一歩間違えれば大事故!? 大人が本気で楽しむ『あぶない科学実験』
#本
学生時代、誰もが足を踏み入れた少し怪しげで特殊な教室――理科室。
一歩中へ入ると、薬品の匂いが鼻をつき、直立不動の不気味な人体模型が無言でお出迎え。棚にはビーカー、ガスバーナー、試験管などの器具がぎっしり収められている。
そこで教科書通りに行われた実験と言えば、危険など皆無で安全が確保されたエレガントなものばかりだった。
けれど、今回紹介する『あぶない科学実験』はレベルが違う。あとがきに、教訓として「人様が借りているビルの中で爆発が起きると自分以外の人間がヨダレを垂らすほど怒られる」と書かれているほどで、一歩間違えれば、「やっちまった!」と叫ばずにはいられない、実験が繰り広げられている。
著者であり、今回すべての実験を担当したのは、サイエンスライターの川口万友氏。2009年に発売された『大人の怪しい実験室 都市伝説の検証』(データハウス)では、コーラで骨は溶けるのか、某ハンバーガーショップで噂されるミミズバーガーは本当なのか、などの検証を行い、話題を呼んだ。
本書では、都市伝説ではなく、”あぶない”実験を中心に25件の実験の様子をレポート。備長炭を使って火花を飛び散らしたり、水道管でエアバズーカーを作ってジャガイモを50メートル以上飛ばしてみたりしている。
その一例をもっと具体的に紹介しよう。実験No.22の”爆裂! テルミット反応”。用意するものは、酸化鉄粉末、アルミニウム粉末、マグネシウムリボンで、酸化鉄とアルミニウムの粉末を8:3の割合で空き缶に入れ、フライパンの上に置く。空き缶にマグネシウムリボンを加え、点火。すると、2200度にも達するすさまじい炎がブワっと噴出し、みるみるうちに、フライパンを溶かす。
「酸化鉄+アルミニウム→酸化アルミニウム+鉄、つまりは酸化鉄がアルミニウムによって還元されるわけだ。アルミニウムに熱を加えると、手近な酸化鉄から酸素を奪い、酸化アルミニウムに変わる。同時に酸素を奪われた酸化鉄は鉄に還元され、その時に高温が発生する」(本文より)という、テルミット反応の結果、であるらしい。うーん、まったくわけが分からない……。
これは、一瞬ではあるけど、火の量が半端ではないので、ある程度知識があり、激しい炎に対し並々ならぬ魅力を感じる理系男子におすすめ。
興味はあるけど、炎上したりするのは正直コワイ。そんな乙女なアナタは、家で簡単にできる実験No.09″緑色の不気味焼きそば”をお試しあれ。
これは非常に簡単な実験で、紫キャベツを使って通常通り焼きそばを作るだけ。すると、不思議なことに不気味な緑色のやきそばが完成する。その理由は、紫キャベツに入っている”アントシアニン”という色素。この色素はアルカリ性の物質と交わると、青色になるという性質を持ち、焼きそばの麺に含まれている、かん水というアルカリ成分がアントシアニンと反応して色が変化する。これは、酸性は赤、アルカリ性は青に色を変えるリトマス試験紙の思い出すと分かりやすい。
この焼きそばをよりマズく見せるコツは、色を際立たせるため、ソースではなく塩焼きそばにすること。彼氏と別れたいという女子は、彼を自宅に招き、無言でスッとこの焼きそばを差し出せば、距離を置かれること間違いなし。
「実験はうまくいかない。それはもう見事な失敗の連続である。(中略)手を動かし足を運び、ヤケドしたり壊したりしているうちにただ暗記するだけの数式、アルファベットが並んだだけの無色の化学式が不意に鮮やかに色づく。やってみて初めて自分の”わからない”ことがわかるのだ」(本文より)
科学はまずは試してみること。失敗を恐れず、けれど実験前には、科学の知識を少し入れて、試してみよう。くれぐれも、家を吹っ飛ばしたりして事件にならないようご注意を。
(文=上浦未来)
●川口友万(かわぐち・ともかず)
1966年生まれ。富山大学理学部卒。サイエンスライター。”サイエンスにもっと笑いを!”がモットー。パソコン誌の編集者を経てフリーに。『月刊PCfan』にて、本書の元になった「サイエンス自作系」を好評連載中。著書に『大人の怪しい実験教室~都市伝説の検証』(データハウス刊)、『これからの自転車読本』(東京地図出版刊)
サイエンスに笑いを!
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