因縁と血飛沫のカーニバル「不良の格闘技」戦士たちの魂の叫びを聴け!
#格闘技 #前田日明 #THE OUTSIDER
喧嘩上等! 一触即発!──リングス・前田日明主催の不良系格闘技「THE OUTSIDER(ジ・アウトサイダー)第10戦」が14日、東京・ディファ有明で開催された。看板選手が軒並み不在の今大会だったが、怖さと面白さは相変わらず。懲役上がりの喧嘩屋が格闘エリートを下す番狂わせや、遺恨ある選手同士の接近遭遇、大物不良の初参戦など、アウトサイダーならではのスリリングな展開が続発した。各試合の経過と結果は多媒体の報道にお任せして、日刊サイゾーでは、ひときわ存在感のあった選手の言動をクローズアップしよう!
“軍鶏”
江田雄一(東京・29歳)
ついに、この男が帰って来た! 前回の初出場時は「懲役6年、ストリートファイト無敗」という経歴にふさわしく、まさに”軍鶏”を彷彿とさせる喧嘩ファイトを展開。試合には敗れはしたものの、鮮烈な印象を残した江田。
それから1年4カ月のブランクを経て、今回再びアウトサイダーのリングに戻って来た。心なしか、以前より体が引き締まって見える江田に、試合直前、話を聞いた。
──吉永啓之輔選手(アウトサイダー65-70kg初代王者)に敗れてから1年4カ月経ちます。再登場までにここまで間隔をあけた理由は?
「ぶっちゃけ、もう格闘技はいいかなー、と思って。でもまわりにサポートしてくれてる人間がいて、彼らがもう一回出たほうがいいんじゃないかって言うので、ま、出てもいいかな、みたいな感じっすね」
──練習は?
「試合前の2カ月だけはやったけど、その前の1年2カ月はまるまる何もやらなかったっすね」
──前回の試合があんなにいい線いっていたし、江田さん自身も敗戦直後は「リベンジしたい」と言っていたから、てっきり格闘技に目覚めたのかと思っていたが……。
「やっぱ、格闘技と喧嘩はちょっとちげーな、と思った。ルールがあるし、レフリーもいるし。それに、格闘技でメシ食おうとは思わないっすからね、ぶっちゃけ」
──前回、アウトサイダーに出て、何か変わったことは?
「ないっすね」
──今回の対戦相手であるレイ選手(神奈川・18歳)はパンクラスism所属で、プロ格闘家・川原誠也選手の実弟です。いわば格闘エリートで、今大会最強との前評判もありますが、何か対策は?
「ま、テキトーに頑張ります」
こちらの期待をことごとくはぐらかすような返答。表情からもあまりやる気は感じられない。
ところが、いざ試合が始まると、江田は喧嘩根性をムキ出しにして相手に襲いかかった。そして開始早々、右ストレートでダウンを奪うと、その後も真っ向勝負のどつき合い。スタミナ切れでふらつく場面もあったが、最後まで手数を減らさず攻め続け、まさかまさかの判定勝利!
試合を終えて引き上げる江田に、ドクターが「頭が痛いとかの症状は?」と聞くと、「ないね。俺、打たれ慣れてるから大丈夫。これ、普通の選手だったら倒れてるよ」と胸を張った。
そのままインタビューに突入。
──とりあえず1勝。今後の目標は?
「ゴー・トゥー・ザ・吉永! 2年かけてね(笑)。今のまんまじゃ無理。疲れたところに寝技でオシマイでしょ」
──それにしても見事な勝利。実力派の格闘家を破りましたね。
「見たでしょ? やっぱ喧嘩でも勝てるんだって! 俺、倒れなかったでしょ? 俺のほうがたぶんパンチもらってたよね」
──あれだけパンチを浴びて、なぜ倒れない?
「普段からもっと強い人たちとやってるからだよ。試合前は刃牙(渋谷莉孔)たちに鍛えられたし、路上でも格闘家と喧嘩やってるし」
──喧嘩は最近の話ですか?
「1年ぐらい前、池袋で。秀虎選手と」
──えっ、あの秀虎選手(アウトサイダー出身、その後プロに進出)と?
「そう、喧嘩売ったの。『タイマン張れ』つって、バーンってローキック入れたら、Tシャツとかビリビリに破かれちゃったけど(笑)」
──秀虎選手と知ってて喧嘩を売ったんですか?
「もちろん。一緒に飲んでたんだよ。正確には『タイマン張ってくださいよ』って、ちゃんと敬語で言ったんだよ。強かったですよ、あの人」
──喧嘩はほどほどにして、今後はぜひとも格闘技を続けてくださいね。
「続けられないよ」
ここでやめてしまうのは、もったいなさすぎる逸材。サイゾー賞を贈呈するので、またアウトサイダーで暴れておくれ!
“寝ても立ってもフルボッコ 取手の拳帝”
幕大輔(茨城・26歳)
選手同士の人間関係を知っていると、アウトサイダーはよりいっそう面白くなる。多くの選手がブログをやっているため、それをこまめにチェックしていれば、さまざまな関係性が分かってくる。
60-65kgトーナメントのセレクションマッチに出場した幕のブログによれば、かつて弟のように可愛がっていた後輩・比夏瑠(茨城・18歳)との間になんらかの遺恨が発生したらしく、決裂状態にあるようだ。
その比夏瑠も同セレクションマッチにエントリーしている。両者とも勝ち抜けば、トーナメント本戦でぶつかる可能性が出てくる。実現すれば因縁の対決になるが、当事者の心境やいかに?
ひと足お先にセレクションマッチに勝利し、引き上げてきた幕に話を聞く。
──トーナメント本戦進出、おめでとうございます。
「ありがとうございます」
──今日の試合の感想を。
「下から結構食らっちゃいましたね。いつもの3分の1ぐらいしか力を出せなかった。自分でも分かるけど、全然動きのキレがなかったですね」
──その原因は?
「正月太りで80kgまでいっちゃって、そこから15kg落としたんで、体力的にキツかった。あと、久しぶりの試合だったというのもあるし、絶対にトーナメントで優勝するというプレッシャーも大きくて、動きが重くなっちゃいました」
──でも、とりあえず結果を出せたのは大きいですね。
「本戦まで約2カ月ありますから、それまでに本調子に戻します。トーナメントは優勝しか見てません。いつも心配かけてる嫁に、優勝して恩返しをしたいんです」
──ところで、同じ道場の後輩だった比夏瑠選手との間に、いったい何があったのでしょう?
「俺はずっと比夏瑠のことを可愛がってて、アイツも俺を信じてついて来てくれていると思ってたんですけど……。簡単に言うと、アイツは俺だけじゃなく、道場の仲間やサポートしてくれてる仲間たちのことも裏切ったんですよ。やっちゃいけないことをやった」
──比夏瑠選手は最近、道場には来てないんですか?
「来てないです」
──今日、会場で会いました?
「会ってないです。会いたいとも思わない」
──もし会ってしまったら、何か言いたいことは?
「別に。とりあえず、『よく出て来れたな』と。向こうも俺のブログを読んでるはずなんですけど、なんの連絡もないってことは、全然上等なんでしょう」
──今後、試合で当たる可能性はありますよね?
「それは全然問題ないです」
──見ている側からすれば、因縁の対決は面白い。
「まあ、面白いでしょうね(苦笑)。勝ち上がっては来てほしいです」
ところがその後、比夏瑠はリングインしたものの、4kgの計量オーバーで不戦敗。そそくさとリングを立ち去った。その様子を客席から見ていた幕は「ハナからやる気がなかったんでしょう」と吐き捨てた。
両者の遺恨が清算される日は、果たして来るのか……?
“本名 田中太一”
人間ターミネーター(長野・24歳)
初登場の人間ターミネーター。いったいどんな選手なのか? 控え室を覗きに行くと、筋骨隆々の人間ターミネーターが、ドスン! バスン! と迫力満点のミット打ちをしていた。おそるおそる声をかける。
──すいません、お話をお聞きしてよろしいですか?
「………」
無言で振り向く人間ターミネーター。目が据わっており、かなり怖い。
──えらい風格ですね。簡単な経歴を教えてください。
「なんの経歴すか?」
──主にワルさの。
「特にねぇっす。仕事柄こういう体格なだけ」
──お仕事は?
「鳶っす」
──喧嘩は?
「そんなに。売られることもほとんどないっす」
──アウトサイダーに出ようと思った動機は?
「単に友達に誘われただけ」
──格闘技のキャリアは?
「ジムに3回ふらっと行って、ふらっと練習しただけ」
──人間ターミネーター、すなわち、不死身人間。不死身ぶりを物語るエピソードを教えてください。
「ねぇっす」
──鉄骨が頭に落ちても大丈夫とか?
「それは普通に死ぬっす」
──対戦相手は筋金入りの元不良、大山勇樹選手(東京・33歳)だが。
「倒しに行く。そんだけっす」
笑顔を一切見せることなく、マシーンのように淡々と喋る人間ターミネーター。冷酷非情な殺戮ショーを予感させたが、結果は無念のTKO負け。「I’ll be back」とは言わずに、無言で会場を後にした。
《番外編》
山田史博(神奈川・22歳)※今回は観客
この日、会場の客席には、地下格闘技の世界でその名を轟かす、元暴走族リーダー・山田の姿があった。元からコワモテの山田だが、いつにも増して表情が険しく見える。それもそのはず。この日のシングルマッチには、山田をブログで挑発し続けた沼尻和之(茨城・20歳)が出場するのだ。これまでも選手間のプログにおける挑発合戦は多くあったが、沼尻のディスりっぷりはひときわ過激。喧嘩上等の山田が、これを読んで怒らないはずがない。
試合もないのに会場に足を運んだ山田。さては、なんらかの直接行動を起こすつもりなのか? 喫煙所で話を聞いた。
──ご無沙汰してます。近況を教えてください。
「『CARAS』という自分の団体を立ち上げて、そこで代表をやってます。もう『KRUNCH』の山田じゃないんで、今後は自由に戦っていこうと思ってます。ひとまずは、アウサイダーで今年の秋に行われる75kgトーナメント。それに向けて調整していくことに決めました。ただ、沼尻にいろいろ言われてるんで、4月のアウトサイダーで彼との試合を組んでもらって、そこで潰します。たぶん沼尻も75kgトーナメントに出るつもりだと思うんですけど、そこへ行く前に格闘技をできなくしてやります」
──先に挑発してきたのは沼尻選手ですか?
「はい。なんか酒の力を借りて言ってるみたいで。まあ酒入ってようが入ってまいが、関係ないんで」
──きっと山田選手と試合をしたいのでしょう。
「言わされてるのもあるだろうし、自分でやりたいのもあるんでしょうけど、まあ、どっちでもいい。今日(沼尻が)勝てば、相手してやりますよ」
──今日は会場で沼尻選手に会いました?
「会ってないです。勝ったらなんかマイクで言うみたいなこと聞いたんで、そしたら自分もリングに上がってやろうと思ってます」
しかし、沼尻が試合に敗れてしまったため、リング上での舌戦は消滅。う~ん、残念! 楽しみにしてたのに~!
“カリオカ・チームジャパン”
☆MAMORU☆(北海道・35歳)
アウトサイダー初登場でメインの大役を任されることになった、☆MAMORU☆。マッチメイクには定評のあるリングスだけに、この抜擢にはそれなりの理由があるはず──。試合前の控え室で、☆MAMORU☆を直撃。その素顔に迫った。
──初出場でメイン。この大抜擢について、どのような感想を?
「ま、当たり前かなと。常識の範囲内かなと」
──素晴らしいお答えです。見た目からも、並々ならぬオーラを感じますが。
「それは喧嘩が大好きだからですね」
──喧嘩で負けたことは?
「何十人に囲まれて袋(叩き)にされたことはありますけど、1対1じゃ負けた記憶がないですね。ストリートファイトが好きなんですよ。大得意です!」
──喧嘩が強いのは血統ですか? それとも環境が育んだ特技?
「環境ですね。札幌の暴走族で育ちました。そこでリーダーやってました。警察に超嫌われてまーす! アハハハ!」
──立派な刺青は、その当時に入れたもの?
「いや、そのあとヤクザになったときに入れたものです」
──何年ぐらいヤクザを?
「13~14年ですね」
──臭い飯は?
「たくさん食いました! 前科8犯ぐらいあるんで」
──罪状をダイジェストで教えてください。
「ほとんど傷害ですね」
──いつもススキノあたりで暴れていた?
「はい。札幌のほとんどのワルは俺のこと知ってるんじゃないですかね」
──☆MAMORU☆さんみたいな風貌の男に、喧嘩を売って来る奴なんているんですか?
「だんだんいなくなりましたね。みんなやっつけたんで。ハハハ!」
──東京に出て来るようになったのは?
「ここ2年ぐらいですね」
──お仕事の都合で?
「いや、何かを求めに!……グハハハ!」
──格好いいこと言いますね。その「何か」は見つかりました?
「格闘技です」
──アウトサイダーは、いつ知りました?
「前から知ってましたけど、記念すべき10回目の大会ということで、いよいよ僕が出るときが来たかなと」
──セコンド陣に外国人の方がいますけど?
「彼は、マウリシオ・ショーグン選手(ブラジルの総合格闘家)のコーチをやっているカリオカさん。ちなみにあちらにいるのは、山本KID選手のコーチをやっている方です」
──いやはや、すごい布陣ですね! 彼らは今回の試合について何と言ってます?
「『普段どおりやれば勝てる』と」
──本日の対戦相手は、アウトサイダーで3勝している”法曹界の最強戦士”こと堀鉄平弁護士(東京・33歳)です。
「僕もダテに8回ぐらい前科があるわけじゃない。弁護士さんには相当お世話になっている。つまり、弁護士さんには慣れているから大丈夫です(笑)」
──「強い・怖い・面白い」の三拍子揃った☆MAMORU☆さん。ここで勝てば、一気にスターダムにのし上がれるかもしれませんよ。
「勝つんで。あとは勝ち方を見てください」
その数時間後、☆MAMORU☆はリングの上で失神していた。チョークスリーパーで落とされ、負けてしまったのだ。ただ、最後までタップをしなかったところに、元不良ならではの意地を見た気がした。
次回アウトサイダーは4月3日(土)、東京・ディファ有明で開催。そこからいよいよ60-65kgトーナメントの本戦が始まる!
(取材・文=岡林敬太)
ジ・アウトサイダー 第九戦 《65-70Kg級トーナメント決勝戦》
ギリビキ!
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