「想いが通じ合う瞬間が好き」バッドボーイズ・清人 ベビーフェイスの横顔
#お笑い #インタビュー
元暴走族総長でリーゼントがトレードマークの佐田正樹と、元連絡隊長の清人によるお笑いコンビ・バッドボーイズ。最近はAKB48が出演中のバラエティー番組『AKBINGO!』(日本テレビ)のMCとしてもお馴染みの2人だが、昨年は佐田の自伝小説『デメキン!』(ワニブックス)が出版され、漫画化されるほどの大ヒットを記録。それに続くように今年、相方の清人の初著書『ダブル★ピース』(同)も発売された。
隣にいる佐田の強烈なインパクトに、ついキャラが隠れがちな清人だが、今回行ったインタビューを通じ、そのベビーフェイスの裏に隠された人情味溢れる魅力を思い知ることとなった。
――『ダブル★ピース』は、笑いあり涙ありの”青春リアル自伝小説”ということですが、執筆に至ったきかっけを教えてください。
清人 相方の佐田が、よく楽屋で「最近、生活が苦しい」と言っているので、ちょっと本でも出そうかなと。
――え?
清人 佐田は最近、広い部屋に引越しもしましたし、「車が欲しい」と言って、僕の隣で車の雑誌を広げたりするので。そんな相方の手助けになれば
と……。
――えーっと、あの……。さ、佐田さんとの出会いのエピソードも書かれていますが、本を読んだ相方さんの反応はいかがでしたか?
清人 僕が原稿を書いてる段階から、すぐ「見せて見せて!」って来て、読ませたら横で勝手に目頭熱くなったりしてたんで、ちょっと気まずい感じでしたね。
――(笑)。『ダブル★ピース』は、清人さんの結婚式の日に発売されたことも話題となりましたが、当然、奥様も読まれたんですよね?
清人 嫁は外国人なんで。
――話が進まないので、ウソばっかつかないでくださいっ!
清人 ふふ……。
――(気を取り直して)本には、清人さんが目の見えないおばあちゃんのために、さまざまなサポートをされていた様子が描かれていますが、当時は何が一番大変でしたか?
清人 買い物ですね。学校から帰ると、毎日ばあちゃんの手を引いて買い物に行かなきゃいけなかったので、遊べなくて辛かったです。
――複雑な家庭環境の中で、いろいろなことを我慢してまでも、家族のために頑張れたのはなぜですか?
清人 ばあちゃんがいたからじゃないですか? 僕が一緒に買い物に行かなくなると、ばあちゃんがシュンとして悲しい顔をしよるんです。あの顔見たら、誰でも「俺、間違ってんのかな」ってなると思う。また上手いんですよ、そのいじけっぷりが(笑)。やっぱ、ばあちゃんがいなかったら、遊ぶの我慢してまで頑張れなかったでしょうね。
――ちょっと、ものすごくいい話じゃないですか! ちなみに最近は、おばあちゃんには会えていますか?
清人 今は福岡の老人ホームにいるんですが、最低でも3カ月に1回は顔出してます。でも、リハビリの講習会や、お遊戯会なんかもあるんですけど、それにはなかなか参加できてないですね。なるべく行くようにはしてますが。
――清人さんが会いに来てくれて、おばあちゃんもうれしいでしょうね。
清人 最近はもう、エンジンがかかるまで何が何だか分かってない感じで。最初は「俺、誰か分かる?」って行っても「分からん」て。でも、笑いに関しては昔みたいにまだ敏感で、「ばあちゃん、チンパンジーみたいな顔してえ。昼のエサ食べた?」とか言うとキャッキャッて笑うんで、そこはすごいなと思いますね。
――ああ、いいお孫さんで……。本の最後は、福岡から上京するために、清人さんがおばあちゃんに別れを告げるところで終わっていますが、続編を書きたい気持ちはありますか?
清人 機会があったら書きたいですね。こっから先の家族の堕落っぷりがすごいんですよ。まず親父が無職になりますし、一緒に住んでたのり兄ちゃん(叔父)が行方不明になったり、母親が30年ぶりに出てきたり……。『渡る世間は鬼ばかり』みたいな家族模様が、もう一展開あるんで。
――無職の父親には、いまだに仕送りをされているとか。
清人 してますねえ。でも今は、ばあちゃんの老人ホーム代も僕が払ってるんで、気持ち程度の額ですけどね。
――偉過ぎます……。そういえばご結婚に続き、4月には初のお子さんが誕生するそうですね。どんな風に育てていきたいですか?
清人 できれば”家にお金無いアピール”がしたいですね。貧しさの中で、一生懸命働いている親の背中を見せたいので。
――それはなぜですか?
清人 ドキュメンタリー番組なんかで、外国の農村地の子どもが「両親を楽にするために、将来は大学へ行くの」とか言ってるのを見た時に、何が違うんやろって思うんです。それって、親父が泥んこで帰って来るのを見てるからじゃないかなって。
――でも芸人て汚れないですよね……。
清人 そうなんですよ。芸人って全然泥付かないんですよ。しかもテレビとかでおちゃらけてるように見える仕事じゃないですか……。だからそこを子どもにどうアピールしていこうかと悩んでます。
――清人さんは、古き良き人情みたいなものを大事にされてるんですね。
清人 ああ、好きかもしれないですね。例えば、立ち呑み屋で、知らないおばちゃんとかと話してて、想いが通じ合う瞬間が好きなんですよ。最初に『ダブル★ピース』を書こうと思ったのも、知らない人とお酒を呑みながら自分の昔話とかをする時に、「これ読んでもらったら短縮できるな」っていう感覚で。だから、この本を読み終わった知らない人と、一緒に呑みに行きたいですね。
(取材・文=林タモツ)
●バッドボーイズ・大溝清人 (ばっどぼーいず・おおみぞきよと)
1978年、福岡県生まれ。96年、暴走族時代の”総長”だった佐田正樹とお笑いコンビ・バッドボーイズを結成。02年より東京に拠点を移し、08年より『AKBINGO!』(日本テレビ)レギュラー出演中。
ほんといいヤツ。
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