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アジア・ポップカルチャーNOW!【vol.1】

「 :phunk版ガッチャマンが作りたい」 シンガポール発のデザイン集団が描く夢

phunk01.jpg New World (c):phunk

『AKIRA』『ドラゴンボール』『ドラえもん』……子どもの頃、僕らの心をアツくさせた漫画やアニメが、海の向こうに住むアジアの子どもたちの心にも火を付けていた。今や日本人だけのものではなくなった、ジャパニーズ・ポップカルチャー。その影響を受けて育った、アジアの才能豊かなクリエーターたちを紹介する。

【第1回】
コンテンポラリー・アート&デザイン・ユニット

:phunk(ファンク)

 シンガポールで生まれ育った幼なじみの4人組、ジャクソン・タン、メルビン・チー、アルビン・タン、ウィリアム・チャンは、美術学校の卒業を間近に迎え、ミュージシャンへの夢に燃えていた。だが、スタジオに入り、音合わせをした瞬間、自分たちの音楽的センスの無さに愕然とする。その後、退屈しのぎにジャクソンの部屋に集まっては、Macでビジュアルやグラフィックの「ジャムセッション」を始め、出来上がった作品(彼らはそれを”EP盤”と呼んだ)を好きな人たちに送りつけた……。

 ギターをMacに持ち替えたとき、現在のアジアにおいて、間違いなく、もっとも刺激的なコンテンポラリー・アート&デザイン・バンド、 :phunk(ファンク)が誕生したのだ。1994年の結成後、ナイキやノキア、リーバイスなどのインターナショナル・ブランドのコマーシャル制作をはじめ、ファッション、音楽、フィルムなど、領域を横断したビジュアル・アプローチを追求し続け、3年ほど前から、活動の舞台をアートの分野にも拡げている。


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<画像をクリックすると拡大されます> New World (c):phunk

 ファンクは、自分たちの作品に漂うマルチカルチュラル(多文化的)な影響を隠さない。それは、彼らのベースであるシンガポールの特徴そのものでもある。イスラム教の国々に囲まれ、中国人、マレー人、インド人、ユーラシア人が、東京23区とほぼ同面積の場所に共存する。第一言語として英語を話し、中国の旧正月を祝い、マレー語の国家を歌い、ランチにインドカレーを食べる……多様な人々、言語、文化、宗教、そしてアイデンティティーが渦巻く、ここはまさにアジアのメルティング・ポットなのだ。チャイニーズ・シンガポーリアンの第三世代であるファンクのメンバーも、英語と中国語の2つの名前を持ち、普段は英語で会話する。母親から、悪さをすると中国の神様に叱られると脅され、ラクサ(コナッツミルク味のマレー系カレースープ麺。おやつ的に食す)をすすりながらクラフトワークに酔いしれ、カンフー映画に熱狂し、チャウ・シンチーの不条理ギャグに腹を抱え、アンディ・ウォーホルをアイドルとあがめる青春時代を送ったという。

 多国籍のDNAが、細胞レベルで吸収され、咀嚼され、再結合され、圧倒的な強さを伴ったビジュアルとして排出される。ファンクの作品の骨太でチャンプルなパワーは、こうしたバックグラウンドが培ったものだ。

 そんな彼らにとって、日本のカルチャーは、特にインパクトを与えてくれたもののひとつ。

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「日本の漫画やポップ・カルチャーは、子どもの頃から、僕らにすごく影響を与えてきた。『仮面ライダー』に『ガッチャマン』、『ドラえもん』や『ガンダム』は、TVで毎週欠かさず見ていました。10代では漫画『AKIRA』や『クライング・フリーマン』、『エヴァンゲリオン』に泣き、大人になって、宮崎アニメに出会いました。また村上隆さん、奈良美智さん、草間彌生さん、田名網敬一さんたちの作品を美術館で鑑賞するなど、こうした数々のジャパニーズ・カルチャー経験は僕たちの想像力を豊かにしてくれたし、作品にもそれは現れていると思う」(ジャクソン)

 ちなみに、ファンクのメンバーが一番夢中になったのは『ガッチャマン』。みんなが「我こそがコンドルのジョー」と譲らず、喧嘩になったこともあるという。

 そして今、彼らの夢は「タツノコプロと一緒に、オリジナルアニメをリミックスした”ファンク版ガッチャマン”を作ること」なのだ! ファンクの最新アートワークシリーズ『New World(新世界)』は、想像上のグローバルなテーマパークであり、アミューズメントパーク。グローバリゼーションの時代に、ある意味、どんどん巨大なテーマパーク化する現代社会。年齢や人種や階級や文化を越えた、普遍性を持つ「精神的な価値」を、ファンク流にビジュアルで探求した作品だ。”ファンク版ガッチャマン”が、このユニークな世界観の中でどう再現されるのか、ぜひ見てみたい。


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<画像をクリックすると拡大されます> New World (c):phunk

phunk03s.jpgUniversality (c):phunk
phunk04s.jpgElectricity (c):phunk

 今年後半は、シンガポールを始めとするアジアや世界各地での展覧会プロジェクトが目白押しだ。中でも特筆すべきは、シンガポールで8月に行われる、彼らの「もうひとつの夢」だった、日本のアーティスト、田名網敬一氏とのコラボレーション展。ファンクの世界と、彼らが敬愛して止まない”サイケデリックの伝道師”田名網氏の世界が、どのような融合を果たすのか?
 
 そしてそれに先立つ7月には、なんと東京での初個展が決定している。それぞれの詳細は後日公開を待つとして、ファンクの本格的日本上陸と、そのはじけっぷりに大いに期待したい。
(取材・文=中西多香[ASHU])

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:phunk
ジャクソン・タン、メルビン・チー、アルビン・タン、ウィリアム・チャンの4人で構成された、シンガポールを代表するデザイン・ユニット。1994年活動開始。ナイキ、ノキア、MTVなど、インターナショナルクライアントを多数手がける。アートの分野にも活動の場を広げ、国内外で個展を開催。今年7月、日本での初個展が決定している。< http://www.phunkstudio.com/>

なかにし・たか
アジアのデザイナー、アーティストの日本におけるマネジメント、プロデュースを行なう「ASHU」代表。日本のクリエーターをアジア各国に紹介するプロジェクトにも従事している。著書に『香港特別芸術区』(技術評論社)がある。<http://www.ashu-nk.com >

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最終更新:2015/02/19 15:06
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