「何か問題でも?」と開き直る”路チュー委員長”中井洽氏に「新潮」が肉薄
#雑誌 #出版 #元木昌彦 #週刊誌スクープ大賞
●第38回(3月24日~3月29日発売号より)
第1位
「『中井洽国家公安委員長』が深夜の宿舎に呼び込む傾国の『美人ホステス』」(「週刊新潮」4月1日号)
第2位
「プラダの『セクハラ上司』」(「AERA」4月5日号)
第3位
「白バイ事故でわかる警察が『被害者』を『加害者』にする手口」(「週刊朝日」4月9日号)
340円と400円。「新潮」と「現代」の定価である。その差60円だが、「新潮」は本文とグラビアを含めて166ページ、「現代」は226ページで、ふんだんにカラーグラビアがあり、今週は沢尻エリカのセクシー特集も拝めるから、内容はともかくとして、お得感はある。
それにしても、私が「現代」をやっていたのは13年前になるが、そのときの定価は300円だった。そこから100円値上がりしているが、400円というのが週刊誌の定価の上限だろう。
さて、今週の3位は、「朝日」お得意の警察批判である。ジャーナリストの柳原三佳氏は、起訴率にも官民格差があるという。『犯罪白書』や法務省刑事局提供のデータをもとに計算したところ、「1998年の交通関係業過(業務上過失致死・傷害または重過失致死罪)における正式起訴率は全体では0.79%だが、公務員では0.07%と11分の1にすぎなかった。02年で比べても公務員の正式起訴率は、民間人を含む全体の4分の1だった」(柳原氏)というのだ。
また柳原氏は、「この裏側には、警察や検察が、『調書の非開示』を盾に、意のままに捜査結果を操れるという恐ろしい現実が隠れているのではないか」という疑問を呈する。
元バス運転手の片岡晴彦さん(56)は、今年の2月23日に禁固1年4カ月の刑を終えて出所した。位
その事故は、06年3月3日午後2時34分に、高知県春野町の国道で発生した。
その日片岡さんは、卒業遠足を楽しむ中学3年生22人と引率者が乗車したバスを運転していた。レストランで食事をした後、バスは駐車場を出て一時停止し、右折しようと交差点の中央まで進んで、左右の車が途切れるのを待つために停止していた。そこに、高知県警交通機動隊の白バイが突然、バスの右前角に衝突したのだ。
白バイ隊員は即死したが、バスに乗っている人間に怪我はなかった。しかし、片岡さんは、「バスが安全運転を怠って国道に出て白バイをはねた後、急ブレーキをかけて、倒れたバイクを3メートル引きずった」として、逮捕されてしまうのだ。
片岡さんは、検察の取り調べのなかで、警察が実況見分調書に、自分が知らない黒々とした2本のスリップ痕の写真をつけていたことを知る。バスを止めていたという彼の言い分を、裁判所は聞こうともしなかった。
バスに乗っていた生徒も、事故当時、乗用車を運転してバスのすぐ後ろにいた中学校の校長も、衝突のときバスは間違いなく止まっていたと証言したにもかかわらず、執行猶予もつかない禁固刑が確定してしまったのだ。
これと酷似したバイク事故は愛媛県でも発生していた。長男が白バイとの衝突事故で重傷を負ったにもかかわらず、業務上過失傷害罪で書類送検され、高裁で「原判決には重大な事実誤認や処分の著しい不当がある」として差し戻され、ようやく「無罪」を勝ち取った山本純子さん(41)はこう語っている。
「(中略)警察が作った調書類を見て、そのからくりがわかりました。でたらめな鑑定書や捜査報告書で事故状況をつくり上げ、それを検察官や裁判官も鵜呑みにして、息子を非行少年に仕立て上げたのです」
警察は、仲間の処分を軽くするだけではなく、警察組織としての責任を逃れるという大きな目的が存在するのかもしれないと、筆者は批判しているが、この国の歪んだ司法の一端が浮かび上がるいいレポートだ。
メリル・ストリープに『プラダを着た悪魔』という名画がある。「AERA」の記事は、本家の日本法人「プラダジャパン」で、セクハラを受けたと訴えている女性の話である。
自分の写真まで出して訴えているボヴリース里奈さん(36)は、人事部長からいきなり、社長からですと前置きして、清潔感に欠けるから髪の色を変えるように求められた上、もう少しやせてほしいといわれ、退職を迫られたのだという。
彼女によると、社長のダヴィデ・セジア氏は、一緒に国内店舗を視察していたときにも、会ったばかりの従業員について、「顔がいや」「鼻が変」「体型が悪い」「笑い方が嫌い」と評し、「クビにしろ」という意味の「消して」といったという。
人事部長からは、「君の醜さが恥ずかしい。イタリアからの来訪者には、君を絶対会わせたくない」とも言われたそうだ。いやはやここまで言ったとなれば、立派なセクハラ、パワハラだと思うが、写真を見る限り、彼女は十分魅力的だ。
彼女によると、売り上げを上げるために、従業員にプラダの商品を強制的に買わせることも指示していたという。「AERA」が元店長たちにインタビューすると、「売り上げが悪いので、今日中に春夏物商品を15万円分買うように。来月の給料と一緒に15万円を払い戻す。これは店長と副店長限定なので、他の従業員には気づかれないように」と言われたという。
だが、3月の労働審判では、証拠不十分として申し立ては却下されてしまった。それを機に会社側は、彼女を解雇したが、部長としての地位の確認と、年収相当の慰謝料を求めて訴訟を継続していくという。ブランドファッション業界の暗部を垣間見せてくれる記事である。
今週のグランプリは文句なく「新潮」である。国家公安委員会とは、国民の良識を代表する者が警察を管理することにより、警察行政の民主的管理と政治的中立性の確保を図ろうとするものだそうだ。だとすれば、この御仁が、この委員会の長に相応しくないこと、自明であろう。
中井氏の奥さんは、嫁姑問題や亭主の遊び癖に悩んで、平成10年に自殺してしまったそうで、独身の68歳になる中井氏は「老年を謳歌」している。
30代の銀座ホステスと夜な夜な、焼き肉屋や手打ちうどん屋で食事し、カラオケなどに興じた後、赤坂の議員宿舎に仲良く戻る。それから2時間ぐらいすると、こっそりと彼女一人でご帰還になるのを、「新潮」は何度も「目視」している。
3月9日には、凍えるような雨の中で、彼女が「ブーツのかかとを軽く上げて自分の顔を中井氏の顔に近づけた」(同)瞬間をバッチリ激写。
中井氏は防災担当大臣という重責にもあるのだが、3月14日に発生した福島県沖を震源とする震度5弱の地震のときも、彼女と二人で映画『シャーロック・ホームズ』を見ていた。映画館deデートはまだいいとして、終わってからも、職務を放棄して、二人で整体院に行き、その後も、焼き肉屋、カラオケスナック、そして赤坂宿舎へと消えたのだ。
彼女に、宿舎に出入りする際必要なカードキーを貸与していたことやら、銀座から赤坂へ移動するときに白タクを使った疑惑まで書かれている。万事休す、議員辞職間違いなしと思っていたところ、この人の粘り腰は、想像を超えるものだった。
会見で、「(平野官房長官に呼ばれて)進退についての話は出なかったのか」という質問に、「全然出ません。思ってもみません。職務に精励します」。
路上で女性とキスしているような写真が掲載されたことについても、「路上で女性とキスしたことは1回もない。僕らの世代では恥ずかしくてできない」と真っ向から否定した。
女性にキーを渡したことについては、週に一回、部屋の掃除をしてもらうためだと抗弁したのだ。深夜に、どこを掃除してもらっていたのか。
おまけに、辞任する気はないかとの問いに、「何か問題ならはっきり言ってください」と開き直る始末。
こうした一般的な良識も、重責に対する責任感もない人間を大臣に据えた鳩山由紀夫首相の責任は大きい。自らが「政治とカネの問題」を抱えているために、違法献金問題で会計責任者らが起訴された小林千代美衆院議員の処分もできず、また今回のていたらくである。
それにしても老舗週刊誌「新潮」の底力、恐るべしである。
(文=元木昌彦)
●元木昌彦(もとき・まさひこ)
1945年11月生まれ。早稲田大学商学部卒業後、講談社入社。90年より「FRIDAY」編集長、92年から97年まで「週刊現代」編集長。99年インターネット・マガジン「Web現代」創刊編集長を経て、06年講談社退社。07年2月から08年6月まで市民参加型メディア「オーマイニュース日本版」(2006年8月28日創刊)で、編集長、代表取締役社長を務める。現「元木オフィス」を主宰して「編集者の学校」を各地で開催、編集プロデュースの他に、上智大学、法政大学、大正大学、明治学院大学などで教鞭を執る。
【著書】
編著「編集者の学校」(編著/講談社/01年)、「日本のルールはすべて編集の現場に詰まっていた」(夏目書房/03年)、「週刊誌編集長」(展望社/06年)、「孤独死ゼロの町づくり」(ダイヤモンド社/08年)、「裁判傍聴マガジン」(イーストプレス/08年)、「競馬必勝放浪記」(祥伝社/09年)、「新版・編集者の学校」(講談社/09年)「週刊誌は死なず」(朝日新聞社/09年)ほか
まだまだ現役!!!
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