子ども時代にタイムスリップ! 大人が夢中になる『かいじゅうたちのいるところ』
#映画 #洋画
誰もが一度は読んだり、親から読み聞かせてもらったことがあるはず(タイトルを聞いて思い出せなくても、絵本の表紙を見れば、「ああ、あれね!」と思うはず)のモーリス・センダックによる名作絵本『かいじゅうたちのいるところ』が映画化。1月15日から公開される。しかし、絵本が原作だからといって、子ども向け映画だと思ったら大間違い。大人の鑑賞に耐えうる実写映画として出来上がっているので、ぜひ大人にこそ見てほしい。
主人公は、やんちゃでいたずら好きだが、本当はさびしがり屋で傷つきやすい8歳の少年マックス(演じているのも同名のマックス・レコーズ。この映画のためにオーディションで見出された)。ある日、大好きなお母さんとケンカしてしまったマックスは、そのまま家を飛び出してしまう。無我夢中で走っていると、いつしか目の前に広がる海へボートを漕ぎ出していた。嵐を抜けてたどりついた不思議な島には、見たこともない”かいじゅう”たちが住んでいて、かいじゅうたちもまた、初めて目にする人間の少年を自分たちの王様として迎え入れる。かいじゅうたちはそれぞれに個性的で、仲良くじゃれあったりもするが、ケンカもする。そんな彼らの様子を見たマックスは、かいじゅうたちと一緒に、”誰もが幸せに暮らせる場所”を築こうとするのだが……。
この映画の肝は、何といっても”キモかわいい”とでも言うべき、かいじゅうたちの存在。こうしたキャラクターは、現在の技術力であれば全てがCGで描かれていそうだが、この映画では着ぐるみで表現されている。こうして見ると、着ぐるみの温もりのようなものを感じるから不思議だ(ちなみに、かいじゅうたちの表情はCGで表現)。
原作絵本のストーリーは短い。映画化にあたり、原作にない部分が付け加えられているが、世界観が壊れていないから、原作絵本に思い入れのある人でも問題ないはず。監督は『マルコヴィッチの穴』『アダプテーション』と、奇想天外でブラックユーモアが満載な大人向け映画を手がけてきたスパイク・ジョーンズ。そんな彼が絵本を映画化するという意外な企画だが、そこはさすがの奇才。絵本の映画化と言われれば、まず親子で楽しめるいかにも明るいファンタジー映画を予想するが、ジョーンズはそうした「大人が子どもに見てほしい、見せたい世界」を描くのではなく、「子どもの目で見た世界」を描くことにこだわった。かいじゅうたちを愛らしいCGキャラクターではなく、着ぐるみを使ってリアルに描き出したのもそのためだ。モニター試写でかいじゅうたちの姿を見た子どもたちが泣き出してしまい、健全な家族向けファンタジーを期待していたスタジオ側から、作り直しを要求されたという裏話もある。そうした紆余曲折を経て、当初の予定より2年遅れの2009年にようやく完成にこぎつけたが、ジョーンズは見事にこだわりを貫き、大人が自分たちが子どもだった頃のことを思い出しながら見られる映画になった。
2010年も明けて間もなく、今年はもっとピュアに生きたい……という大人たちにこそ、ぜひお勧めしたい1本だ。
(文=eiga.com編集部・浅香義明)
『かいじゅうたちのいるところ』
1月15日(金)丸の内ルーブル他全国ロードショー [吹き替え版同時公開]
ワーナー・ブラザース映画配給
(C) 2009 Warner Bros. Entertainment Inc.
公式サイト:<http://www.kaiju.jp>
『かいじゅうたちのいるところ』
<http://eiga.com/movie/53491/>
『かいじゅうたちのいるところ』スパイク・ジョーンズ監督インタビュー
<http://eiga.com/movie/53491/special/>
『かいじゅうたちのいるところ』映画評
<http://eiga.com/movie/53491/critic/>
荒みがちなあなたへ。
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