悩める闘魂”あいぽん”5年間の足跡を語りつくす
#アニメ #声優 #インタビュー
本業である声優業の傍ら、年1枚ペースでアルバムを世に送り、コツコツとアーティスト活動を続けてきた野中藍が、満を持してベストアルバム『アイレンジャー』(キングレコード)をリリースする(1月27日発売)。歴代シングルを中心に、新曲2曲を含む全17曲収録、5年間の足跡を詰め込んだ大作である。
コロコロとよく転がる声が人気のあいぽん。09年も『アスラクライン』の嵩月奏、『よくわかる現代魔法』の森下こよみ、『懺・さよなら絶望先生』の風浦可符香(P.N)などを演じ、好調に思えるが、声優として活躍する反面、歌い手としては苦悩するところが多いのだという。
そんなベストアルバム発売直前の、悩めるあいぽんを直撃した。
■「アーティスト」野中藍としての苦悩
──ベストアルバムの話が来たときのお気持ちは、どんな感じでしたか?
野中藍(以下、野中) ベストっていうと十年選手みたいな人が出す! というイメージだったので、驚きました。私は5年ちょいしかない……よ……? という不安もありましました……ね(笑)。
年月的に言うと、5年目というちょっと半端な時期なので、「今?」って思いましたけど、あらためて自分の歌ってきたものを思い出して。アルバム『サプリメント』(同/09年4月22日発売)があり、それからしばらく時間が経ったことを考えると、今がいいのかな、とも思い直しました。
──初回限定盤のDVDには過去のPVクリップ集も収録されていますが、特にお気に入りは?
野中 やっぱり、デビューシングル(「夢のドライブ」/05年12月28日発売)が強く印象に残っています。”ベッドに乗ってひたすら空を飛ぶ”という斬新な演出が、今となっては楽しめます。(自分とは)別の人として観ています。恥ずかしすぎて笑っちゃいます。笑顔がぎこちないですしね(笑)。
あとPVはリリース順に収録されているので、移り変わりを楽しんでもらえたら、と。ラストには新曲「みんなのうた」のPVも入っていますので。
──「みんなのうた」はどんな映像なんですか?
野中 森の中のおうちをバックに歌ったりとか、朝日をバックに歌ったりとか。本当に、光を大切に、キレイに切り取った映像になっています。歌うことに集中したナチュラルなPVです。
──その「みんなのうた」の聴きどころは?
野中 サビの部分の「天才じゃなくたって、逸材じゃなくたって、できるだけのことをやるっきゃないから、やるだけじゃん」というところが気に入っています。前向きで。
──今回、『アイレンジャー』で確認できたことっていうと、何でしょう。
野中 うーん……(真剣な面持ちで考え込む)……ここが! というポイントはないんですけど、楽曲とPV集を見ると、ちょっとずつだけど成長してきたんだなぁ……とは思いました。
振り返ると5年間、自分との戦いでした。コンプレックスを乗り越えようと。
毎回そうなんですけどね。今でもLIVEの度に、まず自分の殻を破るところから始めるんです。新しいLIVEを立ち上げるとき、スタッフさんやダンサーさんの前で、「野中藍はこういう人間です。こういう歌を歌うんです。こういう力しか持っていません」というのをさらけ出したうえで、「LIVEに向けて皆さんの力を貸してください」とお願いするんです。
──大変じゃないですか。毎回生まれ変わるみたいなものなんですか。
野中 はい。大槻ケンヂさんと演るときもそうなんですけど、「私はすみませんが、コレです。でもがんばるので、いっしょに演ってください」と、殻を破るところからのスタートなので。
人見知りだし、人前で歌うのは緊張するんですよ。……歌が好きだけど、歌唱力にも、私はこれで食べていくんですという自信がないので。まずは裸一貫、武器を持たずに狩りに行く、というところからやり直す。
──でも、歌手としての自信が足りなくても、これまでやってこれたわけですよね。それはどうしてなんでしょう。
野中 アーティストとしてすごくうまいわけではない、トークがおもしろいわけでもないけれども、私の歌を聴いて元気を出してくれる人がいる。何かを思ってくれる人がいる。だからやれることをやるだけなんだ、って思うんです。
LIVEでは目の前のお客さんと、じかに接することができますよね。ひとりひとりに届く歌を歌っていきたいんです。
──LIVEというと、今回は東名阪ツアー(2月6日~13日)が予定されていますが。
野中 「AIPON BEST BOUT 2010」ということなので、ベストな”試合”をできたらな、と思っています!
──相変わらずプロレス用語が……あいぽんにとってプロレスとは何ですか。
野中 アドリブじゃないですか。それでお客さんのテンションが波に乗ったときに試合が決まる、みたいな。それはすごいなーと思いますね。客席が沸いたときは鳥肌が立ちます。
ノアの試合だと、盛り上がったとき(観客が)足踏みをするんですけど、あれくらいの盛り上がりになるようにがんばります。
──今回のテーマは。
野中 前回は「NO TEAR NO LIVE」というタイトルで涙がテーマだったので、今回は逆に皆さんが笑顔で会場を後にできるような、楽しいLIVEにできたらいいなと思っています。
■「ウクレレ使い」野中藍ののんびり感
──野中藍さんと言えばウクレレのイメージが強いのですが、確かキングレコードさんからの借り物でしたよね。今もそうなんですか。
野中 あ、もう私が管理しているので、私のものです(笑)。
──名前がついているんですよね?
野中 はい。ウクレアと言います。
──命名の由来は?
野中 バカボン鬼塚さんのラジオ番組に出演したときに、募集していただいて決めました。かわいくて、気に入っています。
──ウクレア「ちゃん」なんですか、それともウクレア「くん」ですか?
野中 ウクレア「くん」ですね。好きなところはやっぱり、鋭い音じゃないところ。お洋服もそうなんですけど、「スタッズ」や「尖ったブーツ」は苦手でして。ウクレアくんも丸くてかわいいなと。
──『アイレンジャー』新曲の片割れでもある、ウクレレ弾き語りの「ファイト!!」はどんな曲なんですか。
野中 ウクレレらしい、のんびり、柔らかいメロディーですね。のんびり、ゆったり戦っていこうよ、というメッセージを込めました。
──あいぽんを象徴するような曲なんですね。
野中 ウクレレのときの作詞は、本当に好きにやらせていただいているので。メッセージを伝えようというのは、ほかの楽器を重ねた曲と一緒なんですけど、でも「オケに負けないように歌わなきゃ」みたいに力むことがない。ウクレレだと「なんでもアリ」のような気がして。テンポがズレたり(笑)、ちょっと遅くなっちゃったり。でも、それが味、みたいなユルさが自分に合っているなって、勝手に思っています。
──ちょっと失礼なことを申しますと、天然ぽいような……。
野中 天然とか、ふんわりまったりと言われるんですけど、それは、みなさんがよく受け取っているだけだと思うんですよ(苦笑)。やりたいことをやって、言いたいことを言っているだけなので。
──声優としても、たとえば「かわいいお嬢さん」みたいな枠に収まっていない気がするんですよ。好きなことをやった結果、逸れていくような。
野中 そうですね、確かに。ちょっとクセのある役のほうが、やっていて楽しかったりします。
──アーティストとしての特徴はどのあたりだと思いますか。
野中 うーん、でもやっぱり鋭くないですよね。モノマネをされてもみなさん、ふにゃふにゃ喋りますよ。「ぬぉくぁあいです、こぬっぅわ」(野中藍です、こんにちは)とか(笑)。
──ところで今年、自動車免許に挑戦したいそうですが。
野中 あ、はい。車の運転を……私、線の中を走れるのがスゴイと思うんですよ。
──えっ!?
野中 (ドライバーが)白い線の中を走っているのがスゴイと思うんです。走れるかどうか不安なんですけど、ちゃんと白い線をはみ出さずに運転できる技術を習得して、免許を取れたらいいな。
というのと、アロマ検定1級も試してみたいです。でもここで言うと、絶対2010年の年末に「あいぽん、アレどうしたの?」って言われるんですよね。そうですね、うーん、やっぱり今年の目標は「若い子と飲みに行く」にします。
──そういえばお酒、強いんですよね。どのくらいイケるんですか。
野中 そんなに飲んでないんですけど、噂が噂を呼んで「ザル」と言われます。飲んでも飲まなくても「ザルって言われていたけど、本当に酒豪なんだね」と言われるのは悔しいので、どうせザル呼ばわりされるんだったら飲んじゃおう、と(笑)。
(取材・文=後藤勝)
LIVE TOURも決定!!
「AIPON BEST BOUT 2010
~燃えあがれ!! 天をも焦がす野中藍の歌魂~」
2010年 2月6日 (土)名古屋:E.L.L.
2010年 2月7日 (日)東京 Shibuya O-EAST
2010年 2月13日(土)大阪 BIGCAT
1月17日からチケット一般販売開始、詳しくは下記オフィシャルサイトまで
<http://www.starchild.co.jp/event/nonaka_live2010.html>
野中藍 BEST ALBUM アイレンジャー(初回限定盤)(DVD付)
1月27日発売です。
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