“小栗旬の後見人”山本又一朗が明かす『TAJOMARU』の過剰すぎる舞台裏!!
#映画 #DVD #インタビュー #小栗旬 #山本又一朗
常に話題作を提供し続ける山本又一朗プロデューサー。
通称”マタ・ヤマモト”として海外でも知られる日本映画界の名物プロデューサーだ。
時に映画は、スクリーン上で奏でられる物語以上に、バックステージで繰り広げられる人間ドラマが刺激的だったりする。時に映画は、劇中のキャラクター以上に、映画製作者の尋常ならざる情熱に惹き付けられてしまう。映画プロデューサー・山本又一朗の行くところ、彼が放出するエネルギーのほとばしりによって、次々と伝説が産み落とされて行く。 大傑作『太陽を盗んだ男』(79)を世に放っただけでなく、同時期には20代の若さで10億円の小切手を手に渡仏し、実写版『ベルサイユのばら』(79)を名匠ジャック・ドゥミ監督に撮らせている。20世紀フォックスの契約プロデューサー時代には、犯罪ドキュメンタリー映画『アメリカン・バイオレンス』(81)の製作中にKKKに命を狙われ、カンヌ映画祭最優秀芸術貢献賞受賞作『Mishima』(85)は右翼の街宣車による妨害に屈することなく作品を完成させた。近年は『あずみ』(03)や『クローズZERO』(07)といったヒットシリーズの仕掛人として、また小栗旬が所属する芸能プロダクションの代表取締役として辣腕をふるう。怖いもの知らずの山本又一朗プロデューサーだが、小栗主演の大型時代劇『TAJOMARU』の舞台裏は「もう少しで発狂するところだった」と打ち明ける。ひとりの映画人の痺れるような生き様を伝えよう。
──お話をお伺いするのを楽しみにしていました。以前、北村龍平監督が、山本又一朗プロデューサーのことを「ボクを『あずみ』の監督に抜擢し、メジャーに引っ張り上げてくれた恩人。でも、編集中は何度『ぶっ殺してやる!』と思ったことか」と明るい笑顔で語っていました。編集を巡って、監督とはさんざんやり合うそうですね。
ンジした『TAJOMARU』。人気絶頂の
小栗旬が、松方弘樹や萩原健一ら重量級のベテ
ラン俳優たちと火花を散らすアクション時代劇
なのだ。(c)2009「TAJOMARU」製作委員会
山本又一朗(以下、又一朗) ハハハ、龍平らしいね(笑)。ボクは一緒に仕事をする監督には最初に言いますよ。いい作品にするために、お互いにプラスになることはどんどんやっていこうと。ダメな部分は指摘し合おうと。撮影に関しては、ボクは現場で口出しはせず、監督の好きなように撮らせています。でも、編集は映画を仕上げる最終段階。ボクもどんどん手を入れますよ。よりメジャーな作品として、より多くの人たちに受け入れられるようにするにはどうすればいいのか? 当然ボクにも意見がある。でも、個人的な嗜好性で編集するということは一切しません。あくまでも客観的な目線です。監督たちとは編集を巡って意見がぶつかり合うことがあっても、みんな最終的には納得してくれますよ。徹底的に話し合うんです。作品を観客に「面白い!」と言ってもらいたい。その一心ですから。必ず通じるんです。
──作品に対する最終的な責任は、監督ではなくプロデューサーが負うということですね。
又一朗 映画の創り方は色々ありますが、ボクのやり方も一つの典型です。企画のイニシエイターというか、何を創るかという最初の発想から、長い時には7~8年もかけて企画を温め、脚本の準備を進めるんです。それから配給会社に話をして、出資者からお金を集め、キャスト、そして監督を決めていく。つまり作品の一切を、企画から興行まで取り仕切り関わっていくわけです。それに対し、監督が作品に関わっているのは、通常は編集作業も含めて8カ月くらい。「作品のことをいちばん理解しているのは、プロデューサーのオレなんだよ」という自負や本音があるんです。じゃあ、何で監督を雇うんだ? 自分で撮れば良いだろう……ということになるのだけれど、作品のレンジを広げるために、クリエイションの軸に自分とは違う視点を持っている監督の存在はやはり重要なんです。全く相容れないのでは困るけど、お互いの資質が異なれば作品が偏らず、よりワイドレンジなものになる。ま、そういう意味では意見がぶつかって当たり前。だから監督とは共に作品を創るという感じを大事にしているんです。それともうひとつ。監督するために撮影期間中、毎朝5時に起きなければならんなんて、想像しただけで卒倒する。オレにはとても起きれないよ(笑)。
──自分と違う考え方の人間と組むことで、仕事が面白くなると?
又一朗 そういうことです。映画っていうのはね、いろんな人間が集まって支え合わないと完成しないものですし、たくさんの人に劇場で観てもらわなくちゃ成り立たない。もちろん、「オレの撮りたい映画を撮る」という監督がいて、そういう個人的な映画があってもいいんです。でも、やるなら3,000~5,000万円くらいの予算でおやりなさいと。自分でお金を用意しなさいと。メジャー作品として、人様からお金を預かっておきながら、好き勝手はできませんよということです。お金を出してもらいながら「オレの才能に惚れてお金を出してくれたんだから、オレの好き勝手にやる」というのはあまりにも傲慢というものですよ。プロデューサーというのは、出資者や配給会社、映画の二次使用権を持つ人たちから信託されて任されているという責任があるんです。ボクは一切わがままは言いませんし、ボクが一緒に仕事する監督たちはみんないいヤツですよ。
(後編につづく/取材・文=長野辰次)
●やまもと・またいちろう
1947年鹿児島県出身。さいとう・プロダクションなどで劇画原作の修行を積んだ後、映画・テレビ業界へ。映画プロデューサーとして、オールフランスロケによる実写『ベルサイユのばら』(79)、皇居前での撮影を敢行した『太陽を盗んだ男』(79)、近藤真彦と中森明菜が禁断の共演を果たしたスピリチュアルムービー『愛・旅立ち』(84)、カンヌ映画祭で最優秀芸術貢献賞を受賞しながら日本未公開となった『Mishima』(85)などの衝撃作、問題作を次々と製作。近年は水島力也名義で『あずみ』(03)、『あずみ2 Death or Love』(05)の脚本も手掛けている。芸能プロダクション「トライストーン・エンタテイメント」の代表取締役でもあり、所属俳優・小栗旬を『クローズZERO』(07)、『クローズZEROII』(09)でスター俳優へと育て上げた。最新プロデュース作は、小栗旬の初監督映画『シュアリー・サムデイ』(今夏公開予定)。
TAJOMARU
原作/芥川龍之介 監督/中野裕之 脚本/市川森一、水島力也 プロデューサー/山本又一朗 主題歌/B’z 出演/小栗旬、柴本幸、田中圭、やべきょうすけ、池内博之、本田博太郎、松方弘樹、近藤正臣、萩原健一 発売・販売元/アミューズソフトエンタテインメント 通常版¥3,990円(税込み) 発売中
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