「感動もトラウマも、すべてここにある」”サブカル聖地”ロフトプラスワンの道標
#インタビュー #サブカルチャー
――先日、過去のイベント映像が収録された「公式海賊版」というDVDシリーズを一挙リリースされたそうですね。
天野宇空店長(以下、天野) ウチは年間で500~600本くらいのイベントをやっていて、それを15年間ずっとビデオに録ってるいんですが、「それってすごいよね」って話が前から出ていて。なので、いろんなジャンルのイベントをラインナップしてDVD化していこうと。あと、ダウンロード版もニコニコ動画の「ロフトチャンネル」で有料配信しています。
――DVDのラインナップには、どのようなものがありますか?
天野 堀江貴文さんのイベントだったり、人喰い事件の佐川一政さんだったり、連合赤軍とは何だったのかみたいなものだったり。あとは、環境問題とか、女装とか、アイドルとか、虫喰いとか……とにかくバラエティーに富んでいるので、どんな人でも1つ「ちょっと見たいな」って引っかかってくれるものが見つかると思います。
――発売後の反響はいかがですか?
天野 送料込みで980円という気軽に見て頂ける価格設定なので、お店に来られないような遠方の方にもご好評頂いています。
――特におすすめのタイトルはありますか?
天野 「悪役プロデューサー高須基仁 ロフトプラスワン全記録vol.1」ですかね。出版プロデューサーの高須基仁さんのイベントで、もう10年以上やっているものを、アーカイブという形で1本にまとめました。
――見どころはどこですか?
天野 高須さんがブチ切れる瞬間ですね。イベント中に怒って客席にマイクスタンドを投げたんですよ。それでお客さんが怪我しちゃって、高須さんが治療代を100万円くらい払ったっていう”事件”があったんです。DVDにはその時の映像もしっかり入っているので、どんな状況だったか是非見て頂きたいですね。
――笑っていいやら、怖がっていいやら(笑)。
天野 高須さんは、未だにその映像を「プロモーション映像だ」って言って、自分の登場の時に毎回流すんですよ。「今からこんな危険な男が登場するぜ!」的なあおりで(笑)。
――そのエピソードも、出演者とお客さんの距離が近いプラスワンならではといった感じですね。
天野 最前列なんて、出演者と同じテーブルを囲んでいるのと同じくらいの近さですしね。へたするとイベントによっては、実際に出演者と一緒に呑めたりするし。
――実は私も学生の時、ここでみうらじゅんさんや根本敬さんと同じテーブルを囲んだ経験があります。
天野 でしょ? 僕もここで働く前に客として来ていた時は、やっぱり出演者と一緒に呑んだりしてましたから。
――憧れの人を身近に感じられる貴重なお店ですね。
天野 そういう経験って絶対に忘れないですしね。そうなってくると、逆に「いつかは出てやりたい」って思ってくれることに繋がるのかなぁって。今、出演してくれている人の中にも、実際に「田舎から出てきて初めてプラスワンに来た時に、庵野秀明監督と呑めたんですよ~!」って人がいたりしますし。
――きっと、プラスワンによって人生が左右された人も少なくないんでしょうね。
天野 やっぱりライブハウスって、お客さんの心に何かを残すってことが大切だと思うんです。それは感動でもトラウマでもいいんだけど、ずっと忘れないようなインパクトを残すことが、何より重要ですよね。
――トラウマといえば、一触即発になりかねないようなイベントも数々やられていますよね。
天野 そうですね。例えば、数年前に『靖国 YASUKUNI』という映画が自主規制で上映出来なかったりして、話題になったことがあったじゃないですか。あの時に、実際に右翼の人に見てもらったらどうなるの? ってことで、右翼の方だけ集めて試写会をやったんです。
――騒ぎになりませんでしたか?
天野 いや、全く。襲撃も無かったし。それで「ああ、大丈夫なんだ」っていうことが分かったので、映画館での上映が決まって。やっぱりプラスワンは、そういうことが出来る場所でありたいなって思います。
――実際に、出演者とお客さんがケンカになったことってあるんですか?
天野 何度もありますよ。映画監督の渡辺文樹さんが出演した時も、右翼が『天皇伝説』って映画に反対して何人かでヤジリに来て、ワーワーと怒号が飛び交いました。でも、そういう人でもちゃんとローソンでチケットを買って来てくれるので、大切なお客様です(笑)。
――プラスワンは7月で15周年ということですが、それにちなんだ展開はあるのでしょうか?
天野 7月と8月は、アニバーサリー月間としてイベントを盛り上げていく予定です。あとは、「ロフトプラスワン公式サウンドトラック」っていうCDが出せたらいいなあと。
――トークライブハウスのサントラって、正直ピンと来ないのですが……。
天野 でしょ? でもね、意外とレギュラーのイベントにはテーマ曲があったりしますし。出演者の方には音源者の方も多数いますから、新曲もありえると思いますよ。
――では最後に、天野さんが考える理想的なプラスワンとは?
天野 実はこの店のオーナーも僕も、ここで働く前にバックパッカーをやっていたんです。バックパッカーの連中って、国にハマることをよく「俺、この国に呼ばれてる」とかって言い方するんですけど、それと同じでプラスワンで働いてるスタッフや、ここにハマってるお客さんて、きっと”呼ばれて”集まっているんじゃないかなって思うんです。できれば、ずっとそんな場所であり続けたいですね。
(取材・文=林タモツ)
●ロフトプラスワン
<http://www.loft-prj.co.jp/PLUSONE/>
●公式海賊版DVD
<http://www.loft-prj.co.jp/kaizoku/>
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