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黒き鋼鉄と化した男の爆音復讐譚『鉄男 THE BULLET MAN』

tetsuo0000.jpg『鉄男 THE BULLET MAN』/5月22日(土) シネマライズ他全国ロードショー/配給:アスミック・エース/(C)TETSUO THE BULLET MAN GROUP 2009/http://tetsuo-project.jp/

 5月病からなかなか抜け出せずにいる人も、この映画を見れば嫌が上でも目が覚めるかもしれない。世界で人気の塚本晋也監督最新作『鉄男 THE BULLET MAN』(5月22日公開)だ。

 塚本監督は1987年に『電柱小僧の冒険』で若手監督の登竜門PFFグランプリを受賞。89年の商業映画監督デビュー作『鉄男』は、「全身が鋼鉄の塊と化す男」という鮮烈な内容でいまでもカルト的な人気を誇っている。『六月の蛇』(02)ではベネチア国際映画祭審査員特別大賞を受賞し、同映画祭では審査員を2度努めるなど特にヨーロッパでの人気・評価が高い。脚本、撮影、美術、編集なども自らこなすこだわりの人でも知られ、そこから生み出される独創的な世界観は一度ハマると病み付きになる。

 そんな塚本監督が、デビュー作にして代表作の『鉄男』20周年を記念して製作したのが、今回の『鉄男 THE BULLET MAN』。東京の外資系企業で働くアメリカ人、アンソニー(エリック・ボシック)がある日突然、愛する息子を何者かに殺され、人生が一変。絶望に打ちひしがれながらも事件の謎を追う。すると、解剖学者だった父親が関与する<鉄男プロジェクト>と呼ばれる謎の実験の存在に行き当たり、その事実を知って怒りに震えるアンソニーの体は、蒸気と黒いオイルを噴出する鋼鉄の銃器と化していく。

 かつてハリウッドで企画開発されていた経緯があり、製作にはクエンティン・タランティーノも参加していたが実現には至らなかった。結局は日本映画として製作されたが、海外展開を意識して全編英語劇として完成。すでに昨年のベネチア国際映画祭のコンペティション部門に出品されてワールドプレミアも行われた。満を持しての日本公開となる。

 『鉄男』と『鉄男II BODY HAMMER』(92)のシリーズ過去2作とは、大都市・東京を舞台に男の体が怒りで鋼鉄の塊と化すというモチーフが共通するのみ。続編でもリメイクでもない新作として、過去作を見ていなくても問題ない。加えて、主人公の過去が明らかにされる過程や愛する人との絆などが描かれ、クライマックスの鉄男と謎の男と対決もアクション満載で、過去2作よりもストーリー性や娯楽性が増した。

 なにより強烈なのがその音響だ。鋼鉄がうなりを上げるかのような破壊的な音が、劇場の限界ギリギリまで響き渡る。塚本監督は「上映時間は『アバター』の3分の1だが、見た後の疲労度は『アバター』の3倍は間違いなくある」と自信たっぷりで、実際にマスコミ試写では「試写室が揺れる」という現象も起こっているとか。

 映像もCGは極力使われずアナログに徹しており、デジタル3Dが盛んな昨今、CGばかりの映画に見慣れた若い世代には、特に新鮮かもしれない。好き嫌いの別れる映画ではあるが、わずか71分の上映時間ながらも、見終わったあとはアドレナリンが全開に。その映像と音を文字通り体で受け止める”体感”映画として、季節柄ぼんやりしがちな脳ミソを刺激するには十分すぎる迫力がある。
(eiga.com編集部・浅香義明)

『鉄男 THE BULLET MAN』作品情報
http://eiga.com/movie/54774/

完全鉄男 『鉄男』から『鉄男 THE BULLET MAN』までの軌跡

徹底的に鉄男の世界。

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最終更新:2010/05/22 15:00
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