リストラ暴露ブログ「リストラなう」がコメントの著作権をめぐって大混乱
#ブログ #出版 #光文社
某出版社のリストラ事情について暴露したブログ「たぬきちの『リストラなう』日記」が炎上している。
このブログは、昨年50億円の赤字を出した出版社に勤める「たぬきち」が、会社側の提案”希望退職者の優遇措置”に挙手し、自らが退職するまでの経過を克明に綴ったもの。45歳のたぬきちの月収が59万6,820円であること、夏・冬合わせてボーナスが202万730円だったことなど、社内の金銭事情やシステムについて明け透けに書かれており、業界筋では話題になっていた他、同じ境遇の同業他社やリストラにあった人々から多くの支持を受けていた。この某出版社が光文社であることは以前の記事で紹介したとおり(参照記事)。
そんな興味津々の話題を振りまきながら、5月31日の最後の出勤日、ブログでは当日の様子が朝から詳細に綴られ、沢山の労いコメントが集まるなかフィナーレを迎えたのだが、問題が起こったのはその翌日。
”【お知らせ】”という見出しと共に書かれていたのは、このブログを7月末に書籍にするという話。その内容によると、書籍化するにあたって、投稿されたコメントも採録したいが各コメントには著作権があるので「どうしても本に載せてほしくない」という人は6月16日までに不掲載希望のコメントがほしい。その際、コメント掲載日を記入の上、同一のIPアドレスかどうか確認するため、投稿した時と同じ場所・回線から行ってほしいとのこと。
これに対し、閲覧者たちが「初めからそのつもりで書いていたのか」「こんな話だったら協力なんてできない」「出張先からコメントしたのに、同じIPアドレスなんて無茶だ。身勝手過ぎる」と、猛反発。
出版元が『電車男』や『ブラック会社に勤めてるんだが、もう俺は限界かもしれない』など掲示板ソースから書籍化、映画化した新潮社ということもあり、「お前もお金目的か」と揶揄する声も。一方で、「全く問題ない」「楽しませてもらった」「これから頑張って」など好意的な意見も中には見られたが、炎上の主な争点は、「書籍化するにしても、こんなずさんな方法で掲載可否の確認をしていたら、投稿者から訴えられるぞ」と、今まで投稿されてきたコメントの著作権についてだ。
実は、このようなネット上にアップされたコメントに対する著作権の問題は1度裁判になったことがある。訴えられたのはサイト運営会社と光文社。ホテル・ジャンキーズ事件と呼ばれるこの裁判では、全国各地のホテルについて様々な意見が交わされた「サロン・ドゥ・ホテル・ジャンキーズ」という掲示板に書かれた内容の一部を複製・編集して、投稿者に無許可のまま書籍にしたというもの(http://www.law.co.jp/cases/hotel.htm)。
結果、原告11名に対し、書籍の総販売額から算出された著作権料110万円を基準に、掲載コメントの回数など書籍に占める割合を計上し、それぞれに分配することを命じられた。裁判所の判断では、「著作権法による保護の対象となる著作物は、”思想又は感情を創作的に表現したものである”ことが必要。”思想又は感情を表現した”とは、単なる事実をそのまま記述したような場合はこれに当たらないが、筆者の事実に対する何らかの評価、意見等が表現されていれば創作として足りる」とされている。
このような前例もあって、今回の記事をエントリーしたのかもしれない。書籍化の話はいつ頃出たのか不明だが、いずれにせよ、コメント掲載不可の場合は改めて連絡することや、「6月16日を過ぎて何の連絡もない場合は採録を許可いただいたと考えて編集・出版作業を進めていきます」といった、あまりに実務的な内容が炎上の原因になったようだ。
ちなみに、炎上について沈黙を守っていたたぬきち氏だが、6月6日、新ブログ『たぬきちの野良犬ダイアリー』にてこう述べている。
「コメント欄は過去最大規模で炎上中。すいません。拙速とのご指摘は本当に心に痛い。(中略)近々、改めてお願いのエントリーを「リストラなう」日記のほうにアップロードしたいと思っています。大変申し訳ありませんがしばしお時間をいただきたく、伏してお願い申し上げます。」
ブログコメントの著作権の所在をあまりに軽く見てしまったために起こった今回の騒動だが、たぬきち氏には誠意ある対応を求めたいものだ。
(文=征木愛造)
◆たぬきちの「リストラなう」日記
<http://d.hatena.ne.jp/tanu_ki/>
どうせなら、光文社から出したら?
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