「PANDA 1/2」が2010年日本の音楽シーンをオセロのごとくひっくり返す!
#インタビュー #PANDA 1/2
「現在の日本の音楽シーンには、遊び心やゆとりが足りない気がするアル」と言ったのは、中国を中心に音楽プロデュース活動をおこなうパンダのJames Panda Jr.だ。その彼が、日本の音楽シーンに一喝入れるべく、M!nam!と結成したユニットPANDA1/2が、CORNELIUSの名曲をカバーした配信限定シングル「NEW MUSIC MACHINE」で日本デビュー。原曲を踏襲しながら、現代的な質感に落とし込んだ、James Panda Jr.による心地良いギター・サウンドは、懐古趣味に終わらせず、Jロックの点と点を一本に結んでいる。そして幼さを残しつつ色気を感じさせる、鼻にかかったM!nam!のウィスパー・ヴォイスがすごく良い感じ。謎のベールに包まれたPANDA1/2にインタビューを敢行した。
──M!nam!さんは、以前から音楽活動をやってみたいと?
M!nam! はい。音楽を聴くのはすごく好きだったから、チャンスがあればやってみたいと思っていましたね。それが大好きなパンダと一緒にやれる、今回のことはすごく運命を感じました。
James Panda Jr. 今回、日本での展開に、ボーカルとして彼女を選んだ理由としては大きく分けて二つあって、一つは彼女の持つ音楽の感性がすごく良いということ、そしてもう一つは歌声アルね。最初は鼻歌にピンと来て惹かれて、その後、実際にスタジオに入って改めて歌声を聴いたとき、何より息づかいと呼吸の音がすごく良いと思ったアルよ。セクシーにも感じたアルし、とにかくすごく気持ちが良かったアル。
──普段、どういう音楽を聴くんですか?
M!nam! くるり、キセル、bonobos、クラムボン。ジャンルだと日本語ロックと言うんでしょうか。ユニコーンやNUMBER GIRLにハマっていた時期もありました。バンド以外では、女性アーティストで大好きなのは原田知世さんですね。でも、周りには音楽の趣味が合う友達がいなくて。だからロックフェスも一人で行くことが多いんです。
──フェスに一人で行くのはちょっと寂しいですね。
M!nam! でも衝動が抑えられないというか、好きなアーティストが出ていたら遠くても一人で行っちゃいますね。
──ちなみにiPodには何曲くらい入ってる?
M!nam! 40G、約8,000曲です! 実はデビュー曲「NEW MUSIC MACHINE」は前からiPodに入っていて。レコーディングするにあたって改めて聴いたんですけど、やっぱりステキな曲だなって思いましたね。
James Panda Jr. 僕自身は、CORNELIUSに対する思い入れは人一倍強いのアルよ。『FANTASMA』(ポリスター)というアルバムは、オレンジ色の限定アナログ盤を未開封で持っているほど。だから楽曲のチョイスひとつとっても非常に考えたアル。実は「NEW MUSIC MACHINE」の他に「Free Fall」という楽曲をやろうかというアイデアもあったアルけど。
──「Free Fall」もカッコイイじゃないですか!
James Panda Jr. そうアルよね。ただ、デビューでいきなり「Free Fall」というタイトルの曲ってのはどうなんだろうなぁ? という……。それで「NEW MUSIC MACHINE」に最終的に決めたアルよ。
──その歌詞に「2010年になんか全部ぶっ壊れた」という一節がありますよね。
James Panda Jr. うん。それだからって訳じゃなかったアルが、確かにそこも決めての要因にはなったアルよ。
──歌詞の通り、何かぶっ壊したいものがあるとすれば、それは何ですか?
James Panda Jr. ぶっ壊したいもの……。
M!nam! うーん。社会のしがらみ、とか?
──体制的なこと?
M!nam! そういうんじゃなくって。社会に蔓延する思い込みと言うか……誰しもの心の中にある固定観念や前提みたいな。上海に先日ライブで行ったとき感じたんですが、私はずっと日本で仕事をして日本で暮らしていくものだとか、それって誰に教えられたわけじゃなくそういう前提でこれまで生きてきていたなと思って。だから、選択肢はたくさんあるはずなのにって。
James Panda Jr. うんうん。知らず知らずのうちに人間が持ってしまっている固定観念なんかを、どんどんぶち壊したいのは僕も同じアルね。
──リスナーには、M!nam!さんの歌から何を感じ取ってほしい?
M!nam! 波動です!
──は、波動ですか?
M!nam! 目に見えないエネルギー。あの歌手は歌が上手いとか下手とか、一般的には技術的な部分でしか見られていないことが多くて。それはもちろん大事なんだけど、それだけしか見ていないのって、すごく一元的なものさしだと思うんです。でもそういうことよりも、メッセージとか想いを大事に、強くちゃんと歌に乗せていけば伝わるものもあると思うんです。
James Panda Jr. うん、僕はずっと日本の音楽シーンを中国という外側から見てきて考えていたアルけど、その一元的なものさしっていう部分が特に今の日本の音楽シーンでは顕著だな、と思うアルね。もちろん、それはそれで存在意義はあるんだけど、それだけで語られてしまう現状はちょっともったいないなぁ、と。本当に評価されるべき作品や残っていくべき作品はたくさんあるのに、評価基準が少なくて結果的に陽の目を見ずに流れていってしまうのはやっぱり残念アル。
音楽って、本当はもっといろいろなアプローチがあって、それらがお互いに作用し合うことで、ひいては音楽シーン全体の面白みに繋がっていくのではないかと思うアル。でもここ数年は、巷で耳にするのが結局、だいたい似たり寄ったりな音楽ばかりで、そこもまたよくない傾向だと思うわけアル。こうなってしまっている原因のそもそもは、僕は完全に作り手側と届ける側による共犯だと考えていて、まぁ、もちろん音楽業界の台所事情が芳しくないことは充分すぎるほど分かるけど、だからといって本当に大事な部分まで忘れてしまってどうするんだ! と、思うわけアル。テン年代(2010年代)は、まさしく本格的にアジアや世界のコンテンツと勝負して行かなければならない時代になるわけアルし。
──昨年12月24日に上海ROCK FESTIVALでデビューライブをやったそうですね。初ライブの感想は?
M!nam! それが記憶喪失なんです。やってるときの記憶がふっ飛んでいて、まあ最近になって徐々に思い出して来ているけど。もうなんか訳分からなくなって、オリャーって感じだった。でも、すごく集中していたと思うし、またやりたいですね。
James Panda Jr. 上海でのライブは、途中で倒れるお客さんが出てしまうほど、めちゃくちゃ盛り上がったのアルけど、実はそのM!nam!のオリャーって部分がすごく良かったと思っているアルよ。きっと、もはや上手く歌おうとかいう意識なんてなくなっていたんじゃないかと思うアル。感情のままという感じで、僕にもすごく響いてきたアルよ。
──ギターも弾いたんですよね。
M!nam! はい。ドリルでギュイーンって。
──Mr.Bigのドリル奏法みたいな。
M!nam! そうそう。やっぱりギターはドリルで弾くものだと思います。
James Panda Jr. ちなみに、バックのギタリストはギターソロを歯で弾いてたアル(笑)。このときは「NEW MUSIC MACHINE」と、おニャン子クラブ「バナナの涙」をギターロックアレンジした「TEARS OF BANANA」をやったアルね。
──サイトでは、川本真琴「1/2」(ソニーミュージックレコーズ)のカバーも発表されていました。今後カバーを中心に?
James Panda Jr. いや、必ずしもそういうことではなくて、良い曲にはどんどんスポットを当てていこうという一つの試みアル。現在オリジナル曲も鋭意制作中なので、今後をぜひ楽しみにしていてほしいアル。
──では最後に、今後の目標とかビジョンは?
M!nam! 作品はどんどん発表していきたいし、世界中のパンダのいる都市でツアーをやったり、活動での収益の一部をWWFに寄付したりしていきたいですね。あと、尊敬する黒柳徹子さん(日本パンダ保護協会名誉会長)と一緒にパンダの着ぐるみを着て『徹子の部屋』(テレビ朝日系)ならぬ、「パンダの部屋」をやるという夢もあります。
James Panda Jr. ちなみに、全部これマジで言ってるアルよ。とにかく、パンダと音楽を通じて幸せな人がたくさん増えればいいと思う一心アル。今後も作品はどんどん発表していくので、是非YouTubeやiTunes、そして僕らのtwitterもしっかりチェックしていてほしいアル。
* * *
不思議ちゃんと思いきや、意外と社会派で、すでに独自の音楽理念やスタイルを持っているM!nam!。そしてJames Panda Jr.の、日本の音楽シーンをクールに見つめる目。このPANDA1/2、パンダ+カワイコちゃんというキャッチーな表向きとは裏腹に、実に巧みなロジックが隠されている。
(取材・文=榑林史章)
●ぱんだ・にぶんのいち
中国・上海出身のパンダであり音楽プロデューサーでもあるJames Panda Jr.が、銀座博品館で出会った女性ボーカリストM!nam!と結成したユニット。09年12月23日に配信限定シングル「NEW MUSIC MACHINE」でデビュー。
・James Panda Jr. twitter <http://twitter.com/jamespandajr>
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