伊集院光さんの至言「結局、うんこを食うしかない状況になるんです」(前編)
#インタビュー #対談 #サブカルチャー #伊集院光 #小明 #大人よ教えて!
モテない、金ない、華もない……負け組アイドル小明が、各界の大人なゲストに、ぶしつけなお悩みを聞いていただく好評連載。第8回のゲストは、ラジオDJ、タレント、テレビ番組の企画演出など幅広く活躍する、あの伊集院光さんです!
[今回のお悩み]
「コンプレックスが昇華しないです……」
──ギャー! 本物の痴豚さま(ファンの間での伊集院さんのあだ名)だ! デッカイ! ラジオも聴いてるしDVDも面白かったです! すみませんがよろしくお願いします!
伊集院(以下、伊) ……あ、ありがとうございます。よろしくお願いします。
──うわ! ラ、ラジオと同じ声だ……! あの、さっそく相談なんですけれど、私、ものすごくコンプレックスにまみれた人間で、何をしても不安で、満足感を得られないんです。
伊 はい。
――そのコンプレックスを「自虐」って形で文章にしたら、コンプレックスが昇華されて、もっとすっきり明るく暮らせるんじゃないかと思っていたんですけれど、どれだけコラムを書いても、小説に挑戦しても、結局うまくいかなくて、またぐるぐるしてしまって……。
伊 ええ、ええ、分かります。
――伊集院さんは、ラジオやコラムでいつもご自分のコンプレックスをうまく笑いにして昇華させているので、今日は是非そのへんを……。
伊 ああー、それは難しいですね。僕も、コンプレックスは笑いにすることで武器になるんだって信じてはいますけど……。
――信じてはいるけど……?
伊 とりあえず「コンプレックスは僕の武器だ」っていうのを信じてがんばれる時期があって、そう思うことでコンプレックスを多少は解消できるじゃないですか。けど、そのコンプレックスを解消しちゃうと、一度「これが武器なんだ!」っていう自覚を持ったがゆえに、「武器を失った!」というコンプレックスができるので、そのへんは難しいですよね。『コンプレックス保存の法則』みたいなの。でも、徐々にコンプレックスに対する対処を憶えてくるから、「コンプレックスで死ぬことはない」くらいにはなりますよ。だから、よく聞く「コンプレックスを笑いに昇華するといいよ!」ということでもないかなぁ。コンプレックスはどんどん新たにできるので、堂々巡りになるんですよ。……つまり、あなたのコンプレックスは一生、姿を変え形を変え、ずーっとあなたに付きまといます。
――ええー! そんなの嫌だ!!
伊 ただ、そのコンプレックスの姿が変わる瞬間は、すごく気持ち良かったりするんです。姿が変わる前に一回消化されるから。そのコンプレックスを一回クリアする快感は、机上で計算しているよりは、ずっといいものだと思いますよ。
――なるほど。……ってことは、伊集院さんも未だにコンプレックスとか、あるんでしょうか? 元アイドル歌手のきれいな奥さんもいて、芸能界でもすごくいい位置にいるのに!
伊 なんて言うんですかねー。たとえば、学生時代にモテないで孤独なことよりも、芸能界っていう華やかなところにいる方が世間的に、まぁ満たされているといえば、比較的満たされているとするじゃないですか。でも、”満たされているはずなのに感じる孤独”の方が、どうしようもないよ。本当にどうしようもない。
――確かに、明らかに何か足りないときに感じる孤独より、対処の仕方が分からないですもんねー……って、なんか、むしろ事態は深刻化しているじゃないですか!
伊 うーん、なんでしょうね。僕は、かみさんがいなくなったら死んでしまうくらいかみさんが好きで、そのパーフェクトなかみさんが家にいるのに、なんかこう、孤独とも違うざわめきに包まれたりとか……あの、粗い目のサンドペーパーを丸めたのが、喉に入ってるみたいな夜が来る。
──ああー! 分かります。突然来ますよね、喉とか胃とか肺にこう、濁った空気がぐるぐるして苦しくて、息の仕方を忘れちゃう夜、みたいなの。
伊 何なんでしょうね、その感じ! もう意味が分からないです。それにはあらゆる処方を全部試して、全部つっかえは取れたはずなのに。さすがに昔みたいに銃を突きつけられてる恐怖みたいなのはもうないんですけど。
──うーん……。現在の伊集院さんクラスになったら、さすがに不安感よりも満足度の方が圧倒的に高いのかと思っていました。
伊 これは恐らく一生続くと思うよー。そう思ったら逆にちょっと楽になりました。もし僕がこのまま大変な人気者になって、ゴールデンで冠持って、スケジュールが全部埋まって、一億円札が財布に入っているような状態になったとしても、そのパーセンテージは絶対に変わらないし。だから、先に”幸せの総量”を決めておくほうが良い感じになってきたの。
──”幸せの総量”ですか?
伊 「僕はこうやっていれば大丈夫、生きていける」っていうことを決めて、その枠の中でやっていく。そうしないと、人気とかお金は底なしだもんね。
(中編につづく/取材・構成=小明)
●伊集院光(いじゅういん・ひかる)
1967年、東京都生まれ。タレント。『JUNK 伊集院光 深夜の馬鹿力』(TBSラジオ/月曜25時~27時)のDJとして活躍中。エッセイ『のはなし』『のはなしに』(ともに宝島社)、DVDシリーズ『伊集院光のでぃーぶいでぃー』(ポニーキャニオン)も続々発売されている。
■DVD
■本
●小明(あかり)
1985年、栃木県生まれ。02年、史上初のエプロンアイドルとしてデビューするも、そのまま迷走を続け、フリーのアイドルライターとして細々と食いつないでいる。初著『アイドル墜落日記』(洋泉社)での自虐っぷりが一部で評判を呼んでいるとかいないとか。
ブログ「小明の秘話」<http://yaplog.jp/benijake148/>
なぜか仏像のDVDに出ます。
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