海外で明るい逃避生活を始めよう! 誰でも出来る『バンコクで外こもり!』
#海外 #本 #タイ
タイの首都バンコク。
この街は旅の出発地点・中継地点として、常に世界中のバックパッカーであふれている。その理由は、世界中へのアクセスの良さ、そして”カオサンロード”と呼ばれる、アジア一の安宿街があることが大きく影響している。全長200mほどのこの通りには、1泊たった数百円で泊まれる宿、1食100円でおつりが戻る屋台、旅行代理店、両替屋、インターネットカフェ、マッサージ店、さらには、セブンイレブンなどのコンビニまでが存在し、その便利さ、居心地の良さはピカイチ。
そして極めつけは、タイ人の笑顔。精神的に疲れ、何もせず長期間滞在していようが、無職でふらついていようが、「何してるの?」なんて疑問は一切投げかけず、ただひたすら温かく迎え入れてくれる。こんな国民性が、心を病んだ多くの日本人をタイへと向かわせる、ひとつの大きな理由であろう。しかし、それが昨今、社会問題として取り上げられるようになっている。
「外こもり」という言葉を知っているだろうか。
ざっくりと説明すると、日本国内ではなく、タイやカンボジアなど物価の安い国で、安宿やアパートに長期滞在し、観光や勉強をする訳でもなく、引きこもり的な生活をして過ごすこと。おもな収入源は日本でのアルバイトで、数カ月間だけ集中的に働き、残りの期間は海外での生活となる。
海外に興味がない人には、本当にそんな日本人がいるのかと驚かれそうだが、現実問題、日本を脱出し、飛び立って行く人が後を絶たない。バックパッカー界の重鎮、作家の下川裕治氏も、『日本を降りる若者』(講談社現代新書)で、その現状を記している。
日本の社会でまじめに働く会社員ならば、「贅沢なご身分で」と、嫌味のひとつも言いたくなるのかもしれない。けれど、一度でもバックパックをかつぎ、タイを訪れたことがある人には、「居心地が良すぎて抜け出せない」という状況は、どこかで理解してしまうのではないだろうか。
『バンコクで外こもり!』の著者・皿井タレー氏は、5年間の会社勤めの後に、日本社会と別れを告げ、バンコクに住み続けて数十年になる。本人曰く、”早すぎた外こもり”の端くれとして、「外こもりはネガティブなことばかりではない」という気持ちを込め、今回、外こもりに興味がある人への案内本を書くことを決断する。
日本社会で外こもりの存在は、冷ややかな視線で見られがちだが、バンコク在住者として、別の視点で考える。
失業、離婚、いじめなど、日本社会に居づらくなった人が、逃避先、一時避難所として外こもりを選ぶのは有効ではないだろうか、と。
「いずれは、終身雇用なんのその、日本にずうっといることや日本国内で頑張り続けることがほとんど意味を持たなくなり、誰もが手軽な気分転換として、中・長期の海外逃避滞在を楽しむ時代が来るんじゃないか?」(本文より)
過去最高の失業率を記録し続ける日本。いつ何時、自分が「外こもり」に参加することになるかは、分からない。本書には、いくらあれば外こもれるのか、語学やビザの問題、世にもくだらない娯楽情報、近郊のレジャースポットなど、実際に現地で暮らす住民ならではの具体的な情報がびっしりと詰まっている。これを読めば、ひとりで海外で暮らすなんて、簡単なことに思えてくる。
日本の社会に息が詰まる。もう、耐えられないかもしれない。そんな人がいたら、逃げ道を作っておくのもひとつの手ではないだろうか。それを実際に実行するのか、どれぐらいの期間にするかは、あなた次第。
(文=上浦未来)
●皿井タレー(さらい・たれー)
1996年末に渡タイし、5年間の会社勤めの後、フリーに。フリーすぎるバンコクでの日々は『バンコクジャパニーズ列伝』(双葉社)、『まろやかタイ読本』(太田出版)などの著書に綴られている。近況や連絡先はブログ「メイドインタイランド」(http://www.geocities.jp/saraibkk/)でチェック。
日本より楽しそう。
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