佐藤秀峰、出版社にブチギレ!! 『ブラよろ』カバーイラストをボイコット
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『海猿』『ブラックジャックによろしく』で知られ、手がけた作品を一話10円から販売するオンラインコミックサイト『漫画 on Web』を展開するマンガ家・佐藤秀峰。『ブラックジャックによろしく』が「モーニング」(講談社)から「ビッグコミックスピリッツ」(小学館)への移籍するてん末などを公式サイトで暴露してきた彼がまたしても出版社との確執を暴露。今度は、現在「スピリッツ」に連載中の『新ブラックジャックによろしく』のコミックス第9巻の表紙であるカバーイラストを描くことをボイコットしたという。佐藤は公式サイトの日記でその理由を次のような点だと指摘した。
「担当の編集者に『○月○日に、デザイナーとアートディレクターのスケジュールを押さえてあるので、その日にイラストがないと単行本の発売が遅れる』と言われたこと。約束の日にイラストを仕上げたけど、編集者が自分で言ったスケジュールを覚えておらず、デザイナーさんとアートディレクターさんのスケジュールを押さえていないばかりか、原稿も受け取らなかったこと。その結果、原稿を描く気が起こらず、雑誌の連載原稿の締め切りまでも落としてしまったこと。そもそもカバーイラストは原稿料がもらえず、仕事ではないこと、だからカバーはもう描かないこと…」
宿年のわだかまりに加え、締め切りを自ら忘れる編集者のズサンさに辟易してしまった佐藤。さらに「カバーイラストは描いても原稿料は出ないし、単行本は出版社の商品であって、僕の商品じゃないので、なぜ他社の商品のために無償で絵を描かなくてはいけないか理解できません」と綴り、単行本のカバーイラストは描いてもギャランティーが発生しないことを暴露。
出版社は表紙として雑誌掲載時に扉絵にカラーを付けて、カバーとしての流用を提案するも、佐藤は、「カバーイラストとしての原稿料を欲しい」としてこれも拒絶した。単行本を”他社の商品”と断言し、切り捨てようとしている様子だ。さらに彼のこの決断は”家庭不和”にも発展し、『ムショ医』などの作品で知られるマンガ家で佐藤の妻である佐藤智美と大喧嘩が勃発したという。佐藤は日記で以下のようなバトルを繰り広げたことを明かした。
妻「編集さんへの当てつけとは言わないけど、読者のことを考えたら、そんな判断にはならないよ。読者と編集者と、どっちを向いてるのよ?」
佐藤「読者に決まってんだろ…。そこがどうでもいいんなら、講談社から連載を移籍した時点で、とっくに漫画なんて、描くのをやめてるよ…。最後まで、読者に物語りを届けなければいけないと思ったから、見苦しくても描き続けてんだろ…? 小学館も講談社も変わりなんかないよ。あいつら、レ○プしといて、『オレが女にしてやった』って言うような奴らだぜ…」
妻「イラストの1枚くらい描きなよ。」
佐藤「1枚くらいって思ってるんでしょ? 編集者と同じことを言うんだね…。」
妻「他の漫画家さんだって、全員、タダでカバーを描いているじゃない…。あなたのやってることは、その漫画家さん達の行為を否定することでしょ? タダで絵を描くヤツはバカだって、言ってるのと同じよ。皆に嫌われて、お金の亡者だと思われるだけじゃない…。」
佐藤「じゃあ、どうすれば描けるんだよ…? 無理矢理、カバーを描くことは出来るかもしれないけど、そしたら、オレはもう、漫画は1枚も描けないよ…。 『たかが、イラスト1枚くらい』って言われることが、どんなに傷つくか想像できないの…? 『減るもんじゃないんだから、一発くらいやらせろ』って言われて、股を開ける? 濡れるの!? オレはせめて、お金をもらってやりたいね!」
長年連れ添い、同じマンガ家として互いの心情を理解し、苦楽を共にしてきた夫婦が故に、双方涙を流し、慟哭しながらの激論となった二人。最終的には、佐藤がボイコットに至った真相をすべて記すことで、妻も引き下がったという。カバーのギャラが出ないことに佐藤は「新人はお金の交渉は出来ないし、売れた漫画家はカバー代なんてもらえなくても、儲かってるから出版社とケンカしないし、『お金が発生しないのはおかしい』って、誰が大声で言えるんだよ…?」と問題提起。
さらに、佐藤はマンガ編集者の間では定説である『編集者は漫画家を3人潰して1人前』というクリシェ(決まり文句)の存在を嘆き、「(小学館刊行で2008年休刊の)ヤングサンデーが潰れて、漫画家は大量に連載を失ったけど、編集者は一人も退社してないじゃん。漫画家って、どんだけお人好しなんだよ」と述懐。「僕はもう紙の本に興味を失ってしまいました。この『漫画 on Web』が、僕の表現の舞台であり、僕はここで発表をするために、漫画を描いています」と宣言した。
佐藤の『漫画 on Web』には、「ビッグコミックスピリッツ」(小学館)に『日本沈没』を連載していた一色登希彦、「YOU」(集英社)に『胡蝶伝説』を連載の池田ユキオらが作品を公開し、今後も掲載するマンガ家を増やしていく予定だという。ipad、Kindleなど電子書籍リーダーの誕生により、有史以来の岐路に立たされている出版社。佐藤の主張が正しいのか? 自ら告げた締め切りを忘れる出版社が正しいのか? その答えは”時代”が自ずと出すことだろう。
(文=本城零次)
◆佐藤秀峰「漫画on Web」
http://mangaonweb.com/
漫画家さん夫婦って意外に多い。
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