吉本興業臨時株主総会 TOB・上場廃止でお家騒動は本当に収束するのか
#吉本興業
吉本興業のお家騒動は、これで本当に収束するのだろうか。1月28日に行われた吉本の臨時株主総会で、上場廃止のための定款変更が承認されたことで、創業家一派で大株主だった林一族らが株主ではなくなり、その影響力がほぼ排除されることになった。吉本に対しては、林家の意を受けた株主を多数含んだ19人の個人株主が、吉本のTOBや非上場化に反対する集団民事訴訟を起こしているが、こちらも3月には株主の権利を剥奪され、それ以降の問題追及が難しくなるという。
「こういう形で株主でなくなることは、ものすごく残念ですね」
臨時総会の会場から出てきた50代男性の個人株主は、こう語り、その理由を説明した。
「私が株主になったのは金儲けのためでなく、吉本を応援していたのと、毎年、株主総会後の演芸会や優待券が楽しみだったからですからね」
別の個人株主は、「株を買い取る価格についての説明も、第三者機関に頼んでなんとか、とか説明していたが、結局、納得できる説明ではなかった」と不満を漏らした。
とはいえ、昨年、吉本興業と連携する形で、投資会社のクオンタム・エンタテイメントが行ったTOBには、28日の段階で、すでに90%近い株主が応じて成立していた。このため、28日の臨時総会に参加した個人株主は、わずか35人ほどで、会場となった大阪厚生年金会館付近は、総会に参加する株主よりも、会場周辺の整理や警備にあたる吉本関係者や、取材に訪れたマスコミ関係者の姿の方が目立つ状態となっていた。
この臨時総会では、吉本がクオンタムの傘下に吸収合併されるための定款変更が決議され、その結果、TOBに応じていなかった約10%の株主についても、その権利が強制的に剥奪されることが決定した。
吉本のお家騒動は、昨年秋に亡くなった創業家一派林家の林マサ氏の意を受けて、大阪でリゾートホテル事業などを行うD社の会長で元暴力団員だったM氏が、2007年の1月に、当時は副社長だった大崎洋・現社長に対して、林マサ氏の息子を吉本の役員にすることなどを要求して勃発した。
その後、M氏は表舞台からは姿を消していた。だが、昨年、吉本のTOBに反対する集団訴訟を起こした19人の個人株主のうち、多数の株主が、D社やその関連会社の役員や社員といった関係者であることが判明。反吉本勢力の活動に、M氏の意向が強く反映されているのは明らかだった。
このため、今回の臨時総会にも、集団訴訟に参加しているD社の関係者が数人が参加していた。そのうちの1人は、総会後の取材のなかで、自分がD社の関係者であることを認めたうえで、臨時総会に参加する前、M氏から「社会人として、あまり質問などして騒がないようにいわれました」と話していた。
元証券マンともいうこの株主は、2年ほど前から吉本の株主総会に出席して、積極的に質問などしていた。だが最近、M氏の水面下での活動が報道などで表沙汰となったことで、元暴力団員による不当な圧力などと誤解されかねない活動は、自粛したとみられる。
そして、集団訴訟のメンバーであるこの株主は、今回の総会によって、林家の関係者も含めてTOBに応じなかった株主に対して、3月1日に保有する株に対する対価が支払われて、強制的に株主としての権利を剥奪されると説明。その結果、集団訴訟に関しても、「訴訟を起こす権利が喪失してしまう」と語り、これ以上、吉本に抗議を続けることは「難しくなります」と話して苦笑した。
つまり、今回の臨時総会を乗り切ったことで、吉本側は、林家の影響力と同時に反吉本勢力の活動を無効にできるワケで、お家騒動は収束する可能性が高まったといえる。
ただ、吉本のお家騒動に関しては、その渦中に、中田カウスに対する襲撃事件や前田五郎による脅迫文騒動なども起こり、襲撃事件については大阪府警の捜査が、脅迫文騒動は、前田五郎側が起こした損害賠償請求訴訟が続いている。このため、完全決着には、まだ時間がかかるとみられるのだが、今回の臨時総会で吉本側が、決着に向けて大きな前進をしたことは間違いないようだ。
創業者が泣いてるよ。
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