乱れ咲く”悪の華”ゼブラクイーン! 仲里依紗が過激変身『ゼブラーマン2』
#映画 #仲里依紗 #邦画 #三池崇史 #パンドラ映画館
のゼブラクイーン(仲里依紗)。『妖怪大戦争』の高橋真唯、
『神様のパズル』の谷村美月、『ヤッターマン』の深田恭子に続く、
セクシーヒロインだ。三池崇史監督、ありがとう!
(c)2010「ゼブラーマン ゼブラシティの逆襲」製作委員会
ズンドコズンドコ、顔を黒塗りした仲里依紗が腰を振り振り、踊り狂う。『ゼブラーマン ゼブラシティの逆襲』のいちばんの見どころは、何といっても仲里依紗扮するゼブラクイーンが歌い踊る「ゼブラクイーンのテーマ」のPVシーンだろう。近未来の東京は新知事(ガダルカナル・タカ)によって”ゼブラシティ”と改名され、知事の娘・ゼブラクイーンが絶大な人気を誇っている。都民たちはカリスマアイドル・ゼブラクイーンの過激な言動に痺れっぱなしだ。三池崇史監督が創り出したゼブラシティは、ある意味、すごく平和な社会だ。リーダーシップの強い人間によって治められ、一般市民は何も考えなくていい。しかも、毎日朝と晩に”ゼブラタイム”が導入され、その5分間、ゼブラシティはルール無用の無法地帯となる。毎日、だんじり祭、御柱祭級の興奮が味わえるのだ。ゼブラシティは本能にいちばん忠実なヤツがいちばんエラい。ゼブラクイーンと一緒に踊れば、ズンドコズンドコ、不思議な陶酔感が体にみなぎる。
前作『ゼブラーマン』(04)は哀川翔の主演作100本記念として、盟友・三池崇史監督、脚本に売れっ子・宮藤官九郎が起用されたメモリアルイベントとしての作品だったが、6年のブランクを経て製作された本作は、前作との関連性はかなり希薄。15年もの長い眠りから目覚めたダメ教師・新市(哀川翔)は自分がゼブラーマンだったという記憶を失い、奥さん(鈴木京香)もとっくに消えてしまった。続編というよりは三池監督の独自テイストが前面に押し出された、奇妙に捻れ曲がったワンダーランドとなっている。
三池監督が創り出したダークな色彩のユートピア”ゼブラシティ”。『妖怪大戦争』(05)の高橋真唯、『神様のパズル』(08)の谷村美月、『ヤッターマン』(09)の深田恭子に続く、歪んだ楽園の新しい女王さまに抜擢されたのがアニメ&最新実写版『時をかける少女』のヒロイン・仲里依紗だ。『時かけ』公開の際の彼女に、ゼブラクイーン役についても聞いてみた。
「最初に謝っておきます、スミマセン! 『時をかける少女』を観てファンになってくれた人は『ゼブラーマン──』の私を観て、ショックを受けるかも。『ゼブラクイーンは私です』って言わないと分かんないですよね。自分でも分からないぐらいですから(苦笑)。『時かけ』のときもそうでしたけど、『ゼブラーマン──』もゼブラクイーンのキャラクターが私に憑依して、現場のことはあまり覚えてないんです……」
まで真っ黒なゼブラクイーン(仲里依紗)が
激突! 2人がそろって、初めてシマシマに
なることにお互い気づいていない。
劇中と違って、普段は腰の低い仲里依紗。仲里依紗ファンこそ、『時かけ』の清純ヒロインから、『ゼブラーマン ゼブラシティの逆襲』での”悪の華”への妖艶な変身ぶりを堪能してほしい。仲には自分は”アイドル”ではなく、”女優”であるという認識と覚悟がある。20歳ながら、確固たる職業意識を持っているアッパレな九州女だ。仲は、ある意味で素っ裸だ。一度身にまとったキャラクターのイメージを簡単に脱ぎ去って、新しい作品へと丸裸の状態で飛び込んでいく。役によって、監督によって、善にも悪にも染まってみせる。ひとつのイメージに固執しない柔軟さ、思いっきりの良さが、彼女の魅力だろう。
それにしても、三池監督作品には”三池印”とでも呼ぶべき、グニョグニョとした原生動物のような奇妙なクリーチャーがやたらと登場する。『妖怪大戦争』では吉凶を予言する半人半牛の妖怪”くだん”が冒頭で生まれ、『極道恐怖大劇場 牛頭』(03)では吉野公佳の股間から未知なる生命体が現れる。『インプリント ぼっけぇ、きょうてえ』(04)の工藤夕貴は頭の中にキュートなモンスターを潜ませ、『ヤッターマン』の阿部サダヲは”泥棒の神様”ドクロベエのパカッと開いた頭の中から胎児のように這い出てきた。『神様のパズル』の谷村美月は新しい宇宙、新しい生命を誕生させようと壮大な実験に挑んだ。そして今回の『ゼブラーマン ゼブラシティの逆襲』でもゼブラーマンは巨大な遠心分離機に掛けられ、ゼブラーマンから奇妙な生命体が分離発生する。このグニョグニョした生命体の正体は一体何だろうか?
90年代にVシネを中心に、さまざまなジャンルの作品を職業監督として全力疾走状態で撮り続けた三池監督は、『オーディション』(00)、『殺し屋1』(01)のバイオレンス作品で作家性を高めた。Vシネながらカンヌ映画祭に出品された『牛頭』や”マスター・オブ・ホラー”として米国の有料テレビからの要請を受けて撮った『インプリント』あたりで、その表現スタイルはピークに達したといえるだろう。さらに『クローズZERO』(07)、『ヤッターマン』の大ヒットで、メジャー映画でも興行結果を残せるヒットメーカーとなっていく。
Vシネ界で暴れ回る鬼才から、メジャーシーンへと浮上していった三池監督。作品スタイルにどのような違いが生じたかというと、Vシネ時代の作品が地下室で開かれる秘密のパーティーのような妖しさが漂っていたのに対し、予算が増えたメジャー作品は多くのキャストやスタッフを巻き込んだ”ケンカ祭り””闇祭り”へとスケールアップしていったように思う。そして、その”三池祭り”のご神体となっているのが、例のグニョグニョした生命体、神なのか悪魔なのか分別できない未分化のクリーチャーなのである。
この”三池祭り”は映画館で入場料を払いさえすれば、誰でも参加できる。映画館の照明が消え、いよいよ闇祭りが始まる。祭りには善も悪もない。ただ、日頃溜め込んだ欲望の塊を気持ちよく吐き出すだけだ。ズンドコズンドコ、仲里依紗が扮するゼブラクイーンが歌い踊る。同じアホなら、踊らにゃソンソン。善か悪か分からない奇妙なご神体のある限り、三池祭りは終わらない。
(文=長野辰次)
●『ゼブラーマン ゼブラシティの逆襲』
脚本/宮藤官九郎 監督/三池崇史 出演/哀川翔、仲里依紗、阿部力、井上正太、田中直樹(ココリコ)、ガダルカナル・タカ、スザンヌ、永野芽郁、中野英雄、水樹奈々、前田健、六平直政、木下ほうか、マメ山田、波岡一喜、生瀬勝久 配給/東映 5月1日(土)より全国ロードショー公開
<http://www.zeb2.jp>
た、たまらん……。
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