アーティストの卒業式ライブが激増 背後に見え隠れする音楽業界の思惑
#音楽業界
思い出深い学び舎を去る惜別と新たな生活への期待に胸を膨らませながら、行われる卒業式。最後のホームルームでの担任の教師からの言葉に涙腺を緩ませた記憶のある人も多いだろう。
そんな誰もが経験する卒業式に人気アーティストの出演が相次いでいる。徳島県美馬市立岩倉中学校でファンキーモンキーベイビーズが「お忍び卒業式ライブ」を行ったほか、谷村奈南、西野カナ、flumpool、福田沙紀、BENIなど、人気歌手がこぞって各地の卒業式に出演し、ライブを披露している。ある音楽雑誌の編集者は次のように明かした。
「卒業式ライブで伝説の残したのはGACKT。2006年、神戸市の県立舞子高卒業式にサプライズで参加し、この日のためにつくったバラード『野に咲く花のように』を披露しました。実は、Gacktのラジオ番組にその学校の男子生徒が『自分の在籍する環境防災科が定員割れの危機にあるため応援してほしい』と相談。その際Gacktが『学科の意義や魅力を自らの手でアピールする活動を興してみては』と提案し、定員割れを防ぐことができたら卒業式に行くと約束。その後、学科の志望人数が定員を上回り、GACKTが『約束は果たしたからな』と卒業式に出演。歌い終えたGACKTは『夢は見るものじゃなく、叶うもの。叶えるために強く意思を貫くこと。君たちの未来に期待します』とメッセージを送りました。さらにGACKTは過去に合計4回ほど各地で卒業式ライブを行っています」
GACKTの「野に咲く花のように」は07年2月に発売し、NHK『みんなのうた』にも起用されてヒットとなった。この一件以降、卒業式ライブは増加の一途をたどっている。前出の編集者は次のように分析する
「卒業式でサプライズライブを行うと、とにかくマスコミの食いつきがいいようですね。単なるイベントライブだとスポーツ紙でもベタ記事ですが、卒業式ライブだと、一般紙でも取り上げてくれる上、ニュース番組でも取り上げられることもある。しかも、感動の卒業式を演出することで、アーティストとしてのイメージも良いですからね。壊滅的なCD不況で未来が見えない音楽業界の中、こんなオイシイPR方法にレコード会社は乗らない手はない。その上に、訪れた先の学校の生徒、教師もCDを買ってくれるでしょうし、そこから火が着けば、教科書に載る可能性もある。定番曲となれば、まさに『1曲だけで一生食える』世界ですからね。卒業式ライブはアーティストにとってはメリットだらけのプロモーションの場です」
レミオロメンの「3月9日」、ボーカロイド・初音ミクに歌わせてニコニコ動画にアップし、話題を呼んだabsorb「桜ノ雨」、NHK全国学校音楽コンクールの課題曲となったアンジェラ・アキの「手紙~拝啓 十五の君へ~」、同じく同コンクール課題曲のいきものがかりの「YELL」などなど、近年、卒業式の新たな定番曲も生まれている。今年も、AKB48の「桜の栞」、北乃きいの「サクラサク」、湘南乃風の「ガチ桜」など桜ソングが発売されたが、新たな卒業式の定番となる曲はあるのか? 音楽業界の卒業式ビジネスは今後も増加しそうだ。
(文=本城零次)
『裸の大将』、じゃないほう。
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