「上智大生殺人放火事件」時効まで残りわずか! 昨年10月の「千葉大生殺害放火事件」との関連は!?
#事件 #殺人 #犯罪 #日本"未解決事件"犯罪ファイル
何かが狂ってしまった現代社会。毎日のようにニュースに流れる凶悪事件は尽きることを知らない。そして、いつしか人々はすべてを忘れ去り、同じ過ちを繰り返してゆく……。数多くある事件のなかでも、未だ犯人・被疑者の捕まっていない”未解決事件”を追う犯罪糾弾コラム。
[第8回]
柴又三丁目女子大生殺人・放火事件(1996年9月)
昨年10月22日、千葉県松戸市のマンションに住む千葉大学園芸学部4年生・荻野友花里さんが刺殺された上に自室を放火された事件のニュースを聞き、真っ先に思い浮かんだのは約13年前のある事件だった。
1996年9月9日、東京都葛飾区柴又三丁目の民家が半焼し、焼け跡から上智大学外国語学部4年生・小林順子さんが刺殺体で発見された。刺し傷は右頸部に集中して計6カ所、順子さんの手には抵抗したときについたものと見られる切り傷が無数に残されていたという。将来、マスコミの仕事に就くための勉強をしようと、2日後にアメリカ留学を控えていた矢先の出来事だった。
その日、父・賢二さんは福島に出張、長女は仕事で外出していた。午後3時50分になり、母・幸子さんも仕事のために家を出た。そのときに順子さんから「こんなに雨が降っていても自転車で出かけるの?」と声をかけられたという。これが、家族と交わした最後の会話になってしまった。
そして49分後、隣家から火災の119番通報が入る。消防車が駆けつけ、ようやく火が消し止められたのは午後6時過ぎ。隣家は全焼、小林さん宅は家の中のほとんどが焼けてしまったが、2階にあった両親の寝室で布団に包まれた順子さんの身体だけは火に当たらずに残っていた。生きていれば奇跡のエピソードとして家族に笑顔も戻ったかもしれないが、現実にはもっとひどいシナリオが用意されていた。順子さんの死因は火災による一酸化中毒などではなく、前述の通り刺殺による出血多量……。司法解剖の結果、肺などから煤(すす)が出てこなかったため、殺されてから火をつけられたのは明らかだった。
幸子さんが外出してから通報までのわずか”49分”の間に、順子さんの夢や将来を切り刻む蛮行が、何者かの手によって実行されたのである。果たして、目的は何か? そして犯人は一体誰なのか!?
遺体には着衣の乱れや性的暴行を受けた痕がなく、順子さんの部屋のリュックの中にあった留学のための当座資金13~14万円は手付かずで残されていたため(家から持ち去られたものは1階の居間にあった旧1万円札だけ)、事件当初は計画的なものか不特定多数を狙った犯行なのか分からなかったが、順子さんの口に貼られた粘着テープが家にあったものではないことが判明したため、少なくとも一部計画的な犯行であったことが窺い知れる。しかも、その粘着テープからは3種類以上の犬の毛が付着、火元と見られる1階仏間から発見されたマッチからは家族にはいないA型の血液が検出されたため、犯人は3種類以上の犬を飼っているA型の人間にほぼ間違いないと見られている。そして、最も特徴的な痕跡が、順子さんの両脚をパンティストッキングで縛った際の結び方である。それは、運送業・造園業・土木業・電気工事業・古紙回収業などの仕事に従事したことがある者以外には馴染みのない”からげ結び”という特殊技術なのだという。
警察の調べにより、目撃情報も数多く上がった。火災発生直後に雨の中傘も差さずに現場付近から駅方面に走り去った男、火災発生直前に道路から被害者宅を覗き見ていた男、同じく現場付近で自転車を乗り回していた男、やや時計を戻して午後1時ごろに現場付近で別の主婦をつけ回してライターを持っていた男、午前9時~午後3時ぐらいまで白い手袋をはめて近所の公園をうろついていた男、事件の数時間前に「柴又三丁目はどこですか?」と道を尋ねていた男、事件前日に現場付近で「ふざけんな! ぶっ殺すぞ!」と叫びながら軍歌を唄っていた男……など、真偽はともかく不審者の情報は多数寄せられている。
さらに幸子さんの証言によれば、事件の約10日前、順子さんはストーカーらしき男にあとをつけられ、怖くなったため家に電話をして幸子さんに迎えに来てもらっている。個人的繋がりのある人物によるものかどうかは不明だが、そのころから犯人によってターゲットとして目星をつけられていた可能性は否定できない。そして、順子さんはアメリカへの出発日が迫っていた。一方的に思いを寄せる者、または恨みを持つ者にしてみれば、残された時間は限られていたのかもしれない。警察は順子さんの交友関係や手帳に記されていた人物全員について捜査を進めたが、これまで被疑者と断定できる人間にまではたどり着けてはいない。遺族も05年5月に私的懸賞金としては高額の500万円を用意して情報収集の足がかりに期待をかけたが、こちらも頭打ちの状態となっている。
気が付けば、事件から13年以上が過ぎていた。賢二さんは未解決事件の”時効延長”を求める遺族会「宙(そら)の会」の代表幹事として、苦しい思いを胸に秘めたまま、新旧の凶悪事件で悲しい思いをしている遺族らと闘い続けている。そんな折に起きたのが、柴又から橋を1本渡った松戸市の”千葉大生殺害放火事件”である。殺害されたのが女子大生(ともに4年生・21歳)、人目につく時間ながら部屋に堂々と侵入、遺体をパンティストッキングで拘束、金品の盗み方が雑、殺害後に放火……ざっと挙げただけでも共通項は少なくない。松戸の事件では被疑者(元トラック運転手の無職・竪山辰美/48歳)がすでに逮捕されているが、動機などについて曖昧な点が残るため、まだ完全解決には至っていない。もともと別の強盗致傷事件で3度逮捕されているだけに、今後の余罪の追求には注目が集まる。
約14年前と半年前に起きた”女子大生殺害事件”……真相はいかに!?
(取材・文=神尾啓子)
<被害者のプロフィール>
被害者:小林順子さん
年齢:当時21歳
事件現場:東京都葛飾区柴又三丁目(被害者宅)
凶器:小型ナイフのような鋭利な刃物(刃渡り8cm、刃幅3cm)
遺留品:使用済み粘着テープ、マッチから検出されたA型の血液
公訴時効成立:2011年9月
<情報>
懸賞金:500万円
(平成22年5月8日まで)※延長の可能性あり
<連絡先>
「柴又三丁目女子大生殺人・放火事件」特別捜査本部
TEL.03-3607-9051/FAX.03-3607-9056
亀有警察署
TEL 03-3607-0110
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