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フィギュアをこよなく愛するアーティスト佃弘樹が語る「トイとアートの境界線って何だ?」

tsukuda02.jpg左から、南塚真史氏、佃弘樹氏、古屋蔵人氏、井口弘史氏。

 4月6日、東京・池尻大橋にあるPUBLIC/IMAGE.3Dで、アーティスト佃弘樹氏らによるトークショー『TALK4 TOYS -トイとアートの境界線-』が行なわれた。対談をしたのは、グラフィックデザイナーの井口弘史氏、佃氏が所属するギャラリーNANZUKA UNDERGROUNDのギャラリスト南塚真史氏、編集者の古屋蔵人氏。そして、舞台の目の前にずらりと並べられたフィギュアやソフビ人形、プラモの数々……。

 このトークは現在TOKYO CULTUART by BEAMSで開催中の、佃氏の個展『4010 NIGHT TIME』の関連イベントだ。佃氏はドローイングを中心に、ペインティング、立体などさまざまな手法を使って、ある独特な世界を描き出すアーティストで、『スターウォーズ』や『ブレードランナー』といった70~80年代のSF映画に登場する未来都市や宇宙戦争、アメコミ、そして日本のウルトラマンやガンダムなどに強く影響を受けつつも、まったく新しいソリッドでクールな光景に再構築した作品を作り出す。『4010 NIGHT TIME』では、彼が収集しているプラモデルやフィギュアを分解し再構築した100体のコラージュフィギュアが展示されている。

 トーク序盤は、佃氏と古屋氏、井口氏が出会ったアパレルブランド・FINAL HOMEのフリーペーパー「FINAL TIMES」の話から始まり、彼らが好きなフィギュアたちがどんどん紹介され、そして佃氏の作品の話へ。

4010_toys.jpg「4010 NIGHT TIME」

 「小さな頃、机の引き出しにフィギュアを隠し持っていて、親には勉強していると見せかけて、分解したりコラージュしたりしていました。基本的にはその当時と同じことをしています。スターウォーズの昔のフィギュアは、元型を作る時に日本のプラモデルをバラしたものをディテールに使っているという話を聞いたことがあって。それをまた俺がバラして、タミヤのパーツを付け足して……。もう輪廻転生のような状態(笑)。コラージュフィギュアは、作っているうちに手がどんどん慣れてきて、作品のレベルが上がってくる。そうすると、最初に作ったものとの差が出てきてしまった。なので、100個作った段階で最初の方のもののレベルを引き上げていきました」

tuskuda07.jpg佃氏が今回の作品制作に使用したパーツ
の数々。自身が好きなスターウォーズのフィギュ
アをベースに使っているものが多いという。

 マニアなら作品を見て、どこがどの模型のパーツで出来ているか分かるだろう。ガンダムに出てくるマ・クベの壺を持っているというレアキャラも紹介された。またフィギュアは、AFA(Action Figure Association)という、フィギュアの鑑定団体が使用しているアクリルケースと鑑定書を模したパッケージに入れられているというこだわりも。

  「いいオモチャとは何か?」。製造技術が発達するに従って、よりリアルで精緻な造形へと向かっていくフィギュアに対し、70~80年代に流通していたちょとユルいフォルムのもの、”パチもん”と呼ばれる海賊版のフィギュアなどに妙な愛着=「癒やし」を感じるという話も。

tuskuda08.jpg(上)ウルトラマンの怪獣「ザザーン」。/
(下)ダースベイダーのマグを例に。
同じダースベイダーで、同じ陶器の素
材でもまったく印象が違う。持ち主の
井口氏は、中央の少々間の抜けたのが
気に入っていると言っていた。

 彼らのフィギュアやグッズに対する考え方は、コンプリートするというマニア的な考え方とは少し違う。自分が好きなキャラクターを全部集めるのではなく、テイストが似たものを集めてみたり、同じフィギュアを並べてみたり、DJが曲をリミックスする感覚で、収集して、バラして、再構築して、ひとつの舞台に並べる。独自のコンテクストを作り出して、新しい楽しみ方を見出しているのだ。リミックスして自分なりの価値の見出す、その手法はアートにおけるキュレーションと繋がる部分もある。

 ギャラリストの南塚氏からは、「今までの社会になかった価値を生み出すのがアートの力。それをアーティストの力を借りて社会に提示していくのはギャラリーの手腕と言える。アートもトイも、価値は”クオリティと希少性”で決められる。その点ではあまり違いはありません。今、アートのオークション業界では、村上隆さんの作品の影響もありますが、フィギュアにも注目が集まっています」という話も。

tukuda09.jpg (上)『スターウォーズ』に登場する
イウォーク。中央にある槍を持ってい
るのが、近年発売された精工なもの。
少々怖い。左は80年代に出たもので
デフォルメされた姿がキュート。/
(下)井口氏が現在手がけている新商
品のサンプル。「自分の左手が大好き
だったおばあちゃんの顔に見えてきた」
と話すが、明らかに強烈なフォースを放っ
ている。

 トイとアートの境界線はありそうでなさそうだが、最も違う面は「1点もの」だということだ。佃氏の作品は、当たり前のことだが佃が手を動かして作った、情念が入った1点もの。そこからにじみ出てくる圧倒的なパワーは、残念ながら量産品からは出てこない。

 そんなこんなで、70~80年代のSFやアメコミ、フィギュアの話から現代アートの話まで多岐にわたって繰り広げられた約2時間はあっという間に過ぎていった。最後は、並べられたフィギュアのプレゼントも行なわれ、大盛況の会場は幕を閉じた。そんな佃氏の作品が生で見られるTOKYO CULTUART by BEAMSの展示は14日までである。
(取材・文=上條桂子)

・つくだ・ひろき
1978年、香川県生まれ。武蔵野美術大学映像学科卒業。ドローイングを中心に、ペインティング、立体などさまざまな手法で表現する。NANZUKA UNDERGROUNDに所属。09年アートフェア東京において、ベーコンプライズを受賞。

・佃弘樹「4010 NIGHT TIME」展
場所:TOKYO CULTUART by BEAMS(渋谷区神宮前3-24-7-3F)
開催期間:~4月14日(水)午前11:00~午後8:00
<http://www.beams.co.jp/labels/beams-arts/tokyo-cultuart.html>

PUBLIC/IMAGE.3D
<http://public-image.org/3d/>

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最終更新:2010/04/12 12:30
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