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「東京国際アニメフェア2010」レポート

【TAF2010】海外アニメファンの実態を違法動画視聴環境と現地アンケートから探る!!

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◆海外のファンは日本のアニメをどう摂取しているのか?

 東京国際アニメフェア(TAF)2010シンポジウムのレポート第2弾をお届けする。ネット上に日本のアニメがどの程度頒布されているのか。海外のアニメファンはどのような消費行動をとっているのか。3月26日に開催された「衝撃の実態 世界の人間は日本のアニメをどうやって知ったのか?」(主催:一般社団法人日本動画協会データベースワーキンググループ)は、文字通り日本アニメの海外での受け止められ方を白日のもとに晒そうというものだった。

 株式会社フロントメディア取締役の増田弘道氏を司会に、株式会社シーク代表取締役の森祐治氏、慶応義塾大学大学院の薄葉彬貢氏が登壇。調査結果を報告した。

◆違法アップロードという問題

 日本のアニメの市場が海外にもあることは分かっているが、それがどのくらいあるのか、正確には把握されていない。特にUGCサイト(動画投稿サイト)が普及して以降は、正式なライセンスを受けたDVDなどのパッケージや、ケーブルテレビ以外での「違法視聴」が激増し、ますます分かりにくくなっている。

 そこでNTTデータの協力を得て、「フィンガープリント技術」(指紋、声紋にあたる、個々の映像を特有の痕跡を手がかりに識別する技術)を用い、ネットに上げられているアニメ動画を検出する実験を行った。

 この技術はアメリカでも映画の違法アップロードを検出すべく実用化されている。複数の作品をマッシュアップした動画でも、それぞれの作品から何秒間使われているかがわかるというから、その精度はきわめて高い。

 この実験についての報告は森氏が担当した。

 モニタリング対象となるもののひとつはP2P(ファイル共有)。

「P2Pは非常にややこしくて、在り処がよくわからない。ネットの上でキャッシュされてしまっているので、いまからすべてのP2Pソフトを止めたところで、場合によっては手の施しようがないくらい、大変なことになっている」(森氏)

 BitTorrentやGnutellaなど日本でも使われているものも含め、欧米でメジャーなソフトを監視している。

 もうひとつはUGCサイト。YouTubeやVeohなど米国系、日本のニコニコ動画、中国のYoukuなどメジャーなサイトはすべてカバーしている。

 最後はCyberlockers。データを預かったうえで、場合によっては視聴やダウンロードも可能という、P2PとUGCサイトの中間的存在だが、これについても相当数をチェックしている。

 アニメの権利者が「指紋」を提供すれば把握が可能で、UGCサイトとCyberlockersについては再生回数のカウントもできる。削除依頼もオートマティックに行えるという。

 昨年12月20日から今年1月31日までのトライアル期間で、提出された「指紋」を検出したUGCサイトのコンテンツは2万5,350件。視聴数は2,874万1,814回に上る。この調査からは、現在放映中の最新作に人気があり、中国のサイトで多く閲覧されていることが分かった。

 中国に限らないが、日本アニメの流入が厳しく制限されている、あるいはアニメ販売意欲のない「不毛地帯」ほど、それが違法視聴をする動機になる。

「”観たいけど観られないから、ネットで観ちゃってる”という見方がないわけではない」(森氏)

 森氏は、日本での本放送とさほど時間をおかずして海外でも同じ内容のアニメを流す、マルチナショナルなサイマル放送の必要性について触れ、報告を終えた。

◆皮膚感覚で日本のアニメをヨーロッパのアニメファンがどう捉えているか

 次の報告は現地調査である。

 日本のアニメが「クールジャパン」の源泉として捉えられ、世界中で人気を博しているという風説はあるが、では消費実態はどうなのか──。このほど慶応義塾大学大学院を卒業した薄葉彬貢氏が、昨年11月4日から12月8日までのおよそ1カ月間、イタリア、ギリシャ、スウェーデン、スペイン、ハンガリーの欧州5カ国を歴訪。大学、出版社、コミックショップなどでアンケート調査をおこなった。

 調査対象地域を欧州にしたのは、海賊版が横行しておらず、かつアニメ関連商品を購入するだけの可処分所得があることが、もっとも大きな理由。さらにこの5カ国を選んだ理由としては、消費者行動調査の先例、先行研究がなく、アニメやマンガを消費している事実があることが挙げられる。イタリア、スウェーデン、スペイン、ハンガリーの4カ国については、JETRO(ジェトロ=日本貿易振興機構)からコンテンツ市場レポートが発表されている。またギリシャは『遊戯王』の大会を開催した実績のあるカードゲーム大国であり、アテネ市内に専門店が31軒存在することが理由となった。

 大都市在住のアニメ好きを自明のこととして話すファン(主に日本語学習者)に絞って調査を行ったが、1週間あたりのアニメ視聴時間は0~3時間が約半数を占めた。日本のオタクの視聴時間も1~4時間が約半数ということで、傾向としては日本も欧州も大差ない結果となった。

 では視聴環境はどうか。日本のようにテレビ放送が頻繁に行われているわけではないので、視聴手段はストリーミングとダウンロードに集約される。DVDを観る人間は圧倒的に少ない。

 イタリア、スペイン、ハンガリーはアニメ専門チャンネル・アニマックスが進出しているもののオンエア中のタイトル数は各15、21、31にすぎない。スウェーデンは有料動画共有サイト・クランチロールが進出しており、145タイトルを観ることができる。アニメの情報はインターネットのフォーラムで友人、知人から得ることが多い。

 視聴言語は英語字幕が多いが、大国のイタリアとスペインではそれぞれ母国語字幕で観るというファンもほぼ同数存在する。

 このような環境下で、海賊版とオフィシャルなディスク、放送・配信との区別は、明確にはついていないようだ。

◆いかに日本アニメを流通させるか

 視聴環境を問わなければ、アニメ視聴時間に関しては、欧州も日本に近い。薄葉氏の実感では、日本のオタクと同等に濃いアニメ話ができるファンはそう多くないようだったが、それでも日本アニメに対して興味を持つ人口は決して少なくないものと思われる。しかしアニメ・マンガに投下する小遣いの額に関しては、やはり日本人のほうが多いという結果が出た。

 日本はアニメ・マンガの発信地であるから当然だとも言えるが、この熱気の差を、薄葉氏は以下のように結論づけている。

「海外の現地企業が日本でやっているような販売促進努力を全て行った上で、アニメファンの消費行動が変わらなければ、それは消費者の側にアニメの消費が進まない原因があると考えられるが、調査結果をみる限り、海外における売上の減少は、現在の海外アニメファンがアニメを視聴するだけでそこから消費行動に移っていないのではなく、現地企業が取り組むべき課題や努力がまだ残っているためであると考えられる」(薄葉氏の研究論文「欧州における日本アニメファンの消費行動の実態」より抜粋)

 つまり商品の内容や特徴を記したPOPを掲示したり、特典をつけたり、カテゴリーごとに商品をまとめたりという、日本のショップなら当たり前の「やるべきこと」が、欧州ではやりきれていないのだ。

 欧州の日本アニメファンが本来持つ関心に見合った商品を供給するには、販売促進に意欲的な現地出版社に対し、日本のアニメ・マンガ専門店や出版社が提言を行い、より強力な流通・販売体制をとることが必要だと、薄葉氏は喝破する。

 これは映像コンテンツについても言えること。クランチロールやLTLSのように正式なライセンスを得て動画配信を行わなければ、本来課金できる海外の視聴者から視聴料を得られず、視聴者も観たいアニメを観られない、ということになる。

 海外でも日本の地方でも、違法動画を観る理由は同じだ。観ようにもその番組がオンエアされていない、または放送局の電波が入らない。さりとてパッケージは高すぎる。ゆえに、やむなく違法アップロードされたネット上の動画をチェックすることになっている。

 クランチロールが進出した地域では、違法動画の視聴数が下がったという統計が出ている。最新のアニメを安定して安価に配信する仕組みさえ整っていれば、ファンは喜んで課金に応じるだろう。

 視聴者の欲望と可処分所得に配慮した商品の供給ができるか否か。ここに来て、アニメ界にも有料配信に対する動きが目立つようになってきた。

 もちろん「体力」の問題はあるだろうが、日本を含む世界中のファンにアニメを浸透させるための新たな仕組み作りが急務であることは間違いない。

──登壇者──
日本動画協会データベースWG(ワーキンググループ)座長
株式会社フロントメディア取締役
増田弘道

日本動画協会データベースWGメンバー
株式会社シーク代表取締役
森祐治

日本動画協会データベースWGメンバー
慶応義塾大学大学院
薄葉彬貢

参考資料/慶応義塾大学院メディア研究科 学期末レポート 2009(平成21年)度 「欧州における日本アニメファンの消費行動の実態」薄葉彬貢
(取材・文・写真=後藤勝)

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最終更新:2010/04/07 15:00
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