「どうしようもない感じがグッとくる」みうらじゅんの”修行”的映画鑑賞法
#映画 #本 #インタビュー #サブカルチャー #みうらじゅん
映画好きとしても有名な、みうらじゅんによる新刊『そこがいいんじゃない!みうらじゅんの映画批評大全2006-2009』(洋泉社)が発売となった。映画専門誌「映画秘宝」(同)での4年分の連載をまとめた批評本ということだが、取り上げた映画のラインナップを見てみると、『ごくせん THE MOVIE』『ホームレス中学生』『セックス・アンド・ザ・シティ』『チェケラッチョ!!』など、コアでカルトな映画を愛する同誌の読者層とは、少々ズレた作品ばかり。
なぜ、このような映画をわざわざ選び、観に行くのか。また、本のタイトルにある「そこがいいんじゃない?」とはどんな意味なのか、本人に話を聞いた。
――コアな映画情報に定評のある「映画秘宝」の連載としては、映画のラインナップに違和感がありますが。
みうらじゅん氏(以下、みうら) ”大丈夫な映画”っていうのは、「映画秘宝」にちゃんと載ってますから、そっちの記事を見ればいいわけで。僕の連載では、「映画秘宝」が取り上げないような、「映画秘宝」読者が”観たくない映画”を頑張って観るようにしました。修行だと思って。
――なるほど(笑)。本のタイトルにある「そこがいいんじゃない!」とは?
みうら 当然、”観たくない映画”を観る時に必要な呪文です。「ああ、キツいな~」と思っても、「そこがいいんじゃない!」を唱えれば、どんなことでも肯定していける。密教以来の呪文ですね。
――”観たくない映画”というのは、事前に内容を調べて判断されるんですか?
みうら 全く調べないです。タイトルだけで臭いを嗅ぎ分けてます。キツい映画って、タイトルからしてプイ~ンと来るじゃないですか。『チェケラッチョ!!』とか、タイトルからして絶対寒いに決まってると思いました。
――『チェケラッチョ!!』(市原隼人主演)は、本の中でも「鳥肌映画」と紹介してましたね。
みうら 陣内孝則さんが「チェケラッチョ!!」ってやるシーンが、たまらなく寒いんですよ。みんな「俺は酔ってもこれだけは言うまい」と思ってることって、何個かあるじゃないですか。それを堂々とやってる人を大画面で見せられちゃ、演技とはいえ鳥肌も出ますよ。
――ちなみに、映画を観に行く時に心掛けていることはありますか?
みうら 平日の朝一ですね、やっぱり。朝一の「銀座シネパトス」とか行くと、ものすごいダメな感じの人たちに参加した気がして。そのどうしようもない感じが、またグッときていいんだよね。
――ところで、今回の本では、映画の批評コラム以外に、生前に行われた故・水野晴郎さんとの対談も収録されていますね。今、水野さんを思い返してみていかがですか?
みうら 僕、今でも夜道とか歩いてる時、わりと水野さんとしゃべるんですよ。
――チャネリングですか!?
みうら そうですね。僕、だんだんおかしくなってきまして、亡くなった数人と交信が取れるようになりましたんで。
――ちなみに水野さんとはどんな会話を?
みうら 水野さんはあっちで『シベ超』(「シベリア超特急」シリーズ)の新作を書いてるっておっしゃってましたね。生前、水野さんから『シベ超』出演のお誘いを頂いてたんですが、毎回お断りしてたので、僕があっちに行った時は出なきゃいけないなと思ってます。
――いよいよ『シベ超』に出演なさるんですね。
みうら ええ、あっちでね(笑)。
――実は、これから公開される映画のタイトルリストを持ってきたのですが。この中に、題名だけでプイ~ンと臭う作品はありますか?
みうら おっ、見せて。(タイトルを眺めて)『マイレージ、マイライフ』っていいねえ。タイトルがダサい(笑)。
――ジョージ・クルーニー主演のコメディー・ドラマだそうです。
みうら ジョージ・クルーニーの映画かあ。じゃあ、僕が行かなくて大丈夫ですね。きっと面白いでしょ。これ、原題もこんなにダサいのかなあ。
――原題は『Up in the Air』だそうです。
みうら やっぱりねえ。僕を引っ掛けようと思ってこの邦題にしたんですね。……あ、この『誰かが私にキスをした』っていうのキツそうですね。
――掘北真希と松山ケンイチ主演のラブストーリーだそうです。
みうら 誰かが私にキスをしたなんて、普通キスされたら分かるじゃないですか。でもそれをワザと言ってくるところに修行の臭いがしますね、この映画。じゃ、次は『誰かが私にキスをした』を観ることにします。
(取材・文=林タモツ)
そこがいいんじゃない! みうらじゅんの映画批評大全2006-2009
いいんじゃない?
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