「暴動は無政府組織ではなく一般の貧困市民?」バンクーバー冬季五輪の黒い現実
#五輪
バンクーバー冬季五輪が開幕したが、現地では街の一部が破壊される恐怖の暴動が巻き起こっている。
幻想的な演出の開会式が行なわれた裏で、開会式の当日には五輪に反対する抗議デモが相次ぎ、これがエスカレート。感情的になった抗議グループが、市内の商店などの窓ガラスを叩き割り、標識をなぎ倒し、車を破壊するなどして警官隊と衝突、逮捕者を出す騒ぎとなっている。
現地警察はこの暴動について「犯人たちは、国内外から集まった無政府主義組織ブラックブロックのメンバーで、ハナから暴行や破壊を目的とした反乱分子」と発表。実際、暴れている者が黒いマスクを被った不気味な姿であったことが確認されている。専門家によると「ブラックブロックは主にグローバリズムに反対する行動を起こす」ということで、その象徴の一つともいえる五輪は憎きターゲットとなるというわけだ。
しかし、現地新聞「プロビンス」紙の記者に問い合わせたところ「中には便乗して暴れた人間もいたかもしれないが、多くの市民が今回の五輪に反対の声を上げている」という返答もあった。
「今回の五輪用地、会場や選手村がある場所は市内中央の東側、ダウンタウン・イーストサイドと呼ばれる貧困街なんです。ここを利用するにあたって、市は貧困世帯への保護を優先させる声明を出していました。しかし、それを感じさせるような対策はなく、五輪招致にあたって当初6億ドルといわれていた費用も、実際には60億ドル費やしていた疑惑が浮上。低所得者層の怒りが爆発した状態なんです」(同紙記者)
この地域はホームレスが多く、薬物売買などの犯罪発生率も北米1位といわれている。数年前には国連が”先進国で最も劣悪なスラム街”と名指ししたほどだ。ある機関の調査では「市内の薬物中毒者は5,000人以上」で、注射針の流用からHIV感染率が高くなり、03年には政府公認の注射針供給施設ができたほどだ。前出記者も「白昼の発砲事件も珍しくないし、犯罪対策から駅の公衆トイレを閉鎖した」という。
また、抗議デモのプラカードの中には「生活費の工面のために五輪用の地上げに応じ、安アパートから出て行って新たにホームレスになった人たちが大勢いる」と書かれたものもあった。現地アンケートでは「五輪は素晴らしいが、開催の仕方は間違っている」とする答えが7割を超えたという調査結果もある。
人口の4分の1ほどを移民が占める土地柄で、先住民に配慮した開会式の演出があったが、当の先住民からは「本当のバンクーバー先住民の文化が反映されていない安易なものだった」と新たな火種も噴出しており、一触即発の空気が漂う。
”世界一住みやすい都市”というニックネームで国外にアピールするバンクーバーには爽快なイメージを持つ日本人も多いことだろうが、今回の五輪を機に皮肉にも街のダークサイドを知らせることになってしまった。選手関係者や観光客に被害が出ないことを祈るばかりだ。
(文=小田美代)
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