伊集院光さんの至言「結局、うんこを食うしかない状況になるんです」(後編)
#インタビュー #対談 #サブカルチャー #伊集院光 #小明 #大人よ教えて!
──なるほどー。ストイックというか、ひねくれた自分ルールですな。そういう精神が伊集院さんの『伊集院光のでぃーぶいでぃー』(ポニーキャニオン)にも出てましたね。若手芸人にジャンケンとか野球とか団体ゲームをやらせるんだけれど、必ずスパイを混ぜたり気まずくなるような巧妙なルールを作って、若手芸人たちの団結力を測りながら、それを壊して、どんどんギスギスさせて、それを伊集院さんが上から見て爆笑しているあの構図、本当に面白いです! 私はあまり人を信用できない方なので、ああやって頭のいい人が策に溺れたり、身内で裏切りあっていくのは、スリリングだけどマヌケで笑えました!
伊 良かった! あれは僕のモットーなんですよ。「人間はみんなマヌケだ」っていう。
──ああいうときの伊集院さんは本当に楽しそうですよね。
伊 みんなを混乱させて、言い合いさせるのが愉快でしょうがないんですよ。一生懸命持論を展開して、みんなを巻き込んで沈んでいくやつとか(笑)! でも、崩れていく人間関係を覗いてるときの、俺のサディスティックな力の入り方とか、ちょっと引いて見ると、本当に頭おかしいんだよね。みんなにどんどんイヤな指示を出して追い詰めてる時の俺の楽しそうな顔が、僕の一番ダメなところだし、一番、見られたらイヤなところ。だからこそDVDに入れたかったの。そこで「そんな人でも生きてていいんだ」っていうところが俺の立ち位置なんだと思ってますよ。人間みんな変なんですよ。でもその中で、最も変なのは僕……。
――なんか、娯楽と孤独が紙一重ですね……。その辺の伊集院さんの深層心理に潜れるのが、伊集院さんや若手芸人たちが箱庭を作る、『伊集院光のでぃーぶいでぃー箱庭カウンセリングの巻』ですよね。あれ、私、泣きましたよ……。
伊 そ、そんなもので(笑)! ありがとう!『箱庭』は、たぶん好き嫌いが相当あると思うんですけど、実は一番好きなんです。
――箱庭っていう、本来カウンセリングに使うものを笑いにするのは難しそうなのに、笑えるし感心もできて、私も箱庭を作りたくなりました。箱庭って、作るとあんなにトラウマとか、現在やら未来への不安が浮き彫りになっちゃうもんなんですね。芸人さんたちがちょっとシャレにならないようなトラウマ持ってて、そこに涙が出ました。
伊 ああ、そういうの持ってないとお笑いやっちゃいけない、って僕は思うんです。僕もすごいコンプレックスばっかりで、うまく立ち回れないことが多いんですけど……。
──ええー、そんなことないですよ! 芸能界では白伊集院(テレビ版)と黒伊集院(ラジオ版)、ちゃんと分けられてますから!
伊 うーん……小明さんも、”アイドルちゃん”やるくらい可愛くても、愛される量が足りてたら、こんな世界に来ないでしょ? それはみんなそうで、普通に可愛いって言われて愛される量が足りていたら、1万人に可愛いなんて言われる必要がないじゃないですか。
──いやいやいや、私なんか全然なんですよっ。うちは姉が極端に美人で頭が良かったりセンスがあったっりしたもんで、写真も姉ばっかりで、私はいつも日陰でした……。
伊 あー、やっぱりなあ。そういうことですよ。
──伊集院さんの箱庭もかなり「こんなに根が深いものがあったとは!!」って感じでしたよ。若手だけじゃなく、あそこでご自分も作られたのはすごいと思いました。だってあれ、現在・過去・未来の脳みそを晒すようなものだから。
伊 勇気がいるよね。でも、アレがお笑いだと思うんだ。やっぱ見せる勇気ってお笑いにしかないなって、本当に思うもん。だから、もしかしたら普通の女性タレントとかの方が「うわぁ、やべえな!」っていうのができるかも。……ベッキーのとか見てみたいよね。
──あ、それは見たい(笑)。普段すごく明るい人とか嫌味のない人のが見たいですね。
伊 うふふ。小明さんもやってみ。
――やってみたい! でもやっかいな性格が更に浮き彫りになったり、忘れていた暗い過去とか思い出しそうで怖いです! 将来も不安だらけだし!
伊 絶対みんな何かあるもんね。イヤなの作るぜ、きっと。
――き、希望に溢れた箱庭にしたいな……。私、根暗だからなのか、将来に明るいプランとか全然持てないんですよ。性格だって自己評価はやたら低いんですけど、変なところでプライドが高かったりして、自己顕示欲ばっかりこじらしちゃってるところがあるし……。
伊 はあー……何かね、その原因は。なんで俺らそういうふうになっちゃうのかね……。
──なんでなのか分かんないんですけど、もう、取り返しはつかないんで、とりあえず現世はこの性格でやっていくしかないと思って……。でも、なんかやり切れていないような……。
伊 うまく自分に向き合えない感じのね。「本気出してないよ!」って言い張る。
──自分を直視するのがすごく怖いんですよ。本気出したときに、「なんだ、全然しょぼかったんじゃん!」って言われるのが怖いから、本気出していても出してないふりして。
伊 なんですかね、その斜に構えた姿勢。何が起因してるんですかね。きっとどっかで落ち着くんだと思うっていうか、そう思いたいんですけどね。
──その感じでどんどん時間が過ぎて、もう25歳になっちゃうんですよ、びっくり。
伊 うん、そうそう。だから最近すげえ「健康でいようかな」って思うようになりましたよ。「落ち着くところまでいけないだろ、これじゃ!」って思って……。
――健康は大事ですよねー。……あの、ちなみに、今回の相談は『コンプレックスはどうやったら昇華できるのか』だったんですけど。
伊 ああー……そうだったねー。「昇華」はなかなかできませんので、一旦「消化」する。俺は、いわゆるあの「昇」と「華」という形の、きれいな漢字面で昇華されることはないと思ってる。消化しちゃー、また新しい排泄物になって、そのうんこを食って……っていう状態が、ずーっと続いていくような気がする。消化しても、結局またそのうんこを食うしかないような状況に、絶対になると思う。でも、そうするとお腹も慣れてくるんでしょうから! んふふ!
――うんこに慣れなきゃいけないのか……。
伊 今後、何になってくの? やっぱり小説書いたりしてんの?
──小説も書きたいんですけど、やっぱり自信がなくて二の足を踏んじゃったり……書けても本当に中二病丸出しで、途中で泣きたくなったりして。
伊 いいじゃん。俺、小説読まないから分かんないんだけど、そのままこじらせまくって、直木賞とってよ! 俺の『のはなし』(伊集院さんのエッセイ集)も直木賞とんねーかなって思ってんだけど、直木賞ってどうやらそういう賞じゃねえっていう(笑)。
――あははー! やー、なんだかがんばれそうな気がしてきました! 今日は本当にありがとうございました、お会いできてうれしかったです! 今後も応援してます!
伊 あ、こちらこそ、本当にありがたいね。こっちも元気が出た。
(取材・構成=小明)
●伊集院光(いじゅういん・ひかる)
1967年、東京都生まれ。タレント。『JUNK 伊集院光 深夜の馬鹿力』(TBSラジオ/月曜25時~27時)のDJとして活躍中。エッセイ『のはなし』『のはなしに』(ともに宝島社)、DVDシリーズ『伊集院光のでぃーぶいでぃー』(ポニーキャニオン)も続々発売されている。
■DVD
■本
●小明(あかり)
1985年、栃木県生まれ。02年、史上初のエプロンアイドルとしてデビューするも、そのまま迷走を続け、フリーのアイドルライターとして細々と食いつないでいる。初著『アイドル墜落日記』(洋泉社)での自虐っぷりが一部で評判を呼んでいるとかいないとか。
ブログ「小明の秘話」<http://yaplog.jp/benijake148/>
なぜか仏像のDVDに出ます。
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