗に着色して、並べて爆竹で爆破させるんです。それがやがてエスカレートして、タイガー戦車などになりました。壊すために作るんです。お婆ちゃんに可愛がられていたから、貰ったマッチで撒いた油に引火させて喝采を叫ぶ。友達は若干引いていましたが、楽しかったです。親父にバレてボコボコにされて、結局この遊びは止めてしまうんですがね。

 そういう遊びは更にエスカレートするんで、お父さんに止められて良かったですね。

 その遊びの余波か、軍記、戦記物を読み続けました。彼女には「右翼なの?」と言われたり、自分自身、何の役にも立たないのに、どうして自分はこんな本を読み続けてるんだろうと考えていました。だけど現在粘膜シリーズを書くにあたっては、めちゃくちゃ役にたっていますね。

 こんな感じで、問題発言連発の大爆笑トークイベントでした。最後に、司会者の杉江さんから以下の言葉で締めくくりがありました。

「『粘膜兄弟』は童貞の兄弟が主人公です。童貞の人は楽しんで貰えると思います、童貞じゃない人は、童貞になった気持ちで大いに楽しんでください」

 そんなわけで、女の私もこれから、心を童貞にして『粘膜兄弟』を読んでみようと思います! 読み終えたら、著者の飴村さんに、スマタテングオベーションで拍手を送ろうと思います。ちなみに、飴村さんの編集担当者さんは、一部で粘膜編集と呼ばれているそうで、次は『粘膜鼠(仮)』だとか。
(取材・文=田辺青蛙)

●飴村行(あめむら・こう)
1969年福島県生まれ。東京歯科大学中退。08年『粘膜人間』で第15回日本ホラー大賞長編賞を受賞しデビュー。第二作『粘膜蜥蜴』が「このミステリーがすごい!」で6位、「週刊文春 ミステリーベスト10」で7位、「最高の本!2010」国内ミステリー編で2位など、年末ミステリランキングに続々ランクインする。10年、同作で第 63回日本推理作家協会賞(長編および連作短編集部門)を受賞。ホラーとミステリーを融合した次代のエンタテインメント小説界を担う新鋭として、今最も注目を浴びている。

tanabe_prof.jpg田辺青蛙(たなべ・せいあ)
「小説すばる」(集英社)「幽」(メディアファクトリー)、WEBマガジン『ポプラビーチ』などで妖怪や怪談に関する記事を担当。2008年、『生き屏風』(角川書店 )で第15回日本ホラー小説大賞を受賞。綾波レイのコスプレで授賞式に挑む。著書の『生き屏風』、共著に『てのひら怪談』(ポプラ社)シリーズ。2冊目の書き下ろしホラー小説、『魂追い』(角川書店)も好評発売中。

粘膜兄弟

ベタベタジトジト。

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最終更新:2010/06/10 18:00
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