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泥沼化する”お笑い帝国”の覇権争い 吉本興業のお家騒動が再燃する!?

oosakachisai.jpg大阪地裁

 吉本興業のお家騒動が意外な形で再燃した。吉本は昨年秋に投資会社の行った公開買い付け(TOB)の結果、今年2月に特定少数の大株主だけが存在する非上場会社となった(記事参照)。

 これに対して、元株主の2人が原告となり、吉本と会長を被告として、吉本が非上場化を最終決定した今年1月28日の臨時株主総会の決議が無効であることの確認を求めて、15日に大阪地裁に提訴をしたのだ。そして、その原告の1人が、吉本創業家の一族で会社と争い続け、昨年に亡くなった故林マサ氏を後押しする形で現経営陣を”恫喝”したとして、お家騒動を勃発させた大阪の実業家M氏に繋がる人物なのだ。お笑い帝国をめぐる争いは、いったい、どこまで続くのか。

「この裁判の争点は、吉本個別の問題というだけなく、今の会社法のいわば抜け道を問題視するものです。この抜け道が認められると、今の上場企業の経営陣は、自分たちの都合だけで不都合な株主を、簡単に強制排除して非上場化できてしまいます」

 こう語るのは、原告団の1人であるY氏。経済アナリストであるY氏は、数年前から個人的に吉本の経営問題に注目し、株主総会で質問するなど続けていた。

 一方、もう1人のO氏は元証券マンというが、現在はM氏の関連会社に勤務している。

 今回の民事訴訟は、この東京在住のY氏と大阪在住のO氏が原告となり、大阪の坂口徳雄弁護士ら7人もの弁護団を組んで提訴している。

 訴状によると、「この裁判は、上場企業の役員達がファンドなどと連携して公開買付会社を実質上組織又は連携し、当該企業の既発行の少数株主の地位を剥奪することの総会決議の無効・取消という訴訟手段によりTOB=MBO(経営陣買収)のあり方を問う裁判である」とある。

 訴状の内容は専門的で難解なので、筆者が批判を覚悟で少々乱暴に意訳をすると同時に、Y氏の説明とも合わせて要約すると、その主張の要旨はこうなる。

 まず、吉本興業は、外部の投資会社であるクオンタム・エンターテインメントが行ったTOBと連携する形で、吉本経営陣と対立していた創業家で大株主だった林氏らを技術的に少数株主としたという。それで、TOBに応じなかったY氏とO氏の2人を含む残りの少数株主と合わせて、株を強制的に買い上げる形で株主の権利を取り上げたという。

 原告が最初に問題だと指摘しているのが、今回のTOBが純粋に第三者によるものではないことのようだ。

 というのも、TOBの成立後、吉本の主要な経営陣は、クオンタムの代表取締役などとなり、今後、発足させる新生吉本興業の経営も引き続き行うことが、上限1億円という高報酬とともに事前に決まっていたというからだ。つまり、今回の流れを振り返ると、実際に行われた行為は、吉本の経営者がクオンタムらを巻き込んで、自社株を市場から集めて非上場化したMBOだったと指摘しているのだ。

 そして、原告側は、この「TOB=MBO」を行う過程で行われる少数株主の権利を剥奪する法的手法について、今の会社法には特定の条件や制限こそ明記はされていないものの、その法案の審議過程までさかのぼり、法の主旨まで検証した結果、それが許されるのは、たとえば破産状態にある企業が100%減資を行うような”特別な理由”が必要なはずだと訴えている。

 Y氏は「吉本は経営自体は順調ですから、自分たちに反対する創業家を排除したいという現経営陣の都合だけで行われたんです」と指摘するが、結局、少数株主の強制排除が許される”特別な理由”はなかったと言いたいわけだ。

 さらに、訴状は、ファンドが1株1,350円で株を買い取るが、その価格も100年に一度と言われるリーマンショック後の短期間の価格を基準としているほか、一般の株主には知らされていない吉本の今後の事業計画といった非公開情報にも基づいて算定されていると指摘。その決定の過程が不透明で、買取額が不当に安いとも訴えている。

 Y氏は「たとえば、会社の経営者であれば、特定の時期に不良資産の整理などを集中したりして、意図的に決算を赤字することもできる。もし、そうして株価を下げてから、今回のようなことをすれば、安く会社を非上場化できてしまう。その後、数年してから再上場でもすれば、TOB=MBOに協力した特定の出資者や株主だけが大儲けできる。今の会社法は、そうした行為を防げないことになる」と説明するのだ。

 本来、経営者は既存の株主の利益を最優先すべきだが、たしかに今回のケースでは、吉本の現経営陣とクオンタムが綿密な協力関係にあるのは間違いなく、一般の株主の意向がほとんど無視されている傾向がみえなくもない。

 そして、Y氏は「今のように株価が下がっている時期には、会社の発行株式の時価総額が、会社の総資産を下回る企業も増えている。もしも、吉本のやったことがすんなり認められてしまうとしたら、そうした企業が同じようなことをしやすくなる」ともいう。

 とはいえ、それが施行された意図はともかく、現在の会社法に、こうしたTOBを明確に制限する記述などがないと言うことなので、裁判で原告が勝てるかどうかは、素人にはまったく分からない。

 だが、弁護団の代表を務める坂口弁護士は、自身のブログにこう宣言している。

「原告達は、吉本の経営陣のやり方に納得できず、株価が低いという不服申立ではなく、真正面から吉本的TOBの在り方を株主総会の議決の無効、取消という手段によって争うものである。株主・弁護団はトコトンMBOの在り方を争う予定」

 一方、O氏は1月の臨時株主総会の後で、筆者の取材に対し、自身がM氏の関係者であることを認めたうえで、「Mさんは、もうこの件にはかかわっていませんよ」などと話していた。だが、吉本の内情を良く知る関係者は、こう話している。

「たしかに今回、O氏は個人的に訴訟を起こしたのかもしれない。けれども、こちらとしては、とてもそうは思えない。M氏の意向に沿っているものと考えざるを得ないので、当然、吉本は裁判で争うことになる」

 大株主だった林一族が排除されたことで、一度は収束するかと思えた吉本のお家騒動だが、今回、思わぬ形で続編の幕が開いたと言えそうだ。
(文=原田翔)

吉本興業の正体

肥大化の果てに……。

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最終更新:2018/12/10 19:17
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