堤真一がタブーに挑む男を熱演! 医療ヒューマンドラマ『孤高のメス』
#映画 #邦画
長引く不況などでなにかと不安な現代社会を生きる大人たちを勇気づける、良質な日本映画が生まれた。堤真一が2年ぶりの映画主演を果たした『孤高のメス』だ。
舞台は1989年、とある地方都市の市民病院。見栄と体裁ばかりを気にかけ、簡単な外科手術ひとつも満足にできない状態にまで陥った病院に、ピッツバーグ大学で肝臓移植も手がけた敏腕外科医・当麻鉄彦(堤)が赴任する。冷静で正確なオペ技術を持ち、なにより患者のことを第一に考える当麻の姿勢は、仕事に疑問を抱いていた看護師の浪子(夏川結衣)らにも影響を与え、停滞した空気が漂っていた院内を次第に活気づかせていく。
しかし、そんなある時、当麻は脳死した患者からの肝臓移植を行うか否かという大きな決断を迫られる。当時、脳死肝移植は法律でまだ認められてはおらず、執刀すれば逮捕される事態にもなりかねない。それでも当麻は、助けられる命に手を差し伸べようと決意するのだが……。
主人公・当麻に扮するのは堤真一。近年は『容疑者Xの献身』『ヴィヨンの妻 桜桃とタンポポ』『山のあなた 徳市の恋』、今後も『SP』2部作、『SPACE BATTLE SHIP ヤマト』など、相変わらず話題作に引っ張りだこだが、意外にも映画主演作の公開は、2008年7月の『クライマーズ・ハイ』以来2年ぶり。本作は、その『クライマーズ・ハイ』で脚本も手がけた成島出がメガホンをとり、タブーとされた手術に挑む男の姿を描く。
当麻の行動原理は「患者の命を救う」ということで、医師としてごく当たり前のことを成し遂げようとする心だ。たとえ自分が不利になろうとも、自らの信念を貫き行動する男の姿を描くという点では『クライマーズ・ハイ』にも通じ、大人の観客を満足させた同作の再来とでも言えるものがある。当麻は冷静で激することなく、淡々と自らのすべき仕事をしていくが、時折見せるユニークな一面(演歌好きなど)から、人間としての温かみも伝わる。そんな当麻の姿勢に、周囲の看護師や若い医師たちも感化され、職場でのチームワークや絆、信頼関係が築き上げられていく。社会人ならば、おそらくこの映画を見て「当麻のような上司(同僚)がほしい」「当麻のように仕事に誇りをもって生きよう」と思い、困難や苦境にもぶつかっていく勇気をもらえるはず。
原作は現役医師の大鐘稔彦によるベストセラー小説。手術シーンも現役医師陣が完全バックアップし、キャスト陣は実際に手術現場を見学するなど入念な役作りでリアリティを追求。堤、夏川のほか、吉沢悠、中越典子、成宮寛貴、余貴美子、生瀬勝久、柄本明ら派手ではないが確かな実力をもった役者たちの共演も見どころ。6月5日より公開。
(文=eiga.com編集部・浅香義明)
『孤高のメス』作品情報
<http://eiga.com/movie/54760/>
『孤高のメス』特集
<http://eiga.com/movie/54760/special/>
こんな医者ってホントにいるわけ?
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